366: 名無しさん 2014/10/31(金) 00:04:48.26 ID:NusP9i4yO
バロンの町 入口 

高木「……では、私は一足先に行くよ」 

P「はい!また、お会いしましょう!それと、黒井社長にもよろしくお伝えください」 

高木「……了解だ」 

亜美・真美「社長〜!ありがとね〜!」 

春香「お気を付けて!」 

高木「うむ。……さて、行こうか、スレイプニル」 

スレイプニル「ヒヒーン!」 


パカラッパカラッ… 


春香「あの白馬、社長のだったんだね」 

真「うん……」 

真(なーんだ、王子様は社長だったのかぁ……) 



P「じゃあ、俺達も行くか」 

真美「……そだね!」 

亜美「ううっ……みんなの事、絶対忘れないからね?」 

春香「あのね……今生の別れじゃないんだから……」 

美希「……」 

美希「……ハニー」 

P「ん?」クルッ 

美希「ちゅっ……」 

P「……え?」 


春香「あ……」 

真「うわ……」 

千早「み、美希……」 

響「ほ、ほっぺにちゅー……///」 

亜美「さ、さすがミキミキ……」 

真美「むむむ……!」 




引用元: ・P「ゲームの世界に飛ばされた」2

368: 名無しさん 2014/10/31(金) 06:25:46.40 ID:NusP9i4yO

春香(あ、でも……)

真(ボク達……)

真美(兄ちゃんと……)

亜美(マウス・トゥー・マウス、しちゃってるんだよね……)



美希「えへへ……これは、餞別なの」モジモジ

美希「次に会う時は……『本物』してあげるね?」

P「なっ……!」

P「そ、それはまずいだろ……!」

千早「み、美希!……それはちょっと、やりすぎじゃないかしら?」

響「そ、そうだぞ!じ、自分だって……じゃなくて、プロデューサーも困ってるぞー!」

美希「あはっ!聞こえないのー!」




春香「あずささんの事、よろしくお願いしますね?」

P「ああ、任せておけ!」

あずさ「……」

亜美「ねぇ、はるる〜ん。次の目的地の名前、ちゃんと覚えたよね?」

春香「あ、う、うん……///」

真美「ちゃ〜んと、みんなにも教えてあげるんだよ?」

春香「わ、わかってるよぉ……」




亜美・真美「じゃあみんな〜!またね〜!!」


スタスタ…



369: 名無しさん 2014/10/31(金) 06:33:57.51 ID:NusP9i4yO
飛空艇

ババババババ…


響「春香ー、このまままっすぐでいいのかー?」

春香「うん。バロンから南へまっすぐって、プロデューサーさんが言ってたから」

響「わかったぞー!」

真「……でもさ、地底って、どうやって行くのかな?まさか、地面を掘るわけじゃないよね?」

春香「うーん、プロデューサーさんは行けばわかるって言ってたよ?」

千早「掘る、というよりは……始めから穴が空いてるんじゃないかしら?」

美希「うん、ミキもその方がしっくり来るって思うな」

春香「その穴ってさ、雪歩が掘った穴だったりしてね……?」

真「はは……そんなわけ……」

真「ないよね?」

響「じ、自分に言われても、わからないぞ!」

千早「ない……と言い切れないのが、弱いとこね」

美希「雪歩なら、充分あり得るの」

千早「ところで春香。次の目的地は、なんて言うところなの?」

春香「あ………んと」

真「春香、どうしたの?」

響「なんか変だぞ?」

春香「し、知りたい……?」

真「うん。っていうか、なんでそんなにもったいぶるのさ?」

春香「い、いや、もったいぶってるわけじゃないんだけど」

春香「わかった……じゃあ言うね?」

春香「次の目的地は……」



春香「あ、アダルトの村、っていうんだって……///」



4人「」



372: 名無しさん 2014/10/31(金) 20:50:49.57 ID:NusP9i4yO
幻獣界

イフリート「ヤヨイーー!!今日は何して遊ぶんだぁ!?」

やよい「今日は……」

やよい「……」

シヴァ「ヤヨイさん……?」

ラムウ「……」



やよい「みなさん……」

やよい「実はわたし、仲間を探しに行かなきゃいけないんですっ!」

やよい「だから……」

やよい「みなさんとは、もう遊べなくなっちゃいました……」



シヴァ「……」

イフリート「ヤヨイ……」

ラムウ「……」



やよい「本当に、ごめんなさいっ!」ペコリ



イフリート「………すげぇぜっっ!!」

シヴァ「ええ、本当にラムウの言った通りになったわね……」

やよい「え……?」

ラムウ「ヤヨイさん……」

ラムウ「あんたがいずれこの町を出て行こうとしていたのは、気づいておったんじゃ」

やよい「そ、そーなんですか?」

イフリート「ラムウぅぅ!!お前は頭がいいなぁぁぁっ!!」

ラムウ「それに気づいてから、わしら3人は話し合った」

ラムウ「いや、話し合いなど、無意味だったのかもしれんな」

ラムウ「わしらは3人とも……ヤヨイさん、あんたの力になりたいと思っておるんじゃ」ニコッ

やよい「!」



373: 名無しさん 2014/10/31(金) 20:56:08.38 ID:NusP9i4yO


やよい「みなさん……ありがとうございますっ……!」

やよい「でも……とーっても危険かもしれないんですっ!」

やよい「だから……」

ラムウ「だから、じゃ」

やよい「へ……?」

シヴァ「ヤヨイさん。私達は、あなたについて行こうというわけではないの」

ラムウ「あんたは召喚士。そして、わしらは幻獣……」

ラムウ「必要な時に、わしらを呼び出してくれればいいんじゃ」

やよい「そんな事が……わたしに、できるんですか?」

イフリート「ヤヨイぃぃ!!お前なら、できるんだぜぇぇ!!」

やよい「で、でも……どうやって……?」

ラムウ「……その、白い髪留め」

ラムウ「あんたによく似合っとるのう」

やよい「えへっ、そうですか?ありがとうございますっ!」

やよい「これは、お母さんが………」

やよい「……あ!」

ラムウ「気づいたかの」

やよい「じゃあ、みなさんはお母さんと『同じ』なんですか?」

シヴァ「そうね。あなたが『想う』事で、私達はいつでもあなたの元へ駆けつける事ができるわ」

やよい「はわー……なんだか、すごいですー」



374: 名無しさん 2014/10/31(金) 21:00:36.88 ID:NusP9i4yO


ラムウ「ヤヨイさんに、受け取って欲しいものがあるんじゃ」

ラムウ「……イフリート」

イフリート「ヤヨイぃぃ!!受けとれぇぇ!!」スッ

やよい「これは……ブレスレット、ですか?」

やよい「真っ赤で、いふりとさんと同じ色ですねー!」

シヴァ「ヤヨイさん、私からはこれをあげるわ」スッ

やよい「……青いネックレスですかー」

やよい「これは千早さんに似合いそうです」

やよい(そういえば……しばさんって、千早さんによく似てますよねー)

ラムウ「わしからは、これじゃ」スッ

やよい「黄色いイヤリング……」

やよい「わたし、似合うかな……?」

ラムウ「これらのアクセサリーを身に付けていれば、ヤヨイさんはわしらを呼び出す事ができる」



ラムウ「そして、最後に聞いてくれ」

ラムウ「わしらは3人とも、全く違う力を持っておる」

ラムウ「わしは、雷の力」

シヴァ「私は……氷の力」

イフリート「オレはぁぁぁっっ!!」

やよい「うっうー!火、ですよね?」

イフリート「そ、そうだぁぁっっ!!」

ラムウ「状況によって、誰の力が必要かは変わってくるじゃろう」

ラムウ「『誰』を呼び出すのか。それを、よく考えて欲しい」

やよい「うー……」

やよい「が、がんばってみます!」

ラムウ「ヤヨイさんなら、きっとできると信じておるよ」ニコッ





375: 名無しさん 2014/10/31(金) 21:40:44.91 ID:NusP9i4yO
幻獣王の館

黒井「……仲間を探しに行く、だと?」

やよい「はいっ!わたし、みなさんに会いたいんです!」

黒井「……」

冬馬「高槻……」

翔太「そっかぁ……寂しくなるね」

北斗「しかし、ひとりで大丈夫かい?」

やよい「大丈夫です!わたしには、お友達がついてますから!」

黒井「……」

黒井(行かせてやればいい)

黒井(何を迷っている?)

黒井(あるはずがない……王たるこの私が、ひとりの人間に執着するなど)

黒井(高槻やよい……)

黒井(やはり、765プロを選ぶか……)

黒井(ならば、お前は……)





黒井(…………私の、敵だ)






376: 名無しさん 2014/10/31(金) 21:44:52.04 ID:NusP9i4yO

冬馬「……気をつけて行くんだぞ?」

やよい「はいっ!」

冬馬「知らないおじさんにはついて行くなよ?」

やよい「わかりました!」

冬馬「落ちてるものを食べたらだめだからな?」

やよい「は、はい……」

冬馬「ちゃんと寝る前は歯を磨くんだぞ?」

やよい「え、えっと……」

翔太「冬馬君……心配なのはわかるけどさ」

北斗「冬馬らしいな……」



黒井「高槻やよい……」

やよい「黒井社長!たくさんお世話になりましたっ!」ペコリ

黒井「……せめてもの慈悲だ」

黒井「外の世界まで送ってやろう」

やよい「ホントですか?ありがとうございますっ!」

黒井「だが、覚えておけ」

黒井「次に会った時は……私とお前は、敵同士だという事を」

やよい「え……?」

冬馬「おっさん!何言ってんだよ!?」

やよい「な、なんで」

黒井「……デジョン!」


パシュン…


冬馬「……は?」

翔太「き、消えた?」

北斗「おかしな世界なら、おかしな力もありえるというのか……」



黒井(これでいい……)

黒井(765の連中とは、やはり相入れない運命だった)

黒井(……)

黒井(これで、いい……)




377: 名無しさん 2014/10/31(金) 21:51:48.29 ID:NusP9i4yO
地底世界 トメラの村

パッ…


やよい「……ですかーっ!?」

やよい「って…………あ、あれ?」キョトン

やよい「黒井社長や、ジュピターのみなさんがいないです……」

やよい「それに……」キョロキョロ

やよい「ここは、どこでしょーか?」

やよい「……うーん」

やよい「……とりあえず、みなさんを探しましょー!」



村人「おんや?……ハイホー!」

やよい「えっ?」クルッ

村人「え?じゃねえべさ。あんた、挨拶もできんのかえ?」

やよい「あっ、すみません!」

やよい「うっうー!こんにちはです!」

やよい(はわわ、まっくろな人です……)

やよい(外国の方でしょーか?)

村人「うっう?……変な挨拶だなや」

村人「あんた、よそから来た人だべ?この村じゃ、挨拶は『ハイホー』って決まっとるんよ」

やよい「はいほー……?」

村人「もっと元気よく!」

やよい「ハイホー!」

村人「うん。よくできたべ」

村人「しっかしあんた、どこか病気なんではないか?こんな白いドワーフ、見た事ねえ」

やよい「わたし、別に病気じゃないですよ?」

村人「ならいいんだが」

村人「……で、この村に何しに来ただ?ここは、なーんもねえ村だど?」

やよい「あっ……わたし、人を探してるんです!」

村人「人探し、ねぇ……」

村人「残念だけんど、こんな田舎村にゃよそもんは来ねえべさ」

やよい「そーですか……」

村人「そうさなぁ……人探しなら、ドワーフの城に行った方がええかもな」

村人「ドワーフの城は、あっちの方向にあるが……」スッ

やよい「わかりました!どうもありがとうございましたっ!」


タタタタ…


村人「『海』が邪魔で、幻獣様でもねえと、通れねえ……」

村人「……って、行っちまっただか」

村人「……ま、あのお嬢ちゃんも、諦めて戻って来るべ」



378: 名無しさん 2014/10/31(金) 22:01:17.04 ID:NusP9i4yO
トメラの村付近の海岸

ボコッ…グツグツ…


やよい「……」

やよい(この海、すっごく熱いです……!)

やよい(これじゃ、泳いで行けないですねー)

やよい(イカダでも作って……)

やよい(でも、しずんだら大変なことになりそうだし……)

やよい(こんな、お風呂みたいに熱い海に入ったら、ゆであがっちゃう)

やよい(どうしようかな……?)

やよい「えーっと、うーんと……」




やよい「…………あっ!」ティン!



やよい「これは……しばさんにお願いすればいい気がしますねー」

やよい「しばさん……お願いしますっ!」グッ


……ポゥ


コォォォ…


シヴァ「……ヤヨイさん、さっそく呼んでくれたのね?」

やよい「しばさん!」

やよい「あの、わたしあっちに行きたいんですけど……」スッ

やよい「この海、ちょっと渡れそうもないかなーって」

シヴァ「……この溶岩をどうにかすればいいのね?わかったわ」

やよい「お願いしますっ!」

シヴァ「……」コォォ


やよい「はわわっ!なんだか、急にさむくなりました……」


シヴァ「……絶対零度」バッ


コォォォォ……シャキーン!


やよい「!」

やよい「海に、氷の道が……!」

シヴァ「これくらい、お安い御用よ」

シヴァ「また、何かあったら呼んでちょうだい」


スゥゥ…


やよい「しばさん、どうもありがとうございましたっ!」ペコリ




479: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:16:49.35 ID:rOTNbUCvO
ドワーフ城 謁見の間

千早「春香……!」

真「こうして見ると、ホントそっくりだなぁ……!」

美希「雪歩と雪歩2号を思い出すの」

春香「……」

春香(私に、そっくりだ……)

ルカ「……」

ルカ(まさか、顔まで似てるなんて……)




ジオット「これは……!いったいどういう事だ!?」

ジオット「ルカが……2人?」



ルカ「……お父様」

ジオット「そ、そなたが本物か?」

ルカ「はい。あなたの娘、ルカにございます」

ジオット「ならば……」チラ

春香「あっ……嫌な予感……」

ジオット「お前は、何者だ!?」

ジオット「娘になりすまし、何を企む!?」チャキッ

春香「ちょ、ちょっと待って……!」

ルカ「おやめくださいお父様!その者は、私の友人です!」

春香「王女様……?」

ルカ「訳あって、私の代わりをしてもらっていました」

ジオット「何?……なぜ、そのような事を?」

ジオット「まさかお前、またあいつの墓に……?」

ルカ「いけませんか?」

ジオット「ならんと言っているだろう!」ダンッ



480: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:18:54.55 ID:rOTNbUCvO
ルカ「なぜですか!?この世でたったひとりの母の墓参りが、なぜいけないのですかっ!?」



千早「……」

真「なんでボク達、親子喧嘩に立ち会ってるのかなぁ……」

美希「まったく、いい迷惑なの」



ジオット「何度も言っているが、お前は将来、この国を背負わなければならん。たったひとりの人間の死に囚われていては、この国の大勢の民を守る事などできんっ!」

ルカ「ならば……!」

ルカ「ならば私は、王位などいりません!」

ルカ「家族の絆を捨ててまで……この国を背負う事などできません!」

千早(家族の、絆……)

ジオット「なんだとっ!」ダンッ



春香「ま、まあまあ……落ち着いてください」

ジオット「黙れっ、ニセモノがっ!」

春香「ひっ!」ビクッ

春香(ニセモノ………ちょっとショックだなぁ……)



千早「待ってください!」

ジオット「……何だ?そなたらには、関係ない事だ!」

真(じゃあ、なんでボク達の目の前でケンカするんだよ〜!)

美希(ミキ、この王様偉そうだから好きじゃないの)

千早「あの……ルカさんの気持ちも、わかってあげられませんか?」

ジオット「王妃は死んだ!それを忘れろと言っているだけだ!たったそれだけの事が、なぜできぬ!?」

ルカ「そ、そんな……!」


千早「それ、だけ……?」ゴゴゴゴ…



481: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:23:18.03 ID:rOTNbUCvO

千早「家族って……その程度のものなんですか?」ゴゴゴゴ…

千早「血のつながりって……そんなにも脆いものなんですか?」ゴゴゴゴ…

ルカ「チハヤさん……?」

ジオット「な、なんだお前?急に殺気が……」



春香「ち、千早ちゃん……」

真「……ヤバくない?」

美希「うん。千早さん……マジなの」



千早「子供にとって、母親がどれだけ大切か、わからないわけではないですよね?」ゴゴゴゴ…

ジオット「そ、そんな事はわかって……」

千早「わかっているなら、なぜお墓参りをやめさせるんですか?」ゴゴゴゴ…

春香「ち、千早ちゃん、落ち着いて!」

千早「ひとりの人間の死に囚われていては、大勢の民を守れない……?」ゴゴゴゴ…

千早「私に言わせれば、ひとりの人間の死も蔑ろにするような人間に、他の人間を守るなんてできないと思うんですが?」チャキッ

ジオット「や、やめろ!お前、わかっているのか?そんな事したら……!」

千早「家族を大切にできない人なんて……っ!」ジリッ



春香「……千早ちゃんっ、ダメッ!」ダキッ


千早「……はっ!」

千早「は、春香?わ、私……!」

春香「……千早ちゃん、急に王様に槍を向けるんだもん。ビックリしちゃったよ……!」

千早「ごめんなさい。ちょっと頭に血が上ってしまったみたい……」


真「……今の、危なかったね」

美希「ミキ達、お尋ね者になるとこだったの」



482: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:26:20.99 ID:rOTNbUCvO

ジオット「なんてやつだ、まったく……」

ジオット「ルカよ、お前の友人はこんな凶暴なやつばかりなのか?」

ルカ「お父様!この方は、私のためを思って……」

ジオット「……」

ジオット「……わかっておる!」

ルカ「え……?」

ジオット「わかっておるのだ、本当は……」

ジオット「ルカよ……お前はまだ16歳。まだまだ母親の温もりが必要よな?」

ルカ「そ、その様な事は……///」

ジオット「どう癒せばよいか、わからなかったのだ。母親を失ったお前の悲しみを……」

春香「王様……」

ジオット「だから、お前が悲しみを早く忘れるように、部屋で勉強漬けにした」

ジオット「母親の事を忘れれば、悲しみも忘れるだろうと思い、墓参りも禁止にした」

ジオット「しかし……どうやらそれは間違っていたみたいだな」

ジオット「もう少し、お前とちゃんと話をするべきだった……」

ルカ「お、お父…様……っ!」ウルッ

ジオット「そなたのおかげで気づく事ができた。礼を言う」ペコリ

千早「いえ……」

千早「こちらこそ、無礼な物言いをしてしまって、すみませんでした」ペコリ

千早(つい……熱くなってしまった)

千早(私にこんな事言う資格なんて、無いはずなのに……)




483: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:31:02.91 ID:rOTNbUCvO

ジオット「……見苦しいところを見せてしまったな」

ルカ「皆さんには、大変ご迷惑をおかけしてしまいました……」

ルカ「……深くお詫び致します」ペコリ

春香「そ、そんな、頭を上げてください」

真「なんかルカのキャラ、変わってない?」

千早「今のルカさんは王女だもの。砕けた話し方はできないわよ」

真「……なるほど」

美希「……あふぅ」



ジオット「……それで?そなたらはいったいどのような用でここに?」

ジオット「見たところドワーフではないな。上の世界から来たのか?」

春香「はい」

春香「あの、私達、クリスタルを探しているんですけど……」

ジオット「ほう、クリスタルか」

ジオット「もしやそなたら、東の大穴から来たのか?」

春香「はい、そうです」

ジオット「そういえば、1隻だけ戦闘意思のない船がいたが……それがそなた達だったのだな」

ジオット「危うく我々も撃ち落とすところだった」



484: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:33:33.24 ID:rOTNbUCvO


千早「あの、地底のクリスタルは無事なんですか?」

ジオット「残念ながら……4つの内2つは、あの者達の手に渡ってしまった」

真「さすが律子……じゃなくて小鳥さんか。手が早いなぁ」

ジオット「しかし、このドワーフ城のクリスタルは無事だ。我々戦車隊が追い返したからな」

春香「飛空艇と撃ち合っていた戦車ですか」

ジオット「ほう、あの空飛ぶ船は飛空艇と申すのか。上の世界には、あの様なものがあるとはな……」

ジオット「我が国自慢の戦車隊も、空から攻撃されては少々苦しい……」

ジオット「……そうだ。そなた達の飛空艇とやらで、援護してはくれぬか?」

ジオット「実は今、敵の本拠地であるバブイルの塔に攻撃を仕掛けているのだが、ちと劣勢でな」

春香「あ……それが……」

千早「私達の飛空艇では、地底世界を飛ぶ事ができないようなので……」

千早「仲間に、強化を頼みました」

千早「今は、ここにはありません」

ジオット「む、そうであったか」

春香「あの、王様……」

春香「このお城のクリスタルは、どこにあるんですか?」

ジオット「ふっふっふ……」

ジオット「何を隠そう、この玉座の裏の、隠し部屋にある!」

ジオット「ここならば、私の目の黒い内は安全というわけだ」

春香「なるほど……」


真「!」

真「……みんな、静かに!」

春香「どうしたの?真……」

真「誰かが、盗み聞きしてる……!」

ジオット「何……!?」

真「この先から、気配を感じる!」スッ

ジオット「わかった、今開ける!」カチッ


ズズズ…



485: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:36:41.62 ID:rOTNbUCvO
バブイルの塔 B13F

伊織「はぁ……」トボトボ

伊織(どんだけ階段降りたと思ってんのよ……)

伊織(いい加減、地底とやらに着いてもいい頃よね……)

伊織(……もう何時間、いえ、何日も歩きっぱなしで、いい加減疲れたわ……)

伊織(お腹空いた……)

伊織(ジイのバカ……食べ物を現地調達なんて、無理があるわよ……)

伊織(あー……なんかもう、怒る気力もなくなってきたわ……)



伊織「……ん?」チラ



伊織「扉……?」

伊織「……」

伊織「もし、これが出口じゃなかったら……」

伊織「……」

伊織「…………ううん」ブンブン

伊織「ダメよ、弱気になっちゃ」

伊織「今度こそ、出口のはずよ!」

伊織「………………よしっ!」グッ

伊織「……」スッ



ギィ……



……ドゴォン!…ドカァン!



伊織「えっ!?」

伊織「な、何!?」



486: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:39:27.14 ID:rOTNbUCvO
地底世界 バブイルの塔入口

ドドドド…

…ズガァン!…ドォォン!



伊織「な、なんなのよこれは!」

伊織「やっと外に出たと思ったら……」

伊織「なんでいきなり戦車やら大砲やらがドンドコやってるのよっ!」


ヒュー…


伊織「!」

伊織「きゃぁぁぁっ!」ダッ


…ドゴォン!


伊織「はぁ、はぁ……!」

伊織「……じょ、冗談じゃないわ!」

伊織「せっかく苦労してここまで来たのに、やられてたまるかっての!」


ドゴォン!ダダダダ…

ヒュー…ドカァン!



伊織「…………上等じゃない」

伊織「絶対、絶対、ぜーったいに生き抜いてやるんだからっ!」

伊織「スーパー忍者アイドル伊織ちゃんの底力、見せてやるわっ!」ビシッ


伊織「うあああああああっ!」ダッ


タタタタ…



ヒュー…ドカァン!

ドドドド…ドゴォン!



………



……




487: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:42:46.54 ID:rOTNbUCvO
地底世界 岩山

伊織「はぁ、はぁ……!」ヨロッ

伊織「な、なんとか……」

伊織「抜けた……」

ズルッ…

伊織「あっ……!」ヨロッ

ドテッ

伊織「ぐっ……!」

伊織(身体に……力が、入らない……)

伊織(こんな……ところ……で……)

伊織(ダメ……っ!)



伊織(あ……頭が、ボーっと……して……)

伊織(い……し…き……が……)

伊織(……こん…なの……いや……よ……)

伊織(…………や……よ……い……)



伊織「……」ガクッ




488: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:46:22.00 ID:rOTNbUCvO

…ポタッ



伊織(…………な…に……?)ピクッ



…ポタッ



伊織(……あ…め…………?)



「………………ちゃんっ!」



伊織(………だ…れ………?)



「……………りちゃんっ!」ギュッ



伊織(……あったかい………)



「……も……いじょ…ぶだよっ!」



伊織(あったかくて……眠くなっちゃうじゃない……)



伊織(…………)










やよい「伊織ちゃん…………」

やよい「わたしがぜったいに…………!」



489: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:49:36.80 ID:rOTNbUCvO
ドワーフ城 救護室

伊織「……………やよいっ!」ガバッ



伊織「…………あ…れ?」

伊織「私……?」



ドワーフ兵士「おおー!気がついたかー!」



伊織「ひっ!」ビクッ

伊織「な、なによあんた!」

伊織「あ……」ガクン

ドサッ


ドワーフ兵士「お前、ひどい怪我ー!まだ寝てなきゃダメー!」


伊織「……」

伊織(ここは、どこなの……?)

伊織(助かったの?私……?)

伊織(誰が、私を……?)

伊織(………)

伊織(………………やよい?)

伊織(そんなわけ……ないわよね……)

伊織(…………)

伊織(でも………)

伊織(やよいが助けてくれた夢を見た気がするわ……)







伊織(やよいに、会いたい……っ)ウルッ







490: 名無しさん 2014/11/12(水) 20:55:23.10 ID:rOTNbUCvO
ドワーフ城 クリスタルルーム

春香「まさか、地下にクリスタルルームがあるなんてね……」

真「思い出すなぁ……」

真「ファブール城のクリスタルルームで、律子とタイマン張ったっけ……」


美希「ねえ、真クン。盗み聞きしてた人は、どこにいるの?」

真「えーと……」キョロキョロ

真「……あれ?おかしいなぁ……誰もいない」

真「気配は、するんだけどなぁ……」

千早「……ん?」チラ

千早「あんなところに人形が……」

真「……ホントだ。ルカが探してた人形って、これなんじゃないか?」


スタスタ…



カタ…



真「!」



カタカタ…

カタ……カタカタ…



春香「に、人形が……!」

千早「動いた……?」

美希「なんだかキモいの」

春香「真、気をつけて!」



「キャハハハッ!」




491: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:07:57.06 ID:rOTNbUCvO
真「敵かっ!?」サッ



カルコ1「僕らは陽気なカルコブリーナ!」カタカタ

カルコ2「恐くて可愛い人形さっ!」カタカタ

美希「決して可愛くなんかないって思うな」

カルコ3「……ちょっと君!まだセリフの途中なんだから、チャチャ入れないでもらえるかなっ!」カタカタ

美希「……怒られちゃったの」

真「セリフとか、別にどうでもいいよ……」

春香「まあまあ、登場シーンぐらい、ちゃんとやらせてあげようよ」

美希「ぶー」

カルコ3「……いいかな?」カタカタ

春香「あ、どうぞ」

カルコ3「じゃあ、改めて……」カタカタ



カルコ1「僕らは陽気なカルコブリーナ!」カタカタ

カルコ2「恐くて可愛い人形さっ!」カタカタ

春香「なんか、カタカタ音がするのが気になるねぇ……」ヒソヒソ

千早「人形だから、仕方ないと思うわ」ヒソヒソ

カルコ3「……君達!真面目に聞いているのかい!?」

春香「え、えっと……」

真「ボク達、真面目に聞く義理はないと思うんだけど……」

美希(キモい上に、面倒くさい敵なの……)

カルコ3「……君達のせいで、話が進まないじゃないか!」カタカタ

カルコ3「まだブリーナ達だってセリフを言ってないんだからねっ!?」カタカタ

春香「は、はぁ……すみません」




492: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:14:22.70 ID:rOTNbUCvO

千早「……」

千早「じゃあ、三番目の人からセリフを言ってはどうかしら?」

真「そうだね。一番と二番はもう聞き飽きたし」

カルコ3「わ、わかったよ……」カタカタ



カルコ3「ばーかめっ!」カタカタ



春香「……」

春香「……えっ?それだけ?」

カルコ3「そ、そうだよ!これがボクのセリフなのっ!」

真「なんだか拍子抜けだなぁ」

美希「……あふぅ」

カルコ3「う、うるさいっ!」カタカタ

ブリーナ1「なあ、もうセリフなんていいよ……」カタカタ

ブリーナ2「うん。なんかグダグダになっちゃったしなぁ」カタカタ

カルコ3「で、でも、せっかく練習したのに!」カタカタ

ブリーナ3「張り切ってたのは、お前だけだろ?」カタカタ

春香「今度はケンカ始めちゃったよ」

真「あんまり仲良くないみたいだね」

千早「……よくわからないけれど、私達にも非はあるんじゃないかしら」

春香「そうなのかなぁ?」




493: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:22:33.21 ID:rOTNbUCvO

千早「あの」

カルコ3「なんだよ!」カタカタ

千早「私達、もう口出ししないから……」

千早「もう一度やってもらえないかしら?」

真「えー、またやるの?」

千早「このままじゃ、先に進まないわ」

真「ん、まあね……」

カルコ3「絶対にしゃべっちゃダメだからね!」カタカタ

千早「わかったわ」

カルコ3「じゃあ……」チラ

カルコ1「あ、うん……」カタカタ



カルコ1「僕らは陽気なカルコブリーナ!」カタカタ

カルコ2「恐くて可愛い人形さっ!」カタカタ

カルコ3「ばーかめっ!」カタカタ

千早「……っ!」プルプル

ブリーナ1「のこのこやって来るからさっ!」カタカタ

春香(ち、千早ちゃん、笑い堪えてる……!)

春香(どうしよう、私までおかしくなってきちゃった……!)

ブリーナ2「君らを倒して、リツコ様の」カタカタ

真(やっぱり、律子の手下かぁ……)

ブリーナ3「手土産にさせてもらうよ!」カタカタ

美希(どーでも良過ぎて、セリフがまったく頭に入ってこないの)



千早「……プッ……くくくっ!」

春香「ち、千早ちゃん……わ、笑ったら、悪いよ……ぷっ!」

真「2人とも、そんなにおかしかった?」

美希「箸が転がってもおかしい年頃なの」



カルコ3「ば、馬鹿にしやがってー!」ダッ



494: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:26:27.82 ID:rOTNbUCvO

カルコ3「くらえー!」ブンッ



真「……せいっ!」ブンッ


ドゴォ!グシャ


カルコ3「」


カルコ1「つ、強い……!」カタカタ



千早「……くくっ!」プルプル

春香「ひー!……お、お腹痛い!」ジタバタ



真「……」

真「春香と千早は戦えなそうだね」

真「美希、2人で行くよ!」

美希「えー、ミキもー?」

美希「……真クンだけで充分だって思うな」



カルコ2「スキありー!」ダッ



美希「ミニマム!」


ボンッ


美希「えいっ!」グシャ


カルコ2「」


真「へへ、やるじゃないか!」

美希「だって、キモいんだもん」



カルコ1「こ、こいつら、強いぞ……!」カタカタ

ブリーナ1「こうなったら……!」カタカタ

ブリーナ2「合体するしか……!」カタカタ

ブリーナ3「いくぞっ!」カタカタ




495: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:31:11.09 ID:rOTNbUCvO

ガチャッ!ガチャッ!


真「……なんだ?」


ガチャッ!ガチャッ!


美希「……どんどんくっ付いて行くの!」




カルコブリーナ「さあ、これからが本番だからねっ!」



真「うわぁ……でっかくなったなぁ」

美希「大きければいいってものじゃないと思うな」



カルコブリーナ「それっ!」ブンッ


ドゴォォォン!



真「うわっ!」

美希「きゃーなの!」



カルコブリーナ「ふふふ、ぺちゃんこにしてあげるよっ!」



真「あれは、食らったらヤバそうだなぁ……」

真「でも、あんな間抜けなやつらには負けないぞっ!」ダッ



496: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:35:18.85 ID:rOTNbUCvO

真「飛燕疾風脚っ!」


ビュンッ…ドゴォ!


カルコブリーナ「ぐっ……!」ミシミシッ


カルコブリーナ「このぉ!」ブンッ


美希「……えいっ!」ヒュンッ


グサッ!


カルコブリーナ「うぎゃああ!目、目があっ!」ジタバタ


真「よし、もう一丁!」グッ


カルコブリーナ「このおっ!」ブンッ


美希「真クン!危ない!」

美希「……プロテス!」


パキーン!


ドガッ!


真「うわっ……!」ジリッ


カルコブリーナ「このまま潰してやるっ!」ググッ


真「…………へへっ!」

真「うおぉぉぉぉ!」グッ


カルコブリーナ「そ、そんな!押し返される……!」ググッ


真「おぉぉぉぉりゃあっ!」グイッ


カルコブリーナ「うわあっ!」ヨロッ




497: 名無しさん 2014/11/12(水) 21:50:29.50 ID:rOTNbUCvO

美希「くらえ、なのっ!」ヒュンッ


ザクッ!


カルコブリーナ「ぎゃああっ!」ヨロッ


美希「真クン、トドメ!」


真「おおおおおっ!」

真「残烈拳!」


ダダダダダダダダダダ…


真「せいっ!」ドゴォ!


カルコブリーナ「…………!」ピクピク


真「…………破っ!」バキッ!


ガラガラ…ドォォォン…


カルコブリーナ「」






真「…………ふぅ」

美希「はー、キモかったの……」



千早「………あら?」

春香「人形さん達は?」



真「2人とも、やっと落ち着いたのか……」

真「もうボク達が倒したよ」

千早「そう……ごめんなさい」

春香「あ、でも……これってルカさんの人形なんだよね……?」

真「仕方ないよ、襲って来たんだし……」

美希「フカコーリョクってやつなの」

春香(正直に話せばわかってもらえるかな……?)


春香「とりあえず、戻ろっか」

春香「クリスタルも無事みたいだし」チラ


キラーン!




498: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:38:03.18 ID:yR4DnXuEO

律子「……そういうわけにはいかないわよ?」



春香「……律子さん!」

春香「……じゃないや、小鳥さん、ですよね?」

律子「そっかぁ……もうみんなにバレているのね」

真「小鳥さん……なぜ、こんな事をするんですか?」

律子「それは……みんなのタメに決まっているでしょう?」

春香「みんなのタメ……?」

律子「みんなが楽しめるように、私が頑張っているのよ?」

千早「音無さん。せめて、律子を解放してあげてください」

千早「このままじゃ、律子は……」

真「そうですよ!律子が可哀想です!」

律子「ダメよ。だって、私だけ月でひとりぼっちなんて、さみしすぎるもの」

律子「律子さんには、まだまだ活躍して……」

真「……意外と卑怯者なんですね?小鳥さんって」

律子「えっ……?」

春香「ま、真……」

真「……だってそうでしょう?」

真「さみしいんだかなんだか知りませんけど、月から動けないからって律子を操って悪さして、自分は無傷なんて……」

真「みんな大変な思いしてるっていうのに……」



真「……本当の悪党になっちゃったんですか?小鳥さん」



律子「……」



499: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:40:59.24 ID:yR4DnXuEO


真「やるなら、正々堂々とやりましょうよ!」

律子「……」

律子「……わかったわ。真ちゃんの言う事も、一理あるものね」

律子「……正々堂々、戦いましょうか!」

真「じゃあ、まずは律子を解放してあげてください」

律子「そうね……」







律子「…………なんて言うと思った?」ニコッ



4人「!?」



律子「……蛇君、いらっしゃい?」


ニュルリ…


タイダリアサン「はーい……」ニュルニュル


春香「な、何あれ……?」

千早「蛇の魔物……かしら?」

律子「あ、紹介するわね。この子は私の四天王のひとり……」

律子「怠惰のタイダリアサンよ!」

真「……ダジャレ?」

美希「センスないの」

律子「ちょ、ちょっとみんな!一生懸命考えたのにひどくないかしら?」

春香「あ、でも、千早ちゃんにはウケてるみたいですよ?」チラ



千早「……プッ……くくっ!」プルプル



律子「……」



500: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:46:58.88 ID:yR4DnXuEO


律子「ま、いいか……」

律子「クリスタルは、もらって行くわね」キラーン!

律子「蛇君、後は任せたわよ?」

タイダリアサン「はいはい……わかりましたよ……」


律子「じゃあみんな、頑張ってねー!」

スタスタ…




春香「行っちゃった……」

真「小鳥さん……」

美希「……あふぅ」

千早「みんな、敵がいるのを忘れないで!」

春香「あ、そうだった!」


タイダリアサン「私も気が進まないんですがね……」

タイダリアサン「コトリ様の命令なんで……すいませんねぇ」

タイダリアサン「とりあえず、パパっと終わらせちゃいますね」


ザァァァァ…


春香「!」

春香「水が、集まってく……!」

春香「……真っ!」

真「うん……バロンで戦ったあの亀の魔物と同じだね……!」

千早「春香、どういう事?」

春香「津波がくるよ!」

千早「津波……?」


タイダリアサン「あ、知ってるんですか……」

タイダリアサン「まあ、そういう事です」


真「そうはさせないぞっ!」ダッ


タタタタ…


真「はぁぁぁぁぁ!」バリッ


タイダリアサン「ん……?」



501: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:49:30.91 ID:yR4DnXuEO

真「……雷煌拳!」


ズガガガガガガッ!


タイダリアサン「痛い痛い痛い!」


真「……あれ?」スタッ


タイダリアサン「痛いじゃないですかーもー!」


真「き、効かないのか……?」


タイダリアサン「あー……」

タイダリアサン「よく勘違いされますけど、私、雷が弱点ってわけじゃないんで……」

タイダリアサン(ま、今のは普通に痛かったんですけどね)

タイダリアサン「じゃ、今度はこっちの番ですね」


タイダリアサン「飲まれちゃってください!」

タイダリアサン「タイダるウェーブ!」


ザァァァァァァ…


真「まずい!」

千早「くっ……!」

春香「わわっ!」

美希「やーん!せっかく髪の毛セットしたのにー!」


ザッパァァァァァァァン!






真「ぐっ……!」ヨロッ

真「あ、あれ……?」ガクン

真「ち、力が入らない……?」



502: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:52:31.47 ID:yR4DnXuEO


タイダリアサン「そうでしょうねぇ」


真「ど、どういう事だっ!?」


タイダリアサン「タイダるウェーブをまともに受けると……」

タイダリアサン「『脱力』しちゃうんですよー」


真「な、なんだよそれっ!」


タイダリアサン「あなたはまだマシな方だと思いますよー?」

タイダリアサン「……ほら、仲間を見てごらんなさい」


真「……え?」クルッ



春香「はぁ……何もやる気が起きないよぉ……」ズーン

千早「……まあ、なんでもいいですけど」ボソッ

美希「あーん、びしょびしょなの……」


真「……」


タイダリアサン「どうです?恐ろしいでしょ?」


真「う、うん……確かに……」

真(美希はいつもと変わらない気もするけど……)


タイダリアサン「あなたもそのうち、仲間と同じように無気力になると思いますから、心配しないでください」


真「く……!」



美希「ねえ春香、ゴム持ってない?」

美希「髪の毛がうっとおしいから縛りたいの」

春香「はぁ……美希にゴムを渡す気力もないよ……」

美希「もー、なんでいじけてるの?」スッ

美希「借りるね!」

美希「よいしょっと……」ギュッ



503: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:55:58.42 ID:yR4DnXuEO

真「あ…れ……?な、なんだ……?」

真「なんか、何もかも面倒になってきた……」

真「どうせ、ボクなんか……」イジイジ



タイダリアサン「堕ちましたねー……」

タイダリアサン「さて、めんどくさいけど、トドメを刺しちゃいますか」


ヒュンッ…ザクッ!


タイダリアサン「痛っ!」

タイダリアサン「だ、誰ですか?」



美希「せっかくセットしたのにぃ……!」

美希「ミキ、怒ったの!」



タイダリアサン「あれ?タイダるウェーブが効いてない……?」

タイダリアサン「そ、そんな事、あるはず……」


美希「春香も千早さんも……真クンまで、そんなになっちゃうなんて……」

美希「みんな、もっとやる気を出して欲しいって思うな!」プンスカ

真「どうせ……ボクなんか……」イジイジ

春香「はぁ……言い返す気力もないよ……」ズーン

千早「……まあ、なんでもいいですけど」ボソッ



504: 名無しさん 2014/11/15(土) 08:59:48.60 ID:yR4DnXuEO


タイダリアサン「面倒な事になっちゃったなぁ……」



美希「……魔物まで、やる気ないの」

美希「うーん、じゃあ……」

美希「このままどっか行ってくれれば、見逃してあげてもいーよ?」

タイダリアサン「まあ、そうしたいところなんですけど……」

タイダリアサン「一応命令なんで、もう少し時間稼ぎさせてもらいますね?」

タイダリアサン「それっ!」


ブォンッ!


美希「きゃっ!」ヒョイッ


美希「……このっ!」ギリッ


ヒュンッ…ザクッ!


タイダリアサン「痛いっ!」

タイダリアサン「……うっとおしいなぁもう」

タイダリアサン「ブレイズ!」


ゴオオォォォォォ!


美希「あちちっ!」ヨロッ

美希「ケアルラ!」


シャララーン!キラキラ…


タイダリアサン「うーん……埒が明かない……」

タイダリアサン「じゃあ、これならどうです?」


ビュンビュンビュン…

ドゴォ!バキッ!



美希「いやぁ!なんかクネクネ動いてるの!」

美希「あ、あんなの、避けられるわけないって思うな!」



ラムウ「……裁きの雷!」


バリバリッ…ズガガガガーーン!




505: 名無しさん 2014/11/15(土) 09:14:55.53 ID:yR4DnXuEO


タイダリアサン「ぎゃあああ!」ビリビリ

タイダリアサン「な、なんですか?いったい誰が……?」





やよい「うっうーーー!」

やよい「みなさんは、わたしが守りましゅっ!」



千早「……まあ、どうでもい…………えっ?」キュンッ


やよい「あっ………///」


美希「やよい!?」

美希(今、やよい噛んだよね?)

やよい「美希さん!だいじょーぶですかっ?」

やよい(かんじゃった事、ばれてないといいかなーって)

美希「うん!助かったの!」


千早「た、高槻さんっ!」


やよい「千早さんっ!おひさしぶりですっ!」

美希「あれ?千早さんが元に戻ったの!」

千早「ええ……高槻さん(が噛んだ)おかげよ」ニコッ

やよい「えへへ、よかったですー!」



タイダリアサン「……」

タイダリアサン(あの召喚士、ちょっと厄介だなぁ……)








やよい「まものさんっ!」

やよい「こんな事しちゃ、めっ!ですよっ!」


タイダリアサン「……」




506: 名無しさん 2014/11/15(土) 09:19:11.38 ID:yR4DnXuEO

美希「3人でやっつけるの!」

やよい「はいっ!」

千早「もう、油断はしないわ」チャキッ




タイダリアサン「あのー……」

やよい「はい、なんですか?」

タイダリアサン「ちょっと3人を相手にするのはさすがに面倒なんで……」

タイダリアサン「私、これで失礼しますね?」

やよい「そうなんですかぁ……」

やよい「わかりましたー!」

美希「んー……まあ、いっか」

千早「えっ?」

千早「……まあ、2人がいいならいいけれど……」




やよい「じゃあ、さようならー!」

美希「小鳥によろしくなのー!」

千早(本当に行かせていいのかしら……?)



タイダリアサン「はーい、さようならー」


ニュルニュル…






やよい「あの、美希さん。小鳥さんによろしくって……?」

美希「えっと……まあ、話せば長くなるの」

やよい「そうですかー」

やよい「とりあえず、春香さんと真さんをどうにかしないとですね!」

千早「そうね」

美希「……あふぅ」




508: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:03:11.55 ID:QwbzxRrkO


真「いやぁ、不覚だったよ……」

真「ごめん!」

やよい「そんな、あやまらないでくださいっ!」

美希「そうだよ真クン。まったく活躍しなかった人達もいるんだから……」チラ

春香「うぅ……」

千早「……ごめんなさい」

やよい「いえ……みなさんがぶじで、ほんとーに良かったですー!」

春香「やよい……!」

千早「高槻さん……!」



春香「でもやよい、よくここがわかったね?」

やよい「あ、それは……はいほーの人が教えてくれたんですよ!」

真「はいほーの人?」

春香「らりほーじゃなくて?」

やよい「はい!はいほーの人が、どわーふのお城に行けばみなさんに会えるって!」

美希「ひとりでこんなところまで来るなんて、やよいも成長したの」

やよい「あっ、わたし、ひとりじゃないですよ?」


やよい「伊織ちゃんも、いっしょです!」


春香「!」

真「えっ、伊織も……!?」

千早「水瀬さん……」

美希「デコちゃん、どこにいるの?」

やよい「それが……」

やよい「すっごいケガしてたんで、ちょっと休んでもらってます」

春香「そっか……」

春香(伊織……大丈夫かな……?)

春香(これで、あと会ってないのは貴音さんだけか……)

春香(どこにいるんだろう……?)




509: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:05:10.54 ID:QwbzxRrkO

美希「それにしても、びっくりしたの」

美希「ヤバいっ!……って思ったら、急に変なおじいちゃんが現れて、ドカーンって」

美希「あれ、やよいがやったんでしょ?」

やよい「はいっ!らむさんは、わたしのお友達なんですよー!」

千早「その方にも、後でお礼を言わないと」

春香「おじいちゃんがお友達なんて、やよいらしいねぇ」

真(ラムさん……)

真(だっちゃの人かな……?)



春香「そうだ、クリスタルが奪われちゃった事、王様に報告しなきゃ……」

真「……結局、ボク達何の役にも立たなかったね……」

千早「……」

美希「仕方ないの。小鳥が卑怯なんだもん」

やよい「?」



春香「……とにかく、王様のところに戻ろう」

千早「……そうね」

やよい「……じゃあわたしは、伊織ちゃんのところへ行ってますね?」

真「伊織は今どこにいるの?」

やよい「えーっとぉ………きゅーごしつってところにいます!」

春香「救護室か……わかった」

春香「じゃあ、あとで私達も行くから」

やよい「はい!待ってます!」




510: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:08:43.87 ID:QwbzxRrkO
ドワーフ城 救護室

伊織「モグモグ……」

ドワーフ兵士「どうだー!ドワーフの料理、うまいだろー?」

伊織「……ふん。まあまあね」

伊織「でも、この伊織ちゃんの舌を満足させたいなら、この100倍はおいしくないとね!」

ドワーフ兵士「人間、手厳しいー!」



ガチャ…



やよい「伊織ちゃん、ぐあいはどう?」



伊織「!」カランッ

伊織「や……やよい!?」

伊織「な、なんでここに……!?」

やよい「えへへ……このお城にくるとちゅうで、伊織ちゃんを見つけたから……」

やよい「伊織ちゃんに会えて、わたしうれしくなっちゃって……」

やよい「伊織ちゃんもつれてきちゃった!」

やよい「……かってに、ごめんね?」

伊織「な、何言ってるのよっ!」

伊織「私…だって……ヒック……!」



伊織「やよいに……会いたかった……!」ダキッ



やよい「伊織ちゃん……」ギュッ

伊織「やよいぃ……!」ポロポロ

やよい「会えて、よかった……」ナデナデ

伊織「うぅ……グスッ!」ポロポロ



伊織(やよい……助けてくれて、ありがと……)




511: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:17:37.73 ID:QwbzxRrkO

伊織「えっ……春香達も来てるの?」

やよい「うん!春香さんたち、まものさんとたたかってたみたいだよ?」

伊織「ふーん……春香達も、まあまあ頑張ってるみたいね」

伊織「ま、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんがいれば、百人力よね!」

やよい「にんじゃ……?」

伊織「そうよ。私は、この世界では忍者なのよ」

伊織「やよいだって、何かあるでしょ?」

伊織「なんていうか、こう……力?みたいなものが」

やよい「うー……」

やよい「あっ!だれかが、わたしのことを『しょーかんし』って言ってたかも!」

伊織「しょーかんし?聞いた事ないわねぇ……」

伊織「で、やよいはどんな事ができるの?」

やよい「えーっとね……お友達を、よびだせるよ!」

伊織「友達を、呼び出す……?」

伊織「よくわからないけど、助っ人みたいなものかしら?」

やよい「うーん、わたしもよくわからないけど、そうかも」

伊織「やよいの友達か…………ちょっと見てみたいわね」

やよい「みんな、とーってもいい人たちだよ?」ニコッ

伊織「あんたにとっては、大抵のやつがいい人じゃない……」

伊織「……春香達も、何か特別な力を持っているのよね?」

やよい「春香さんはねー、真っ黒だったよ」

伊織「真っ黒……?」

やよい「うん。黒いのが、ばばーん!って」

伊織「意味がわからないわね。で、他は?」

やよい「真さんは、とっても強かった」

伊織「それ、いつも通りじゃない?」

やよい「あ、そうかもー」

やよい「雪歩さんは、穴ほってたかなーって」

伊織「それも、いつもと何も変わらないわね」

やよい「美希さんは、まほうを使ってたよ!」

伊織「魔法……?へぇ、ちょっと見てみたいわね」

伊織(私の忍術みたいなものかしら?)

やよい「あっ、それでね!……プロデューサーは、べろちょろなんだよ!」

伊織「え?……べろちょろって、あの?」

やよい「うん。あのべろちょろだよ!」


伊織(あいつ……何やってんのよ……)



512: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:27:11.00 ID:QwbzxRrkO
ミスリルの村

響「なんだこの村……誰もいないのかー?」キョロキョロ

響「ミスリルがどこで採れるか、聞きたかったんだけどなぁ……」



「………おい!」



響「ん?誰かいるのか?」キョロキョロ

響「…………誰もいないぞ」

響「…………はっ!」

響「ひょ、ひょっとして……オバケ……!?」ブルブル



「こら!オバケ扱いするな!ちゃんと生きてるぞ!」



響「ま、また……!」

響「どこから声が……?」キョロキョロ



「下だよ下!足元を見てみなさい」



響「足元……?」チラ

響「……………あっ!」

小人「やあ、やっと気づいてくれたね」

響「お前……ちっちゃいなぁ!」

響「こんなにちっちゃい人間は、見たことないぞ」

小人「僕は小人さ。君たち人間が大き過ぎるんだよ」

小人「踏み潰さない様、気をつけてくれたまえ」

響「へー、小人かー……お前の他にも、この村には誰かいるのか?」

小人「ああ。カエル君とブタ君がいるよ」

響「普通の人間はいないのか……」

響「でも、カエルやブタにも会ってみたいぞー!」

小人「そうかい?だったら、僕達の家に招待しよう……」

小人「……と、言いたいところだが、おそらく君は、大き過ぎて僕達の家には入れないだろうね」

響「そっか……残念だぞ」

小人「だから、コンサートホールに案内しよう」

響「コンサートホール?」

小人「ああ。この村は、ダンスが盛んでね。コンサートホールはダンスを披露する場所なんだ」

小人「君は大きいけど……あそこならまあ、入れるだろう」

小人「じゃあ、ついて来なさい」

トテトテ…


響(自分が連れて行った方が早い気がするぞー)



513: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:29:02.27 ID:QwbzxRrkO
ミスリルの村 コンサートホール

響「ここがコンサートホールかー」キョロキョロ

響「自分達がいつもライブとかしてるステージの、ミニチュアみたいだなー!」

小人「君たちにとってはそうだろうね」

小人「だが僕達にとっては、5000人を収容できる大施設だ」



カエル「おや……?」

ブタ「あれ……?」

カエル「小人君、お客さんかい?」



小人「やあ、カエル君、ブタ君。こちらは人間の……」

小人「……そうだ、まだ君の名前を聞いてなかったね」

響「自分、我那覇響だぞ!響って呼んでくれよな!」

小人「ヒビキ君か……」

カエル「やあ、初めまして!僕は……」

響「ピョン太!」

カエル「えっ……?」

響「お前の名前は、ピョン太に決めたぞ!」

カエル「あ、いや僕は……」

響「小人のお前は、ミニ助にしよう!」

小人「……」

響「ブタは……ブタ男でどうだ?」

ブタ「あ、あの……」

小人「ヒビキ君、彼女は…………女性だ」

響「えっ?そ、そうだったのか……」

響「知らなかったとはいえ、ごめんなー」

ブタ「あ、いえ……」

響「じゃあ、ブタ美にしよう!」

ブタ「は、はぁ……」

ミニ助「……まあ、あだ名だと思えばいいか」

ピョン太「ネーミングセンスに問題がある気もするけどね……」

ミニ助「ところでヒビキ君。人間の君が、こんな村にいったい何の用で来たんだい?」

響「自分、ミスリルを採りにここに来たんだ!」

ピョン太「ミスリルか……」

ミニ助「ふむ。詳しい話を聞こうか」

響「実は……」



514: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:30:53.74 ID:QwbzxRrkO


ミニ助「なるほど……」

ミニ助「船を強化するためにねぇ……」

響「山に入るのには、許可とか必要なのか?」

ピョン太「いや、そういうのは一切必要ないんだけど……」

ブタ美「……や、山には……つい最近、魔物が現れたの……」

ミニ助「だから、我々も気軽にミスリルを採りに行く事はできなくなってしまってね」

響「ふーん、そうなのか……」

響「だったら、自分に任せろ!」

響「魔物、やっつけて来てやるぞ!」

ミニ助「しかし……君ひとりでは危険では……?」

響「なんくるないさー!これまでだって、魔物とたくさん戦ってきたからな!」

ピョン太「小人君、お願いしてみないかい?」

ミニ助「……わかったよ」

ミニ助「だが、心配だから僕達もついて行こう」

響「一緒に来てくれるのか?それは心強いぞー!」

ピョン太「まあ、よそ者だけに任せるのも、申し訳ないからね」

ブタ美「わ、私も、お手伝いします……」





響「ねえ、つるはしとかは持って行かなくていいの?」

小人「ああ。ミスリルの採掘は、ブタ君に任せればいいよ」

ブタ美「が、頑張ります」

響「そっか。よろしく頼むな!」

響「それじゃ、出発だ!」





515: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:33:51.59 ID:QwbzxRrkO
ミスリル鉱山

スタスタ…


響「こういうところって初めて来たけど……」

響「なんだか暗くてジメジメしてて、雰囲気悪いなー」

ミニ助「鉱山なんて、そういうもんだよ」

ミニ助「洞窟を掘って採掘するんだからね」

ブタ美「あ……そろそろ採掘場に着きます」




「ムシャムシャ……」

「バリッ、モグモグ……」



響「…………あ!何かいるぞ!」

響「亀……かな?何か食べてる」

ブタ美「ヒビキさん、あ、あれが魔物です!気をつけて!」



カイナッツォ「……ん?」

カイナッツォ「お、お前は……!」

響「あれ?自分の事知ってるのか?」

カイナッツォ「バロン城で受けた屈辱、忘れたとは言わせんぞ!」

響「バロン……?」

響「……ああ、思い出した!あの時の亀かー」

響「何か、ずいぶん小さくなっちゃったなぁ」

ミニ助「ヒビキ君、知り合いなのか?」

響「うん。前に自分達がやっつけた魔物なんだけど……」

響「こんなところに逃げてたんだな」

カイナッツォ「ククク……ここで会ったが百年目……!あの時の恨み、晴らしてくれる!」

ピョン太「ヒビキさん、来るよ!」

響「あ、うん……」


カイナッツォ「死ねぇ!」ダッ


ガシッ!


カイナッツォ「ぐっ!は、離せっ!」ジタバタ

響「……」




516: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:36:11.62 ID:QwbzxRrkO

響「あのさ、前よりだいぶ小さくなってるみたいだけど……そんなんで自分に勝てると思ってるの?」

カイナッツォ「う、うるさいっ!早く離せっ!」

響「……」パッ


ドサッ


カイナッツォ「ぐっ……」

響「……」

カイナッツォ「……」

響「……まだ、やる?」

カイナッツォ「……ふ」

カイナッツォ「ふふふ……今日のところは、痛み分けにしておいてやろう」

カイナッツォ「だが、次に会った時が、お前の命日だ!」

カイナッツォ「覚えておけっ!」


ガサガサ…



ミニ助「ヒビキ君、見直したよ!君は強いんだなぁ!」

ピョン太「うんうん、助かったよ!」

ブタ美「ありがとうございます!これで、採掘が続けられます!」

響「う、うん……」

響「自分、たいした事してないけどな」



響「……で、つるはしも無いのに、どうやって掘るの?」

ブタ美「私に、任せてください!」ダッ


┣¨┣¨┣¨┣¨……ドゴォン!


ボロボロッ…ドサッ


響「おおぉ!突進で壁を崩したのかー。すごいぞ!」

響(ブタって言うより、猪みたいだなー。似たようなものだけど)

ブタ美「私……これしか取り柄がないので……」

ミニ助「……さ、みんな。ミスリルを運んでしまおう!」

ピョン太「ヒビキさんは、船の修理に使うんだよね?少し多めに持って行った方がいいな」

響「うん、そうだな!」





517: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:38:38.37 ID:QwbzxRrkO
ミスリルの村 コンサートホール

響「え?ダンスを?」

ミニ助「ああ。魔物を追い払ってくれたお礼に、僕らのダンスを披露しよう」

響「ダンスかぁ。興味あるぞ!」

ピョン太「じゃあ、準備するから、ちょっと待っててくれるかい?」






ミニ助「いぇーい!」

響「い、いぇーい!」

ミニ助「れでぃーす、えーんじぇんとるめーん……」

ピョン太「うぃあー、ミスリルブラザーズ!」

ブタ美「うぃるしょーゆー、すぺしゃるだんす!」

ミニ助「みゅーじっく、かもん!」


響「……」カチッ

響(なんで自分が裏方もしなくちゃならないんだ……?)


テッテレテレテテ……♪


響(なんか、ゆったりした曲だなぁ)

響(これだと、激しい動きで魅せるダンスは難しい……ん?)


ミニ助「はっ!ほっ!」ダッ

ピョン太「よっ!」ピョン

ブタ美「えいっ!」クルンッ



響「わぁ……!曲はゆったりなのに、ずいぶん激しいダンスだなー」

響「……」ウズウズ

響「………やっぱり、自分も踊りたいぞ!」ダッ


テッテレテレテテ……♪


ミニ助「はっ!ほっ!」ダッ

ピョン太「よっ!」ピョン

ブタ美「えいっ!」クルンッ

響「へへっ!」キュッ


テッテレテッテッテー……♪



クルンッ……スタッ



4人「……せんきゅー!」



518: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:40:14.59 ID:QwbzxRrkO
トロイア城 庭園

雪歩「よいしょ、よいしょ……」


ザクッ…ザクッ…


雪歩「もっともっと深く……」


ザクッ…ザクッ…


雪歩「いい土になぁれ……」


ザクッ…ザクッ…



雪歩「……………ふぅ」

雪歩「ちょっと疲れちゃったかも……」

雪歩「休憩しようかな」スッ


コポコポ…


雪歩「ズズ……」

雪歩「はぁ………落ち着く……」




トロア「ユキホ王女ーー!」


タタタタ…


雪歩「あ、トロアさん」

トロア「はぁ、はぁ…………探しましたよ」

トロア「こんなところで何をなさっているのです?」

雪歩「……ちょっと、土を耕していたんですぅ」

トロア「土を……ですか?」

雪歩「はい。『畑を増やしたい』って、アンさんに言われて……」

トロア「姉上……まだ病み上がりだというのに、ユキホ王女にこの様な事をさせて……」

雪歩「あっ、き、気にしないでくださいっ」

雪歩「私は、ただでこの国に置いていただいてる身ですし……」

トロア「……」




519: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:43:29.85 ID:QwbzxRrkO

トロア「しかし、ユキホ王女……」

トロア「あなたは優しすぎます。嫌な事は嫌と、はっきり申した方が……」

雪歩「あ、いえ……私もいいリハビリになっているんで……」

雪歩「この国の役に立ちたい、とも思いましたし……」

雪歩「……何より、土をいじってる時間が、一番落ち着くんですぅ」ニコッ

トロア「………ふふ」

トロア「あなたは本当にお優しいお方だ……」ニコッ

雪歩「そ、そんな事……///」



雪歩「わ、私なんて……ひんそーで、ちんちくりんで……!」チャキッ


トロア「ゆ、ユキホ王女、ダメですってば!」


雪歩「あ、あ………!」



雪歩「穴掘って、埋まってますぅーー!」


ザクザクザクザクザクザク…



トロア「あーあ……」

トロア「これさえなければ、素晴らしい人なんだけどなぁ……」



スタスタ…


アン「あら……トロア?」


トロア「姉上……」

アン「ユキホさんを見かけなかったかしら?」

トロア「ああ……ユキホ王女なら……」クイッ

アン「クスクス……また、穴の中なのね?」

アン「本当に、面白い方ねぇ……」




520: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:46:21.41 ID:QwbzxRrkO

トロア「それより、姉上はなぜここへ?」

アン「お茶のお誘いに、ね?」

アン「せっかくユキホさんとお友達になったんですもの。もっとお話したいな、って思って」

アン「ユキホさんのお話って、とっても面白いのよね」

アン「特に、あいどる……というものの話とか……」

トロア「友達とは……姉上は言い方が少々ザックリしすぎでは?」

アン「いいじゃない。私とユキホさんがお友達になれば、トロイアとダムシアンは、事実上の友好国になるんだから」

トロア「……まさかそんな打算が混じっているとは……」

アン「あ、ユキホさんとお友達になりたいと思ったのは、別に打算があったからってわけじゃないのよ?」

トロア「はいはい………じゃあユキホ王女をお呼びしますね?」



トロア「おーーい!ユキホ王女ーー!」



雪歩「はぁい……」ガサゴソ



雪歩「す、すみませんっ!私、また……」

トロア「お気になさらず」

アン「ところでトロア。あなたはどうしてここにいるの?」

トロア「はっ……!忘れてました!」



トロア「ユキホ王女。あなたに、お客様です」



雪歩「わ、私に………ですか?」

アン「丁度いいわ。是非そのお客様も、お茶にお呼びしましょう!」

アン「トロア、そのお客様、ここへ連れて来てもらえるかしら?」

トロア「わかりました」




521: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:51:30.52 ID:QwbzxRrkO
トロイア城 客室

トロア「お待たせしました。ユキホ王女の元へお連れいたします」ペコリ



あずさ「よろしくお願いしますね〜」ペコリ

亜美「兄ちゃん、ゆきぴょんは元気にやってるかなぁ?」

P「雪歩の事だ。心配は……」

P「……」

P「そんなに、してないが……」

亜美「そこは自信持とうよ……」

亜美「ま〜でも、この国を見る限りは、相変わらずっぽいよね」

真美「うんうん。なんたってここは、森と湖と穴の国だからね〜」

亜美「いや〜、国の名物を増やすなんて、なかなかできる事じゃないよ〜」

真美「もはや、メイヨ国民レベルだね!」

P「確かになぁ……ゲームの世界とはいえ、俺もびっくりしたよ」



あずさ「うふふ、雪歩ちゃんに会うのが楽しみだわ〜」



P「あ、あずささん、どこ行くんですか!?」

P「そっちじゃなくてこっちですってば!」

あずさ「あ、あら、私ったら……///」



亜美「ここにも、相変わらずなお方がいましたな〜」

真美「ゾンビになっても方向音痴なあずさお姉ちゃん……さすがですな〜」



P「2人とも、行くぞー!」



亜美・真美「待ってよ兄ちゃ〜ん!」



トロア(この方達は3人のはずだが、まるで4人目がここにいる様な会話をされている気がする……)

トロア(……気のせいか?)




522: 名無しさん 2014/11/16(日) 20:54:49.90 ID:QwbzxRrkO
トロイア城 庭園

ダダダダ…

亜美・真美「ゆきぴょ〜ん!!」



雪歩「あっ…………!」

雪歩「…………亜美ちゃん!真美ちゃん!」

雪歩「ど、どうしてここに……?」



あずさ「……雪歩ちゃん、ひとりでさみしいだろうな〜って思ってね?」



雪歩「あ、あずささんっ……!」



P「雪歩、久しぶりだな!」



雪歩「プロデューサー……!」



雪歩「み、みんな……っ!」ウルッ

雪歩「うぅっ……グスッ……!」

雪歩「あ、会いたかったですぅ……!」ポロポロ

亜美「ああ〜、泣いちゃダメだよゆきぴょ〜ん!」

真美「ま、真美達まで……泣きたくなっちゃうじゃんかぁ……!」ポロ

雪歩「うぇっ……ヒック…ご、ごめんね……っ?」ポロポロ


あずさ「……うふふ、良かったですねぇ」

P「……はい。とりあえず無事みたいなので、安心しました」



アン「感動の再会ねぇ……」

トロア「はいっ………!」ウルッ

アン「……あら?トロア、あなた泣いてるの?」

トロア「け、決してその様な事はっ……!」ゴシゴシ

アン「うふふ……」



トロア(ユキホ王女……本当に、良かったですね……!)




530: 名無しさん 2014/11/18(火) 23:48:24.39 ID:/ro0SyuNO
ドワーフ城 謁見の間

ジオット「なんという事だ……!」

春香「あ、あの……すみませんでした!」

ジオット「いや、そなた達を責めている訳ではないのだ……」

ジオット「クリスタルの事は……相手が悪かった、という事だろう」

ジオット「しかし……」チラ



ルカ「うぅっ……グスッ……!」ポロポロ

春香「あの、ルカさん。どうしたんですか?」

ジオット「首飾りが、奪われてしまったのだ……あの『リツコ』という者に……」

千早「!」

千早(確かルカさん、母の形見だと言っていたわよね……)

真「ひどい!なんでそんな事っ!」

美希「……さすがにこれは、許せないって思うな!」

春香「小鳥さん、なんでこんな事を……?」



ジオット「……確かに、あの首飾りは王妃の形見、という事もあるが……」

春香「……他にも、何か意味があるんですか?」

ジオット「…………うむ」

ジオット「我が城のクリスタルが奪われて、やつの手中には、すでに7つのクリスタルが集まった事になる」

春香「……はい」

真「なんとしても、最後のクリスタルは死守しないと!」

ジオット「……その、最後のクリスタルなのだが……」

ジオット「この城から南西にある『封印の洞窟』の最深部にある」

春香「封印の洞窟……ですか」

真「よし!すぐに向かおう!」

ジオット「……いや」

ジオット「そうもいかないのだ」

春香「どういう事ですか?」

ジオット「封印の洞窟は、入口が封印されているのだ」

千早「だったら、律子もその洞窟に入れないのでは?」

ジオット「うむ……そのはずだったのだが……」



ジオット「ルカの首飾りが………その封印を解く、カギなのだ」



春香「えっ……じゃあ……!」




531: 名無しさん 2014/11/20(木) 20:50:54.02 ID:RQ+xpo27O

ジオット「そう。やつは、最後のクリスタルに王手をかけている」



春香「……!」

春香「ま、まずい……よね?」

真「まずいんじゃないかな?」

千早「まずいと思うわ」

春香「どうしよう……」

美希「……難しく考える事ないの」

美希「春香の思うようにしたらいいって思うな」

春香「美希……」

千早「美希の言う通りね」

真「リーダー、どうする?」

春香「みんな……」

春香「……」

春香「わかった。じゃあ……」



春香「ルカさんの首飾りを、取り返しに行こう!」

ルカ「え……?」

春香「ルカさん、このままじゃ可哀想だもんね」

春香(ついでに、クリスタルも取り返せたらいいなー……なんて)

ルカ「ハルカさん……」

ジオット「……」



春香「みんな……それで、いいかな?」

真「確かに、ルカの首飾りは取り返してあげたいよね。ボクはそれでいいよ」

美希「ミキも、別にいいよー」

千早「私も、異論はないわ」

春香「ありがと、みんな」

春香「あとで、やよいと伊織にも確認しなきゃだね」

美希「……でも、どこに行けばいいの?」

春香「あ、そうだね。ゾットの塔はもう無いし……」

春香「律子さんのアジトって、他に知らない?千早ちゃん」

千早「ごめんなさい、わからないわ」

春香「そっか……」




532: 名無しさん 2014/11/20(木) 20:53:56.48 ID:RQ+xpo27O


ジオット「……やつらのアジトは、バブイルの塔だ」



春香「バブイルの塔……ですか」

千早(律子がゾットの塔で言っていたアレね)

ジオット「敵はそこにいるだろう」

真「でも、もう最後のクリスタルを取りに行ってるかもしれませんよ?」

ジオット「おそらくまだ、その心配はない」

ジオット「最後のクリスタルがある封印の洞窟は、マグマの海に囲まれている」

ジオット「いくら空飛ぶ船とはいえ、そう簡単に灼熱の海には近づけまい」

ジオット「やつが封印の洞窟に行くまで、まだ時間はあるはずだ」

真「なるほど……」

ジオット「バブイルの塔には何門もの砲台が設置されていて、少しばかり厄介だが……」

ジオット「砲台は我が国の戦車隊が引きつける。そのスキに、バブイルの塔へ潜入してくれ」

春香「……わかりました!やってみます!」



ジオット「……出発は明日にして、今日はもう休むといい」

ジオット「部屋はこちらで用意しよう」

春香「ありがとうございます!」






ジオット(あの娘、ハルカといったか……)

ジオット(本当に、若き日の王妃にそっくりだ……)

ジオット(ルカも、ハルカの様に成長してくれれば良いのだが……)




533: 名無しさん 2014/11/20(木) 20:57:18.17 ID:RQ+xpo27O
ドワーフ城 救護室

伊織「あら、あんた達……」

春香「伊織……!」

伊織「元気そうで何よりだわ」

伊織「これからこの伊織ちゃんも加わってあげるから、感謝しなさい……って」


春香「伊織ー!」ダッ

美希「デコちゃーんっ!」ダッ



伊織「むぎゅ!」



伊織「ちょ、ちょっと……!」ジタバタ

春香「よかったぁ!無事で、ホントによかったよぉ〜!」ギュッ

美希「デコちゃん、会いたかったのー!」ギュッ

伊織「わ、わかったから……苦しいってば……!」



真「ふふ、伊織、愛されてるなぁ」

千早「水瀬さんとこうして無事に合流できたのも、高槻さんのおかげね」

やよい「わたしが伊織ちゃんを助けることができたのは、たまたまですよ?」

真「……ボクは、なんとなく運命めいたものを感じるなぁ」

千早「私も……高槻さんが水瀬さんを助けたのは、必然だったと思うわ」

やよい「そうですかー……」

やよい「だったら……その運命に、かんしゃしなきゃですね!」



春香「伊織〜!」スリスリ

美希「……デコちゃん……」ムニャ

伊織「2人とも、私は怪我人なんだからねっ!」

伊織「っていうか美希、人の上で寝るなー!」



534: 名無しさん 2014/11/20(木) 21:00:21.19 ID:RQ+xpo27O


伊織「ふーん……そういう事だったのね」

伊織「律子の様子がおかしかった理由が、やっとわかったわ」

春香「え?伊織、律子さんと会ったの?」

伊織「ええ。ちょっとだけど、話もしたわよ?」

伊織「あんた達を見つけろって言われたから、こうして来てあげたのよ」

真「っていうか、伊織はどこから来たのさ?」

伊織「ええと……バブ……なんとかの塔を降りて行ったら、いつの間にか地底に来てたのよ」

千早「なるほど……」

千早「バブイルの塔は、地上と地底を繋ぐ程の高さを持っているのね」

やよい「地上と地底をつなぐなんて、すごいですねー!」

伊織「……それにしても、またあの塔に戻らなきゃいけないのね」

春香「伊織、行けそう?」

伊織「ふん。私を誰だと思ってるのよ」

伊織「一晩あれば、こんな怪我ぐらい……」

美希「大丈夫だよ?デコちゃんは、ミキの魔法で治してあげるの!」

春香「うん。みんなでフォローするよ!」

伊織「………ま、気持ちは有難く受け取っておくわ」

伊織「ふわぁ……」

美希「あはっ!大っきなアクビ!」

真「伊織は、早めに休んだ方がいいかもね」

千早「そうね。長旅の疲れもあるだろうし」

伊織「ん……悪いけど……そうさせてもらうわ」

やよい「……じゃあ、わたしは伊織ちゃんといっしょにここでねますね?」

美希「ミキも、もう眠いからここで寝るのー……」

春香「じゃあやよい、伊織と美希をお願いね?」

やよい「はい!まかせてくださいっ!」

春香「私達は、王様が用意してくれた部屋に行こうか」

千早「そうね」




535: 名無しさん 2014/11/20(木) 21:05:03.26 ID:RQ+xpo27O
ドワーフ城 客室

真「気がついたら、高校生チームと中学生チームに別れてたね」

春香「あ、そういえばそうだねぇ」

千早「……」

千早「あの3人、まだ中学生なのよね……」

千早「私達が、守ってあげないと」

真「……そうだね」

春香「……」

春香「……んー、そうかな?」

千早「えっ……?」

春香「あ、ごめんね?千早ちゃんの言った事を否定するわけじゃないんだけどさ」

春香「……私達は、みんなで助け合ってここまで来たよね?」

春香「美希にも、やよいにも……危ないところを助けてもらってる」

春香「私達はもう、それぞれが『ワン・フォー・オール』の精神を体現してるんじゃないかな?」

春香「……まあ、私達がしっかりしなきゃいけないっていうのは、あるのかもしれないけどね」

春香「でもね、半人前と思われる事を、あの子達は嫌がるんじゃないかなぁって……」

千早「……」

千早「ふふっ……」

真「あははっ!」

春香「ど、どうしたの、2人とも?」

春香「私、何か変な事言ったかなぁ?」

千早「ううん、そういうわけではないの」

真「ただ……ね?」チラ

千早「ええ」ニコッ

真「やっぱり、春香は春香だなぁって思ったんだ」

春香「えっ、どういう事?」

千早「そのままの意味よ」

千早「……リーダーは、あなたしかいないって事」

真「これからもよろしく頼むよ、リーダー?」

春香「うーん……なんだかよくわからないけど……」

春香「褒め言葉って思っておくね」

春香「……私、ちょっとトイレ行って来る」

スタスタ…



536: 名無しさん 2014/11/20(木) 21:08:16.47 ID:RQ+xpo27O
ドワーフ城 救護室

伊織「……やよい、もう寝たら?」

やよい「……伊織ちゃんが寝たら、寝るよ」

伊織「……私に構う事ないのよ?」

伊織「美希なんて、さっさと寝ちゃってるし……」チラ

美希「……zzz」

やよい「……」

やよい「なんかね……」

やよい「わたしが先に寝たら……伊織ちゃんが、どこかに行っちゃう気がして……」

伊織「…………バカねぇ」

伊織「そんな事、あるはずないじゃない」

伊織「私はずっと、やよいから離れないわ」ギュッ

やよい「えへへ……うれしいなー」ギュッ

美希「……ミキもー……」ギュッ

伊織「えっ?」ビクッ

美希「……ムニャ……」

伊織「びっくりした……起きてるのかと思ったわよ、もう」

やよい「美希さんをなかまはずれにしちゃ、ダメだよね……?」

伊織「仲間外れって言っても、美希自身が一匹狼みたいなところがあるのよねぇ……」

やよい「そんなこと、ないと思うよ?」

やよい「美希さん、みなさんのこと、とってもしんらいしてると思うよ?」

伊織「…………まあ、それは否定しないけど」

やよい「みんな……ずっといっしょだよ」

伊織「そうね……」

やよい「……」

やよい「伊織ちゃんにくっついたら……なんだかねむくなってきたかもー……」ウトウト

伊織「もう、寝なさい」ナデナデ

やよい「うん……おやすみ、伊織ちゃん……」

伊織「おやすみ、やよい……」



伊織(…………私も、助けられてばかりじゃ、いられないわ……)




537: 名無しさん 2014/11/20(木) 21:13:10.22 ID:RQ+xpo27O
ドワーフ城 通路

春香「ふぅ、すっきりした……」

春香「……」

春香「さすがにもう、お城の人も寝たのかな?とっても静か……」

春香「夜のお城って、ちょっと不気味だなぁ……」

春香(お化けとか……出ないよね?なんか、恐くなってきちゃった……)

春香(あーもう!私、何考えてるんだろう……?)

春香(余計な事考えなければ、恐い思いしないですんだのに……)

春香(どうか何も起きませんように……)




「…………………あの」



春香「うひゃああっ!」ビクッ


「ひゃあっ!」ビクッ


春香「だ、だ、誰……ですか……?」ドキドキ

「あ、あ、あの……わ、私です……ルカです」ドキドキ

春香「えっ?ルカさん……?」

ルカ「驚かせてしまって、ごめんね?」

春香「あ、いえ……私こそ、大きな声出しちゃったりして……」

春香「あの、どうかしたんですか?」

ルカ「……ハルカさんに、お礼が言いたくて」

春香「お礼?」

ルカ「さっき、言ってくれたでしょ?お父様に」

ルカ「私の首飾りを取り返したいって」

ルカ「……私、すごく嬉しかったんだぁ!」

春香「そんな、お礼を言われる程の事じゃないですよ……」

春香「……私が、そうしたいだけですから」

ルカ「……」

ルカ「……ねえ、ハルカさん。敬語はやめよう?」

春香「ルカさん……?」

ルカ「私達、双子みたいにそっくりじゃない?」

ルカ「双子の片割れに敬語を使われるのは……ちょっと、さみしいかなって」

春香「……」

春香「……そうですね」

春香「あ、じゃなかった……そうだね」

ルカ「ふふっ!」

春香「えへへ……」



538: 名無しさん 2014/11/20(木) 21:16:23.49 ID:RQ+xpo27O
ルカ「私、ハルカさんと、ちょっとお話したかったんだ」

春香「私と……?」

ルカ「うん。同じ年代の女の子と話す機会なんて、あんまりないからね」

ルカ「私、友達なんかいなくて、ずっとひとりぼっちだった……」

ルカ「だから、あなた達が羨ましい……」

春香「ルカさん……」

春香(王女様って、女の子の憧れだと思ってたけど……)

春香(……将来、国のトップに立つ人だもんね)

春香(大変だよね……)

ルカ「ねえ、ハルカさんは……好きな人とか……いるの?」

春香「えっ!?な、何をいきなり……」

春香「うぅ………///」モジモジ

ルカ「あはは、わかりやすいね」

ルカ「……どんな人?」

春香「……」

春香「……えっとね」

春香「優しくって、頼りになるけど……ちょっぴりツメが甘くって……」

春香「……とっても、鈍感な人」

ルカ「……」

ルカ「……気づいてもらえてないの?」

春香「……」

春香「まぁ、競争率も高いし、今はそんな場合じゃないっていうのもあるけどね?」

春香「あはは……」

ルカ「そっか……」

ルカ「もしかして、ハルカさんの想い人って……」

ルカ「…………マコトさん?」

春香「……」

春香「あー……えーと……」



539: 名無しさん 2014/11/20(木) 21:22:43.34 ID:RQ+xpo27O


春香「真はね、女の子なんだよ」

ルカ「…………ウソ!?」

春香「ホントだよ」

春香「あのねルカさん。真の前では言わないであげてね?」

春香「男の子と間違われるの、すごく気にするから」

ルカ「そう、なんだ………うん、わかったよ」

ルカ(何か…………色んな意味でショック)

ルカ(初めて、いいなって思った人なのに、同性だったなんて……)

ルカ「はぁーあ……」

春香「………ふふっ」

ルカ「どうしたの?急に笑ったりして……」

春香「ルカさんも、普通の女の子なんだなぁ……って思ってね」

ルカ「そう、かな……?」

春香「ルカさんはさっき、友達なんていないって言ってたけど………もう、そんな事ないよ?」

春香「……私やマコト、私達の仲間はみんな、ルカさんの友達だから」

ルカ「……!」

ルカ「ハルカさん……!」ウルッ

ルカ「…………嬉しい!」

春香「もう、ひとりぼっちなんて言っちゃダメだよ?」

ルカ「うんっ!……ありがとう、ハルカさん!」ニコッ



ルカ「ハルカさん達は、明日出発しちゃうんだよね?」

春香「うん……そうだね」

ルカ「じゃあ、私の大切な友達に、プレゼント!」スルッ

ルカ「………はい。私だと思って、大切にしてね?」スッ

春香「えっ?これ……」

春香「ふふ……ありがとう!」

春香「じゃあ、私からも……」スルッ

春香「……私の『分身』だよ」スッ

ルカ「うんっ……絶対、大切にする!」



ルカ「……春香さん。また、会いに来てくれる?」

春香「……」

春香「……うん」

春香「また、会えるよ……きっと」

ルカ「よかった!」


春香(………ごめんね、ルカさん)

春香(約束、守れるかどうかわからないよ……)



540: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:10:10.72 ID:RQ+xpo27O
トロイア城 庭園

亜美「モグモグ……」

亜美「ん〜!このお菓子、おいち〜ね!」

アン「うふふ、それは良かったわ」

真美「う〜ん、この紅茶も、不思議な味だよね?」

真美「なんとなく、のどにやさしい感じがするよ〜」

トロア「それはそうでしょう。茶葉はやまびこ草を使っておりますので……」

真美「やまびこ草……?あれって薬じゃなかったっけ?」

トロア「ある種の願掛けの様なものです」

アン「みなさんは、魔道士だとお聞きしましたので……」

P(『ちんもく』を治す、やまびこ草の茶葉で淹れた紅茶か……)

P(確かに、魔道士にとって『ちんもく』は致命傷だもんな……)

あずさ「うふふ、雪歩ちゃんが淹れてくれたお茶もおいしいわね〜」ズズッ

雪歩「えへへ……よかったですぅ」

P(……腹、減ったなぁ)

P(でも、俺が飲み食いしたら、不自然にお茶やら茶菓子やらがなくなる事になるからなぁ……)

P(……我慢するしかないか)

雪歩「……」

雪歩「あの……プロデューサー……」ヒソヒソ

P「雪歩……どうした?」

雪歩「これ、どうぞ」スッ

P「茶菓子か……」

P「ありがたいけど、ここで食べるわけには……」

雪歩「テーブルの下で食べれば、平気かもですよ?」ヒソヒソ

P「あっ、そうか……!」

P「雪歩、ありがとうな!」

雪歩「いえ……お役に立てて、良かったですぅ」ニコッ

トロア「……ユキホ王女?どうかしましたか?」

雪歩「な、なんでもないんですよ?」

アン「……」

アン(気のせい、かしら……?)



541: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:15:42.34 ID:RQ+xpo27O

P「モグモグ……」

P「……ん、うまいな、このクッキー」

P(……春香が作ってくれたクッキーを思い出すな)



アン「……ところで、みなさんはユキホさんとどの様な関係なんですか?」

亜美「ゆきぴょんはね〜、亜美達の大切な仲間なんだよ!」

アン「仲間……ですか」

真美「世界を救うタメに、真美達と一緒に戦う勇者なんだよ!」

アン「まあ!世界を……?」

アン「それはステキねぇ」ニコッ

雪歩「せ、世界を救うだなんて、そんな……」

亜美「ゆきぴょんの力無くして、世界は救えないのだ〜!」

真美「いよっ!救世主!」

雪歩「ふ、2人とも、やめてよぉ……///」

あずさ「あらあら、うふふ」

トロア「ふふふ、ユキホ王女の優しさなら、不可能ではないと思いますよ?」

雪歩「と、トロアさんまで……」

亜美「うんうん、とろ姉ちゃんはわかってるねぇ」

トロア「と、とろ姉ちゃん……?」

雪歩「うぅ……そ、そんな事……」

亜美「………お?」

雪歩「わ、私なんて……!」

真美「来るか……?」

雪歩「こんなダメダメで……」

あずさ「ゆ、雪歩ちゃん……?」

雪歩「あ、穴……」





雪歩「……………掘るのは、やめておきますぅ」



亜美・真美「ズコー!!」ズルッ

亜美「そ、そんな……!?」

真美「こらえた……だと!?」

雪歩「えへへ……私も、穴掘ってばかりじゃいられないかもって思って……」

あずさ「雪歩ちゃん……成長したわね〜」

アン「……」




542: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:26:28.07 ID:RQ+xpo27O

アン「じゃあみなさんは、ユキホさんを探しに、はるばる4人でいらっしゃったのね?」

亜美「うん、そ〜だよ!」

亜美「亜美と真美、あずさお姉ちゃん、兄ちゃんの4人で………って、あり?」

アン「……」

真美「あ、亜美……!」

雪歩(ま、まずいですぅ……)

あずさ「……」



P(亜美〜!余計な事は言ってくれるなよ〜!)



アン「……兄ちゃん、とは、どんな方なの?あなたのお兄さんかしら?」

亜美「え、え〜っと……」

アン「さっきから違和感を感じていたのだけれど……」

アン「やはり、ここには『もうひとり』いるのね?」

亜美「い、いや〜、そんな事は……」

あずさ「……」

あずさ「……あら〜、亜美ちゃんったら、故郷にいる『お兄ちゃん』が恋しくなっちゃったのね〜?」

亜美「え……?」

亜美「あ……!う、うん!」

亜美「えへっ!そういや兄ちゃんは、故郷にいるんだったっけ〜」テヘッ

真美(ナイス!あずさお姉ちゃん!)ウィンク

あずさ「うふふ」ウィンク

雪歩(ふぅ……危なかったぁ……)



P(ホッ………)



アン「……」

アン「……あなたの故郷とは、どこなの?」

亜美「えっ?」

トロア「あ、姉上?そこまで拘らなくても……」

真美(この姉ちゃん、食い下がるなぁ)

真美(……まさか、見えるのかなぁ?)

亜美「えっと……こ、故郷……?」



亜美「……………な、765プロ……かな?」



…ガンッ!





543: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:33:18.40 ID:RQ+xpo27O

トロア「な、なんだ、今の音は!?」スッ

真美(兄ちゃん、テーブルの下で暴れちゃダメだよ〜!)ガシッ



P(痛てて……思わずテーブルに頭をぶつけてしまった)

P(亜美……言うに事欠いて、765プロって……)

P「……っていうか真美、苦しいんだけど……」ヒソヒソ

真美「兄ちゃんが暴れるのが悪いんだよっ!」ヒソヒソ



アン「……今の音は、4人目さんの仕業かしらね?」

亜美「う……」

雪歩「あ、あの〜……」

雪歩「す、すみません。私、テーブル蹴っちゃいましたぁ」

アン「ユキホさん……」



P(雪歩……すまん)



アン「では、なむこぷろ、とはどこにあるのかしら?」

亜美「そ、それは……」

あずさ「……」

あずさ「もう、隠す必要もないんじゃないかしら?」

真美「あ、あずさお姉ちゃん?」

あずさ「どうせ、プロデューサーさんを見る事はできないんでしょ?」ヒソヒソ

真美「まあ、そうだけどさ……」ヒソヒソ

あずさ「あの、アンさん?」

アン「はい?」

あずさ「確かに、この場に4人目はいます」

あずさ「でも、その方は……」



あずさ「恥ずかしがり屋の妖精さんなので、滅多に人前には出て来ないんですよ?」ニコッ



亜美「は、恥ずかしがり屋の……!」

真美「妖精……!」

亜美「あはははは!ウケる〜!」

真美「に、兄ちゃんが……よ、妖精……!」クスクス

雪歩「2人とも、笑ったら悪いよぉ……」オロオロ

P(……亜美と真美が笑ってるのが腑に落ちないが、結構妥当な説明じゃないか?)

P(……さすがあずささんだ)




544: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:37:31.76 ID:RQ+xpo27O


アン「妖精……ですか」

アン「すみません。我が国はつい先日、悪い妖精にクリスタルを奪われたばかりなのです」

あずさ「まあ、そうでしたか」

真美(ん……?また、まずい感じ?)

アン「疑うわけではありませんが、その妖精さんは、どんな方のですか?」

あずさ「……心配いりませんよ?」

あずさ「その妖精さんは、とっても優しくて、とっても頼りになる方ですから」

雪歩「アンさん、あずささんの言う通りなんです」

アン「……ユキホさんがそう言うなら、信用しますわ」

アン「うふふ……」

あずさ「うふふ……」



亜美(なんか、この2人の空気……)

真美(うん、一触告白って感じだねぇ……)



アン「ごめんなさい、楽しい空気が台無しになってしまったわね」

アン「さあみなさん、お茶のお代わりはいかがですか?」

アン「どこにいるかわかりませんが、妖精さんも遠慮せずにどうぞ?」

亜美「……だってさ、兄ちゃん?」

P「あ、ああ……」スッ

P「会話も通じないのに、なんか変な感じだな……」

真美「兄ちゃん、はい、あ〜ん……」スッ

P「い、いや、それはさすがに……」

真美「へ〜きだよ。あん姉ちゃんやとろ姉ちゃんには見えないんだから」

P「わ、わかったよ…………パクッ」

アン「まあ……!クッキーがなくなったわ!」

トロア「夢でも見ているようです……!」

雪歩「プロデューサー、コソコソする必要がなくなって、よかったですね?」

P「うん、そうだな」



タタタタ…


セット「お姉達!大変っ!」


アン「どうしたの?そんなに慌てて……」

セット「魔物が……!」

アン「え……!?」




545: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:41:07.86 ID:RQ+xpo27O
幻獣王の館 幻獣王の部屋

黒井(私は、何をしたかったのだろうか……)

黒井(奴は……高槻やよいは……)



黒井「………」

黒井「ゴクッ…ゴクッ………」

タンッ



黒井(…………まずい酒だ)

黒井「………」フラッ

黒井(それに、酔いも早い……)

黒井「ゴクッゴクッ……」

黒井「………」

黒井(……だが、好都合だ)

黒井「………」キュポッ

黒井「ゴクッゴクッ……」

黒井(こんな脆弱な感情など……)

黒井「………」ガタッ

黒井「………」フラフラ


ガシャーン!

ドサッ


黒井(この世界は、何だ……)



黒井(私は……何者なんだ……)



ガチャ…



冬馬「……なんかすごい音がしたけど、大丈夫か?」

冬馬「………って!?」

冬馬「お、おい、おっさん!しっかりしろ!」ユサユサ

翔太「黒ちゃん!?」

翔太「……北斗君!」

北斗「任せろ!」

北斗「……ケアルダ!」


シャララーン!キラキラ…


黒井「………」ムクッ



546: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:49:04.94 ID:RQ+xpo27O


冬馬「大丈夫か!おっさん!」

黒井「………騒ぐな」

黒井「ただのかすり傷だ」

スタスタ…

黒井「グビグビ……」

翔太「黒ちゃん……ちょっと飲み過ぎじゃない?」

冬馬「そうだぞ!少しは身体を休めないと……」

北斗「……」

黒井「ふん……」

黒井「私に指図するのか?」





黒井「…………駒の分際で」





冬馬「!」

北斗「……」

冬馬「また………駒扱いかよっ……!」

黒井「駒は駒らしくしてればいい」

冬馬「ぐっ……!」

翔太「冬馬君、落ち着いて……!」

冬馬「……」

冬馬「……心配すんな、翔太」

冬馬「俺は………いや」

冬馬「俺達はもう、あの時とは違う!」

冬馬「もう、ケツの青いガキじゃねえぞ!」

北斗「冬馬……」

黒井「だったら何だと言うのだ?」

黒井「お前達は一度、私の元を離れた身」

黒井「今さらいなくなろうと……」



547: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:53:35.33 ID:RQ+xpo27O

冬馬「……出て行くわけねえだろ!?」

黒井「……?」

冬馬「俺達は、出直してみてわかったんだ」

冬馬「その………仲間……ってやつの、大切さをよ」

冬馬「……そりゃ、一度はあんたから離反した身だ。今さらどのツラ下げてって話だけどよ」

冬馬「……俺達は……おっさん、あんたの事が心配なんだよ!」

冬馬「だから……あんまり無茶、するなよな……?」

翔太「冬馬君……」

北斗「……」



黒井「………くだらん」

黒井「部屋から出て行け。私はひとりで飲みたいのだ」

冬馬「おっさん……」

北斗(冬馬はよくやったよ……)

北斗「社長」

北斗「……冬馬の気持ちも、いつかは、汲んであげてください」ペコリ

黒井「ゴクッゴクッ………」



黒井(いつか…………か)



黒井(………余計なお世話だ)




548: 名無しさん 2014/11/20(木) 23:58:12.61 ID:RQ+xpo27O
幻獣王の館 リビング

冬馬「……」

北斗「……冬馬、元気だせよ」

冬馬「……」

北斗「さっきのお前を、やよいちゃんに見せたかったな」

翔太「そうだよ〜!さっきの冬馬君なら、ひょっとしたらやよいちゃん、ホレちゃってたかもよ〜?」

冬馬「……」

翔太「……あ、あれ?反応なし?」

北斗(よほどショックだったのか?)



冬馬「……友情…を……いや、違う……」ボソボソ



北斗「……ん?」

翔太「冬馬君?……何をボソボソと……」

冬馬「父親のように慕って……いや、なんかしっくりこねー……」

北斗「冬馬……おい、冬馬!」

冬馬「…………あん?呼んだか?」

北斗「呼んだか?じゃないだろ。さっきから、何を言ってるんだ?」

翔太「落ち込んでたんじゃないの?」

冬馬「……」

冬馬「おっさんの性格は、嫌という程知りつくしてるんだ」

冬馬「あのくらいで凹んだりしねーよ」

冬馬「……どう言えばおっさんの心を動かせるかなーって考えてたんだ」

冬馬「やっぱ、ありきたりの言葉じゃダメなんだろうなー……」

北斗「冬馬……お前……」

冬馬「俺は、諦めないからな?」

冬馬「こんな変な世界から、絶対におっさんを連れて帰ってやるぜ!」

翔太「……冬馬君、ひとりで突っ走るのは悪いクセだよ?」

北斗「そうだぜ冬馬。俺達は、今や文字通り一心同体なんだから」



549: 名無しさん 2014/11/21(金) 00:03:47.82 ID:LV+GpEiDO

冬馬「わりー……そうだよな」

冬馬「俺達はいつだって、3人でやって来たんだもんな!」

冬馬「3人寄れば………」

冬馬「……」

冬馬「……すげーぞ、って事だ!」

北斗(知らないんだな)



北斗「冬馬……レディの前でもそういうセリフが言えれば、もっとモテるかもしれないぜ?」

冬馬「う、うるせー!今は高槻の事は関係ねーだろっ!」

北斗「……ん?レディにモテるかもって言っただけなんだが……」

北斗「どうしてやよいちゃんの事が出てくるんだ?」

冬馬「う……!」カァーッ

翔太「冬馬君の頭の中は、やよいちゃんでいっぱいなんだね〜?」

冬馬「ば、バカっ!余計な事言ってねーで、お前らも考えやがれー!」

翔太「あははは!」

北斗「ふふ……」



……ピンポーン



冬馬「……お?誰か来たのか?」

翔太「ひょっとして、やよいちゃんだったりしてね〜?」

冬馬「あのなぁ、あいつは仲間のとこに行ったんだ。戻って来るわけねえだろ?」

冬馬(……ま、戻って来たいっていうんなら、か、歓迎してやらん事もないけどな……?」

翔太「冬馬君冬馬君、心の声が漏れてるよ!」

冬馬「……はっ!」

北斗「冬馬は面白いなぁ」



ピンポーン


冬馬「はいはい、今出てやるよ……」


スタスタ…

…ガチャ



「……………やあ」



冬馬「あ、あんたは……!」




555: 名無しさん 2014/11/24(月) 00:29:48.05 ID:v2njYsXfO


冬馬「あんたは確か、765プロの……」

翔太「……やよいちゃんじゃなかったみたいだね」

北斗「……」ペコリ




高木「ふむ……黒井もこっちへ来てるのだから、君たちがいてもおかしくないのか……」

高木「元気そうだねぇ。新しい事務所はどうだい?」

冬馬「ん、まあ……そこそこだな」

冬馬「今はまだ、足元を固めてる段階だけどよ」

冬馬「いずれ、765プロなんて追い抜いてやるぜ!」

冬馬「……覚悟しとけよな!」

高木「うむ!ウチのアイドル達の良きライバルとなってくれる事を、切に願うよ」

翔太「……そういえば、社長さんひとりなの?」

高木「ああ。彼女達は、別行動なんだよ」

北斗(別行動……)

北斗(自分のアイドル達を信頼しているのか……?)

北斗(ふ……黒井社長とはえらい違いだな)

北斗(……まあ、俺達はもう黒井社長とはなんの繋がりもないわけだが)




高木「ところで……」

北斗「……」

北斗「黒井社長……ですか?」

冬馬「……ああ、確かあんたらは、昔からの知り合いだったんだよな」

高木「話が早くて助かる」

北斗「何の用かはわかりませんが、今はやめておいた方がいいかと……」

翔太「そうだね。黒ちゃん、今はベロンベロンに酔っ払ってるから」

冬馬「話なんかできる状態じゃねーな」

高木「そうか……」




556: 名無しさん 2014/11/24(月) 00:33:15.74 ID:v2njYsXfO


高木「……むしろ、好都合だ」

冬馬「え……?」

高木「情けない話だが……」

高木「……この歳になると、酒に頼らないと本音で話す事もできなくなってくるんだ」

高木「君たちも、大人になればわかるよ」

高木(……まあ、黒井の場合は酒が入ってもなかなか本音を見せてくれないんだがね)

冬馬「ふーん……大人って、めんどくせーんだな」

翔太「冬馬君は、今でも充分めんどくさいけどね……」ボソッ

冬馬「……あん?何か言ったか?」

翔太「ううん、こっちの話」

北斗「社長と何を話すつもりですか?」

高木「……」

北斗「この世界の事……ですか?」

高木「君たちにも、知る権利はある」

高木「聞きたいなら、同席してくれても構わないよ」

北斗「……どうする?冬馬」

冬馬「別にいいんじゃねえか?」




北斗「……じゃあ、案内します」

高木「ああ、頼むよ」

北斗「こっちです」

スタスタ…




557: 名無しさん 2014/11/24(月) 00:37:30.87 ID:v2njYsXfO
幻獣王の部屋

黒井「…………お前が来るのはわかっていた」

高木「……そうか」

高木「不思議なのだが……私も、なぜだかここまで迷わず来れたよ」

黒井「ふん……まさか、お前の方からやって来るとはな」

黒井「どういう風の吹き回しだ?」

高木「状況が変わった、という事だ」

高木「黒井、私の話を聞いてもらえないか?」

黒井「……」

黒井「なぜ私が、お前の話を聞かねばならんのだ?」

高木「……素直に聞くつもりはない、か」



高木「元の世界へ帰る方法を、私が知っているとしてもか?」



黒井「……!」

冬馬「ほ、ホントかよ……!?」

翔太「じゃあ、これで帰れるんだね?」

北斗(いや……簡単に帰れるとは思えない)

北斗(何か、条件があるんじゃないのか?)



黒井「………断る」



高木「……」

冬馬「な、なんでだよおっさん!元の世界へ帰るチャンスだぞ!?」

黒井「………気に食わんのだ」

黒井「……私を見下す、お前のその態度がな!」

翔太「黒ちゃん……」

北斗(この人でも、無理なのか……?)

北斗(社長の氷のような心を溶かすのは……)

高木「……すまない。そういうつもりではないのだ」

黒井「……いい機会だ」

黒井「あの時の決着を付けようではないか!」ゴゴゴゴ…

高木「黒井……」




558: 名無しさん 2014/11/24(月) 00:41:00.07 ID:v2njYsXfO

高木「私は、お前と争うつもりはないんだ」

黒井「あの時も言っただろう?」

黒井「私達は、戦う運命にあると」ニヤリ

冬馬「おっさん……本気かよ!?」

高木「………やれやれ」

高木「お前は頑固だからなぁ……」

翔太「そ、そんな悠長な事言ってる場合じゃないでしょ!」

高木「………」



高木「いいだろう……」

高木「……今度は、お前の気が済むまでやろうじゃないか!」ゴゴゴゴ…

黒井「ククク……!高木、容赦はせんぞ……!」バッ

黒井「はあぁぁぁぁぁ!」ゴォォ



高木「……君たちは、下がっているんだ」チャキッ

冬馬「で、でもよ……!」

翔太「そうだよ!こんなのおかしいって、絶対!」

北斗「冬馬、翔太……あの人の言う通りにした方が良さそうだ」

冬馬「………ちっ!」

翔太「わ、わかったよ……」





黒井「……高木、お前を倒すこの瞬間のタメに、私は生きているのだ!」

高木「黒井、お前にはそんなくだらない事ではなく、もっと光を見つめてもらいたいのだが……」

高木「……いや、これ以上は……拳で語るとするか!」

黒井「………行くぞ!」

高木「………ああ!」





黒井「……大海衝!」ザァァ…


高木「……斬鉄剣!」シャキーン



ゴォォォォォォォ…



ドゴォォォォォォォォン…







559: 名無しさん 2014/11/24(月) 00:51:54.67 ID:v2njYsXfO
トロイア城 謁見の間

白龍「……なんと悲しき事でしょうか……」クネクネ



キャトル「うぅ……」

サンク「つ、強い……」

ドゥ「ぐ……!」

ユイット「お、お姉ちゃん……!」

シス「ユイット……あなただけは、絶対守るから……」ギュッ



白龍「いいえ。あなた方は、己の大切な者すら守れない……」

白龍「力無き事は、それだけで罪なのです」

白龍「……さあ、そろそろお別れです」

白龍「せめて、さみしくないように、まとめて葬って差し上げましょう!」




…バタンッ




亜美「ひと〜つ、人の世生き血をすすり……」スタスタ…

真美「ふた〜つ、ふしだらな悪行三昧!」スタスタ…

P(『ふしだらな』じゃなくて、『不埒な』だぞ……真美)



白龍「うん……?」チラ




雪歩「うぅ……」モジモジ

亜美「………ホラ、次ゆきぴょんの番だよ!」ヒソヒソ

雪歩「え、えっと……」

雪歩「み、みぃーっつ、醜い浮世の鬼を……」



あずさ「うふふ………退治てくれよう、765アイドル!」

あずさ「……」

あずさ「う〜ん……」

あずさ「『退治てくれよう』って、なんか変よねぇ?」

P「『退治してくれよう』だと、語呂が悪いからじゃないですかね?」

あずさ「なるほど、そういう事だったんですね〜」


亜美「……なんか、しまらないね」

真美「せっかく考えたのにね」

P(なんで桃太郎侍なのかは…………突っ込まないでおくか)


白龍「……」



560: 名無しさん 2014/11/24(月) 00:54:52.53 ID:v2njYsXfO

白龍「あなた達は、いったい何者ですか?」


亜美「だから言ったじゃんか〜。765プロのアイドルだよっ!」


白龍「あいどる……?」

白龍「もしや、コトリ様が言っていた……?」


真美「ピヨちゃんの思い通りには、させないかんねっ!」


白龍「邪魔をするつもりですか……」


雪歩「アンさん、トロアさん!みなさんをお願いしますぅ!」

アン「ええ!」

トロア「わかりました!」

タタタタ…



白龍「愚かな……。神の使いである私に楯突くとは……」


あずさ「神の使い……ですか?」


白龍「コトリ様は、いずれ神になられるお方。コトリ様に仕える私は、神の使いというわけです」


あずさ「あ、あらあら、小鳥さんったら……」

亜美「ピヨちゃん……冗談キツいっしょ……」

P(音無さん、神になるつもりなのか……?)

P(……ジョークだと思いたいが)


白龍「まずはあなた達から、排除せねばならない様ですね……」

白龍「コトリ様の四天王のひとり……」

白龍「この、『傲慢』の白龍が、あなた達を葬って差し上げましょう!」


P(白龍って、確か……)

P(ラストダンジョンに出てくる敵じゃないか……?)

P(ちょっと厄介だぞ……)



561: 名無しさん 2014/11/24(月) 01:00:32.14 ID:v2njYsXfO

白龍「まずは……」チラ

亜美「お……?」

白龍「あなたにしましょうか!」スーッ

亜美「くらえー!ファイラ!」ボオォ


シュウゥゥゥ……


亜美「あ、あり?効かない……?」


白龍「……覚悟!」ブンッ


真美「プロテス!」

パキーン!


ドゴォ!


亜美「うぁっ……!」

ドサッ


真美「あ、亜美っ!」タタタタ…

P(火属性を吸収するのか……?)


あずさ「……サンダガ!」

バリバリッ…ピシャァーン!


シュウゥゥゥ…


白龍「……何かしましたか?」


あずさ「あら……雷も効かないのね〜」

あずさ「困ったわ〜」

P(火も、雷も吸収された……。まさか……?)


白龍「さて、次は……」チラ

白龍「ん?3人しかいない……?」


ザバァッ!


雪歩「えいっ!」ブンッ


バキッ!


白龍「ぐ……!」ヨロッ

雪歩「……て、撤退ですぅ!」ササッ


真美「ゆきぴょん、ナイス!」


白龍(穴を掘って背後に回ったのですか。くだらない事を……)



562: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:15:47.16 ID:v2njYsXfO

P「……そうだ、思い出した!白龍……奴は、全属性を吸収するんだ!」

P「ダメージを与えるには、無属性魔法しかない!」

P「亜美、あずささん、攻撃魔法はバイオかフレア以外は使っちゃダメだ!」

亜美「……わ、わかったよ〜」

あずさ「……なんだか手強いみたいですね〜」


白龍「ならば、これはどうですか?」

白龍「……ミールストーム!」


ゴォォ…


ビューーー!


ドサドサッ


亜美「う……!」

真美「痛ったぁ……!」

シャララーン!キラキラ…

P「2人とも、平気か?」

亜美「あ、ありがと、兄ちゃん」

真美「あずさお姉ちゃんは、平気なの?」

あずさ「ええ……なぜか、痛みがないのよね〜」

亜美・真美・P(そっか、ゾンビなんだった……)


白龍(あの青い髪の女には、効いていないのでしょうか?)

白龍(それに、また吟遊詩人がいない……)

白龍「今のうちに、あの少女にトドメを……」


あずさ「……バイオ!」

ブニューン!

白龍「ちっ……無属性魔法を……!」

あずさ「プロデューサーさんの言った通りですね〜」

あずさ「ちょっとは効いたみたいです」

白龍「小賢しい!」ブンッ

あずさ「あらあら」ヒョイッ

あずさ「うふふ、同じ攻撃を二度もくらいませんよ〜」


亜美「あずさお姉ちゃん、さすがだね!」

真美「亜美、今のうちに……」スッ

亜美「うん、そうだね……」ギュッ

亜美・真美「……!」ゴゴゴゴ…



563: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:22:12.04 ID:v2njYsXfO

白龍「……そうは行きませんよ!」

白龍「大地よ……暴れなさい!」


ゴゴゴゴ…グラグラ…


亜美「うわわっ……!」ヨロッ

真美「じ、地震……!?」フラフラ

あずさ「こ、これは……立っていられないわね……!」ヨロッ

真美「こ、これじゃ、魔法に集中できないよ〜!」

真美「……っていうかゆきぴょん、地中にいるんだよね?ヤバくない?」



白龍「くらいなさい!」ブンッ


ドゴォ!バキッ!


ドサドサッ


亜美「うぁ……!」

真美「うぅ……!」

あずさ「ふ、2人とも、大丈夫?」

あずさ「今、回復魔法を……」


白龍「トドメですよ!」ブンッ


P「ま、まずい!」



ヒューーー…



雪歩「……脳天直撃アタックですぅ!」


ガコンッ!



564: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:31:17.40 ID:v2njYsXfO

白龍「ぐ……!」ヨロッ


雪歩「あ、す、すみません、モロに入っちゃいましたぁ……」オロオロ


P「雪歩……謝る事ないんだぞ!」

あずさ「雪歩ちゃん、なぜ天井から降って来たの?」

雪歩「えっと……地面から壁を伝って、天井まで掘っちゃいました……」

あずさ「まあ……!雪歩ちゃん、強くなったわね〜」

亜美「うんうん!物理的におかしいっしょ?ってのは置いといて……」

真美「ゆきぴょんのちょ〜じょ〜的な力のおかげで、助かったよ〜」

雪歩「は、はぅ……そんな事、ないですぅ……///」



白龍「……今のは、痛かったぞ……娘!」ブンッ


P「ゆ、雪歩!危ないっ!」


雪歩「あ……」




ガキィン!


雪歩「え……?」


トロア「……ユキホ王女には、手出しさせんっ!」

トロア「我が半身たる、この戦斧に誓って!」ググッ

雪歩「と、トロアさんっ!」


白龍「ちっ……!」




565: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:35:17.57 ID:v2njYsXfO

トロア「……せいっ!」ブンッ


ズシャァッ!


白龍「ぐ……!このっ!」ブンッ


トロア「遅いっ!」ガキン

トロア「……やあっ!」ブンッ


ザシュッ!


白龍「うぐ……!」ヨロッ



亜美「……とろ姉ちゃん、強くない?」

真美「ホントだね……」



あずさ「トロアさん、よけてくださいね?」

あずさ「……ええと、白龍さん?」

あずさ「ちょっと、お仕置きしちゃいますからね?」


あずさ「……フレア!」


ブゥゥゥゥゥン…


ババババババババッ!


白龍「……っく!」



白龍「……なるほど」

白龍「さすがはコトリ様が敵と認めた者達……雑魚、というわけではない様ですね」


亜美「うわぁ……あいつ、まだ余裕っぽいよ〜」

P「さすがに強いな……」




566: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:39:55.86 ID:v2njYsXfO

白龍「……この勝負は、ひとまず預けるとしましょうか」


トロア「逃がすかっ!」チャキッ

雪歩「と、トロアさん、待ってください!」ガシッ


白龍「……勘違いしないでください」

白龍「その気になれば、あなた達を葬る事など造作もない」

白龍「時間を差し上げる、と言っているのです」

白龍「……決着の時まで、せいぜい足掻くといいでしょう」

白龍「では、またお会いしましょう……」


スゥゥゥ…





真美「……」

真美「……兄ちゃん、行かせて良かったのかな?」

P「……奴の言う通りだと思う」

P「このままじゃ、小鳥さんどころか、四天王にさえ太刀打ちできない……」

真美「……そっか」

真美「もっと、強くならなきゃ……だね」

亜美「…………そうだね」

雪歩「……」

あずさ「……」




567: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:43:09.62 ID:v2njYsXfO
トロイア城 謁見の間

アン「……もう、行かれるのですね?」

あずさ「……はい。どうやら、のんびりしているわけにもいかない様ですので……」

アン「あなた方がいなかったら、この国は滅ぼされていたでしょう」

アン「本当に、ありがとうございました」ペコリ

亜美「いや〜、そんな事ないよ〜」

真美「亜美……今回真美達、全然活躍してないじゃん……」

亜美「ま、まあ、そうだけどさ……」



雪歩「あ、あのっ!」

雪歩「お、お世話になりましたっ!」ペコリ

雪歩「私……皆さんの事……絶対に……!」

トロア「ユキホ王女……!」ポロッ

亜美「とろ姉ちゃんって、けっこ〜泣き虫なんだねぇ」

P「情に脆いんだな、きっと」

アン「……」

トロア「ユキホ王女……私は、あなたに会えて、本当に良かった!」

トロア「優しさ、というものを、あなたから教わりました」

トロア「どうか、お元気で……!」ペコリ

雪歩「うぅ……トロアさんっ……!」ポロッ


アン「………ああ、言い忘れていたわ」




アン「トロア………あなた、この方達に、着いて行きなさい」



トロア「…………は?」


亜美・真美・雪歩・あずさ「えっ?」

P(なんだって?)


アン「いろいろ考えたのよ」

アン「……あなた、ユキホ王女と離れたくないんでしょう?」

トロア「あ、姉上、何を……!」



568: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:46:09.08 ID:v2njYsXfO

アン「あなた方も、トロアの実力はご覧になったでしょう?決して足手まといになる様な事は無いはずですわ!」

亜美「確かに、けっこ〜強かったよね……」

真美「そ〜だけど……」

アン「それに……」

アン「あなた方は、世界を救う旅をしているんでしょう?」

アン「この国から、世界を救う勇者が出たとなれば、私も鼻が高いですし……」

アン「このトロイアの国を、世界にアピールするチャンスにもなりますもの!」ニコッ

亜美「あ〜……そういうオモワクがあったんだね……」

あずさ「なんだか、妙な事になったわねぇ……」

真美「……兄ちゃん、ど〜する?」

P「うーん……」

P(正直、今のパーティは、雪歩以外はみんな魔道士だから、前衛が増えて困る事はない)

P(特に問題は無い気もするなぁ)

P(しかし、ゲームのキャラに頼ってもいいものか……)


トロア「……」じーっ

真美「……うわ、とろ姉ちゃん、めっちゃこっち見てるよぅ……」

P(……また四天王と戦う事になるはずだ)

P(戦力は、少しでも上げておきたいところだな……)



P「……よし、彼女も連れて行く事にしよう!」



真美「うん、わかった。兄ちゃんが決めた事なら、なんくるないよね?」

あずさ「うふふ、また賑やかになるわね〜」

亜美「とろ姉ちゃん、いじり甲斐がありそうだしね〜」

雪歩「トロアさん……良かったですぅ……!」


アン「……ええと、答えは出たのですか?」

亜美「うん!うちのボスのお墨付きが出たよ!」

トロア「!」




569: 名無しさん 2014/11/24(月) 08:48:31.01 ID:v2njYsXfO

アン「良かったわね、トロア」

トロア「は、はい……」

トロア「しかし、私がいなくなったら、この国は……」



ドゥ「ふふ……ちょっと腕が立つからって、自惚れ過ぎじゃないか?トロア」

キャトル「心配無用ですよ〜?」

サンク「……トロアお姉様がいない分、私達が頑張る……」

シス「トロアお姉様、どうか無事に帰って来てくださいね?」

セット「まあ、トロア姉なら余裕っしょ!?」

ユイット「トロアお姉ちゃん、がんばってね!」



アン「…………と、いう事よ」

トロア「みんな……!」

トロア「私は……っ!」ウルッ

アン「……また、元気な顔を見せてちょうだいね?」

トロア「………わかりました!必ず……!」ペコリ



アン「……そういうわけで、ウチの愚妹をよろしくお願いしますね?」

亜美「りょ〜かいだよん!」

真美「よろしくね、とろ姉ちゃん!」

あずさ「仲良くやっていきましょうね〜」

雪歩「トロアさん、また、よろしくお願いしますぅ」



トロア「はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」ペコリ



P(見たところ、あのトロアって子はあずささんと同い年くらいかな?)

P(まあ、ウチのアイドル達なら、うまくやれるだろうな)

P(さて、次に向かうべきは……)




574: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:03:51.47 ID:sWADI0jtO
飛空艇

ババババババ…


真美「…………えっ?」

真美「今から行くの……?」

雪歩「私は、賛成ですぅ」

あずさ「……私は、本当はちょっと気まずいんですけど……」

あずさ「プロデューサーさんのお考えなら、従いますわ〜」

P「すみません、あずささん」

P「……俺もいろいろ考えたんだ。とにかく、言った通りに舵を頼むよ、真美」

亜美「……ひょっとして兄ちゃん、イベントショートカットしようとしてる?」

P「ショートカットってほどじゃないが……」

P「音無さんが何を考えてるかわからない今は、少しでも時間短縮して、行動のムダを省くべきじゃないかと思うんだ」

あずさ「うふふ、そこまで考えているなんて、さすがプロデューサーさんですね〜?」

P(とにかく今重要なのは、あのアイテムを手に入れる事だ)




亜美「ねえねえ兄ちゃ〜ん」

P「どうした?」

亜美「時間短縮って言ってたけど、全く寄り道しないわけじゃないよね?」

P「……と、言うと?」

真美「真美達、考えたんだよ」

亜美「RPGのダイゴミと言えば?」

P「醍醐味……?」

真美「も〜、兄ちゃんはニブいな〜!」

真美「レアアイテム集めに決まってるっしょ〜!」

P「なるほど……確かに強い武器防具とかは、あって困る事は無いな」

亜美「レアアイテムに関しては、亜美達に任せてよ!」

P「わかった。だけど、それに没頭するわけにはいかないからな?」

亜美「わかってるって〜」



575: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:06:25.65 ID:sWADI0jtO

トロア「ユキホ王女、妖精殿はなんと?」

雪歩「私も、話の内容はよくわからなかったんですけど……」

雪歩「とりあえず、次の目的地は決まったみたいですね」

トロア「そうですか……」

トロア「では、私は少し修行をして参ります」ペコリ

あずさ「うふふ。トロアさんは、真ちゃんと気が合いそうね〜」

トロア「アズサ殿、マコト……という人物は、皆さんのお仲間ですか?」

あずさ「ええ。真ちゃんも、毎日トレーニングを欠かさないって言っていたわ」

トロア「なるほど……」

トロア「いずれ、お手合わせ願いたいですね」

雪歩「……」



雪歩「あの、トロアさん?」

雪歩「わ、私も……修行、お付き合いしてもいいですか?」

トロア「ユキホ王女……」

トロア「あなたにとっては少々キツいかもしれませんが、それでも宜しいですか?」

雪歩「は、はいっ!頑張りますっ!」

トロア「わかりました」

トロア「アズサ殿は、どうされますか?」

あずさ「せっかくのお誘いですけど……」

あずさ「私は、魔道士だから……やるなら、亜美ちゃんや真美ちゃんと一緒にやった方がいいかと思うので……」

トロア「……それもそうですね」

トロア「ではユキホ王女、参りましょうか」

雪歩「は、はいっ!」

スタスタ…



あずさ「……さて、私も魔法のレッスンをしようかしら?」

あずさ(でも、魔法のレッスンなんて、どうやればいいのかしらね〜?)

あずさ(プロデューサーさんに聞けば、いいレッスン方法があるかもしれないわね)

スタスタ…




576: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:11:41.40 ID:sWADI0jtO
ドワーフ城 謁見の間

ジオット「……ハルカよ。いつの間にか仲間が増えた様だな?」

春香「はい。昨日、合流したんです」

やよい「うっうー!わたしは、765プロの………じゃなかった」

やよい「しょーかんしの、高槻やよいですっ!」

やよい「王様、よろしくお願いしまーすっ!」ガルーン

ジオット「ふふ、元気だな」

伊織「あんたがここのトップね?」

伊織「私は、スーパー忍者アイドルの伊織ちゃんよ」

伊織「この私も戦ってあげるんだから、感謝しなさいっ」

春香「ちょ、ちょっと伊織……王様なんだから、もっと礼儀をわきまえないと……」

伊織「何よ、私だって王女なのよ?」

ジオット「ふむ……勝気な娘だ」

真「プッ……忍者アイドルってなんだよ」

伊織「うるさいわね、真!忍者も知らないの?」

伊織「あんたこそ、何よその格好!季節感のない子供みたいじゃない!」

真「ぼ、ボクだって好きでこんな格好してるわけじゃないよ!」

真「モンク僧っていう、立派な拳闘士なんだからね!」

真「忍者とか、映画の見過ぎなんじゃないのかっ!?」

伊織「なんですって!?」

真「なんだよ!?」

春香「ふ、2人とも……!」

やよい「け、ケンカはダメですよぅ……」

千早(この2人のケンカも、久々に見たわね……)

美希「……あふぅ」

ジオット「……ま、まあまあ、ケンカはやめるのだ、2人とも」



伊織・真「……王様は黙っててっ!!」



ジオット「えっ……」

ジオット(なぜか反論できん……不思議だ……)

春香「ちょ、ちょっと2人とも!」

春香「ホントに、ホントーにすみませんっ!」ペコリ

ルカ「ふふ、賑やかで羨ましいなぁ」

春香「え、えへへ…………はぁ」



577: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:16:33.39 ID:sWADI0jtO

ジオット「えー、まあ、そういうわけで……」チラ



伊織「ふんっ!」プイッ

真「ふんっ!」プイッ

ジオット(やりにくい……)



ジオット「そ、そなたらを、我が国自慢の戦車でバブイルの塔へ送って行こうと思うが……どうだ?」

春香「本当ですか?よろしくお願いします!」

美希「じゃあじゃあ、戦車で寝ててもいいって事?」

ジオット「え?あ、ああ……寝れればな」

ジオット(この娘、戦車がどれほどの騒音を出して走るのか、知らんのか……?)

美希「わぁい!王様、ちょっとだけ見直したの!」

ジオット「う、うむ……」

春香「みんな、自由過ぎるよぉ……」

千早「仕方ないわ、春香」

やよい「春香さん、がんばってください!」

ジオット「……昨日も言ったが、バブイルの塔には砲台が何門も待ち構えている」

ジオット「我が戦車隊が砲台を引きつけているうちに、なんとか潜入してくれ」

春香「頑張りますっ!」

やよい「せんにゅうって、なんかスパイみたいでカッコいいかもー!」

千早「ええ、本当ね」ニコッ



ルカ「みなさんのご無事をお祈りしています」

ルカ「どうかお気をつけて……」



春香(行ってきます、ルカさん!)




578: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:20:21.13 ID:sWADI0jtO
魔導船

ゴォォーー…


貴音「物の怪の気配が、次第に強くなってきています……」

貴音「悪の巣は、近いのでしょうか……?」



貴音「……ん?」

貴音「何やら前方に、巨大なびるが……」

貴音「……」

貴音「……なるほど」

貴音「あのびるから、とても邪悪なえねるぎぃが発せられている様ですね……」

貴音「……わたくしの目の黒い内は、悪さなど許しません!」



貴音「いざ行かん!悪の巣へ!」ビシッ



貴音「……」

貴音(…………ところで、この船はどうやって止まるのでしょうか?)

貴音(着陸の仕方は、教わっていませんでしたね……)

貴音(地球に着いた時も、不時着でしたし……)

貴音(…………)












貴音(念仏でも唱えた方が、良いのかもしれませんね……)




579: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:23:16.46 ID:sWADI0jtO
バブイルの塔 1F

貴音「……」

貴音「……」

貴音「…………んっ」ムクッ

貴音「……」キョロキョロ

貴音「ふむ……」ペタペタ




貴音(……死後の世界……という訳ではなさそうですね)

貴音(どうやらわたくしは、悪運が強いようです)

貴音(船は……)チラ

貴音(……辛うじて原形を留めています)

貴音(今回もまた、不時着となってしまいましたか……)




貴音「……」ピクッ

貴音(空気が、澱んでいる……)

貴音(早々に、化け物を見つけねば……)


スタスタ…




580: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:26:06.35 ID:sWADI0jtO
バブイルの塔 B3F

スタスタ…


貴音(この建物……)

貴音(外から見た限りでは……)

貴音(果てが見えない程の高さだったはずなのですが……)

貴音(何故か地下へ降りる階段しかない様です)

貴音(……これはどういう事でしょうか?)

貴音(地上部分には、一体なんの意味が……?)

貴音(それに……)

貴音(この建物からは、化け物の気配とは別に強烈な悪意を感じます)

貴音(………)

貴音(今のわたくしでは、考えても答えを得る事はできませんね……)

貴音(何か、情報が欲しいところです……)



魔物「ギャアー!」


貴音「!」

貴音「……ぶりざら」バッ


コォォォ…シャキーン!


魔物「」


貴音「……」

貴音(この者達も、思えば、哀れなものです……)

貴音(この様な化け物に生まれたばかりに、人から忌み嫌われ、それ故に人を憎む……)

貴音(なんと悲しき負の感情の連鎖でしょうか……)

貴音(………)

貴音(ふふ……)

貴音(げぇむの世界のきゃらに同情しても、詮無き事でしたね……)

貴音(わたくしは、わたくしとわたくしの仲間の邪魔をする者には、遠慮は致しません)





貴音(…………たとえ相手が……小鳥嬢であろうと)




581: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:29:06.20 ID:sWADI0jtO
バブイルの塔 B5F リツコの部屋

律子「小鳥さん!いい加減、私を使って悪さをするのはやめてください!」

小鳥(もう少し我慢してくださいよぉ)

小鳥(クリスタルを全て集めたら、解放しますから)

律子「全てって……もう8つの内7つもここにあるんですよ?」

律子「もういいじゃないですか……」

小鳥(ダメですよ?最後のクリスタルが、一番厄介なんですから)

小鳥(私は月から離れられないので、律子さんだけが頼りなんです!)

律子「……」

律子「この首飾り……」ジャラッ

律子「最後のクリスタルを手に入れるのに必要だって言ってましたけど……」

小鳥(そうです!それが無いと、クリスタルのある洞窟に入れないんですよ)

律子「ホント、こういう事『だけ』は周到なんですね?」

小鳥(そ、そんな事ないですからっ!仕事だって、ちゃんとやってますから!)

律子「……ま、いいですけど」

律子「ところで小鳥さん、クリスタルを集めて、何をするつもりなんですか?」

小鳥(うふふ……楽しい事、とだけ言っておきますね?)

律子「楽しい事……」

律子「今の小鳥さんの口からそんな事言われても、悪い予感しかしないんですけど……」

小鳥(律子さんは勘がいいですねー)

律子「…………はぁ」

律子「あまり春香達に無茶な事はしないでくださいよ?………って、言うだけ無駄ですよね?」

小鳥(はい!)

律子「……」

律子「解放されたら、覚えておいてくださいね……」ボソッ

小鳥(えっ?……何か、言いました?)

律子「なんでもないです!」

小鳥(………あ、そうそう)

律子「何か?」

小鳥(みんなに会う事があったら、伝えて欲しい事があるんです)

律子「何を伝えればいいんですか?」




小鳥(『本気で来ないと、死にますよ?』って)



律子「……!」




582: 名無しさん 2014/11/26(水) 21:32:01.53 ID:sWADI0jtO
バブイルの塔 B5F

スタスタ…


貴音「……ん?」ピタ

貴音「この扉の奥から、人の気配が……」

貴音「この様な化け物の巣窟に、何故、人が……?」

貴音「……」

貴音(もし、この奥にいる人物が話が通じる相手なら、協力を得られれば……)

貴音(そうでない場合は……)

貴音(………)



貴音(考えても、仕方がありません)

貴音(今は、少しでも情報が欲しいところです)

貴音(虎穴に入らずんば……とも言いますし)

貴音(……行きましょう)


ガチャ…



貴音「……たのもう!」




583: 名無しさん 2014/11/26(水) 23:39:12.29 ID:sWADI0jtO
バブイルの塔 B5F リツコの部屋

律子「え……?」


貴音「おや……?」

貴音「……律子嬢ではないですか!」


律子「た、貴音……!?」

律子「な、なんでこんなところにいるの……?」

貴音「それは、わたくしも問いたい質問ですが……」

貴音「まずはわたくしから答えましょう」

貴音「わたくしは……月より参りました」

貴音「邪悪な物の怪の気配を追っていたら、この巨大な建造物に辿り着きました」

律子「!」

律子「つ、月って、あの月……!?」

貴音「ええ。空に浮かぶ、あの月ですよ?」

律子「そう……」

律子「……」

貴音(少し、様子がおかしい……)

貴音(微弱ですが、律子嬢から発せられている邪悪なえねるぎぃも、気になりますね)

貴音(まさか…………)

貴音(…………)

貴音(………最悪の事態も考慮せねばならないのかもしれません)



貴音「それでは、今度はわたくしの問いに答えてください」

貴音「あなたは、ここで何をしているのですか?」

律子「……っ!」

律子「そ、それは……」

小鳥(…………うふふ)

小鳥(予定外のお客さんですけど、もてなしてあげましょう?律子さん!)

律子「や、やめてください!」

貴音「……?」




584: 名無しさん 2014/11/26(水) 23:45:52.49 ID:sWADI0jtO

律子「こんな事は、やめてください!小鳥さん!」



貴音「……!」


律子「貴音は、予定外なんでしょ!?だったら……!」

小鳥(うふふ……ダメですよ?この間は、貴音ちゃんと戦えなかったんですもの……!)



律子「あぅ……!」ビクンッ



貴音「律子嬢!」



律子「……貴音ちゃん、久しぶり!」


貴音「……」

貴音「……なるほど、そういう事でしたか」

貴音「……安心しました」

律子「ん?どういう事?」

貴音「律子嬢自身は悪に染まった訳ではない、という事がわかったからですよ?」

律子「……」

貴音「律子嬢の様子がおかしかったのは、あなたの仕業だったのですね、小鳥……」

律子「……」

律子「…………やっぱり、操るなら貴音ちゃんにしておけばよかったかなぁ……?」

貴音「そんな事はありませんよ?」



貴音「わたくしは絶対に、悪になど染まりませんから」ニコッ



律子「……ふふふ」

律子「言うわね……」ニコッ

律子「これを受けても、余裕でいられるかしら?」チャキッ

律子「……!」ゴゴゴゴ…



貴音「む……!」



585: 名無しさん 2014/11/26(水) 23:49:38.70 ID:sWADI0jtO

律子「宇宙に散らばる暗黒物質よ……」チャキッ

律子「……我が手に集え!」バッ

律子「……暗黒剣!」ブンッ


ズバババァーーン!


貴音「……ぷろてす!」バッ

パキーン!


ズ┣¨┣¨┣¨┣¨ド!


貴音「うっ……!」ヨロッ

貴音「凄まじい技……!」

貴音(ですが……)

貴音(小鳥の拘り……でしょうか?)

貴音(技を使用する時、必要以上に大げさな動きをしている気が……)




律子「反撃しないの?」

貴音「……」

律子「つまんないなぁ……」

貴音「小鳥。貴女は今、月にいるはず……」

貴音「一体どうやって、律子嬢を?」

律子「……話をして、時間を稼ぐつもりかしら?貴音ちゃんにしては、古典的な策ねぇ」

律子「時間が経ったって、何も変わらないと思うわよ?」

貴音「……」

律子「……ま、いいわ。教えてあげる」

律子「精神波を飛ばして、対象に憑依してるのよ」

貴音「精神波……?」

律子「ええ。この世界での私の特権ってところね」

貴音(理屈は良くわかりませんが……)

貴音(小鳥の精神波、とやらを妨害する事ができれば……)

貴音(律子嬢は小鳥の支配を逃れる事ができる……?)

貴音(小鳥と同じ『月の民』であるわたくしにも、精神波なるものが使えるのでは……?)

貴音(やってみる価値はあるはずです)




586: 名無しさん 2014/11/26(水) 23:57:34.29 ID:sWADI0jtO

貴音「……」スッ

律子「……ん?」

律子「へぇ、ようやくやる気になってくれたのね?」

律子「いいわ、かかってきなさいっ!」チャキッ



貴音「……」



律子「……」

律子「あれ?かかって来ないの?」

貴音「そちらから、どうぞ」

律子「……何を考えているかわからないけど、律子さんって、結構強いわよ?」

律子「……光の裏の、闇に住む者よ」スッ

律子「その雄叫びを……」バッ


貴音「……さんだぁ」バッ


ピリッ…パキーン!


律子「つっ……!」

律子「そんな弱い魔法、蚊ほども……」

律子「……」ガクンッ

律子「あ、あれ……?」

律子「か、身体が、動かな……!」フラッ



貴音「……」

貴音「よもや、成功するとは思いませんでした」

律子「な、何をしたの……?」



貴音「先ほどのわたくしの攻撃は、実は魔法ではないのです」



律子「!」

貴音「精神波……と、申しましたか……」

律子「そ、そん……!」

小鳥(あ……!ま、まずいわ……リンクが切れ……!)


…ドサッ


律子「……」




587: 名無しさん 2014/11/27(木) 06:51:46.36 ID:/Y1jX6hyO

律子「……」



貴音「……」



貴音「律子嬢……」ダキッ


スタスタ…


ドサッ…


貴音(べっどがあって助かりました)

貴音(このまま律子嬢を置いて行く訳にも参りませんね)

貴音(魔法で起こしましょうか……?)チラ


律子「……」スヤスヤ


貴音(………………いえ)

貴音(少し、休ませて差しあげた方が良いのかもしれません)

貴音(他人に身体を乗っ取られるとは、さぞ辛かった事でしょう)


律子「……ん」モゾッ


貴音(ふふふ……)

貴音(普段は凛々しい律子嬢も、寝顔は可愛いものですね……)ニコッ




貴音(……もう、貴方は自由ですよ)








591: 名無しさん 2014/11/30(日) 00:45:12.20 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔 B5F クリスタルルーム

魔物「ルビカンテ様ー!」

魔物「クリスタルルームの守護ぐらい自分がやるッス!どうか休んでくださいッス!」

ルビカンテ「……くだらん気を使うな。お前はさっさと自分の持ち場に戻るんだ」

魔物「で、でも、こういう雑用って普通、自分達みたいな下っ端がやる事じゃないッスか?」

ルビカンテ「ふん……お前ら雑兵に守りを任せて、万が一クリスタルを取られたとあっては、リツコ様に言い訳ができん」

ルビカンテ「オレは、自分自身しか信じないのだ」

魔物「そ、そうッスか……」

魔物「ずいぶんと唯我独尊なんスね……」

ルビカンテ「……」

ルビカンテ「……ところでお前、見慣れない魔物だな」

ルビカンテ「おい、名前と自分の持ち場を言ってみろ」

魔物「え、えっと……」

魔物「さ、さよならー!」

タタタタ…





魔物「ふぅ……」


…ボンッ


ルナザウルス「いやー、かなり頭の硬い人ッスねー」

ルナザウルス「これじゃクリスタルを横取りできないッス……」

小鳥(……ちょっとー、それじゃ困るのよー)

小鳥(律子さんとリンクが切れちゃった今、あなた達が頼りなんだからね?)

ルナザウルス「でもコトリ様……」

ルナザウルス「あの人、なかなか強そうだったッスよ?」

小鳥(何言ってるのよ!あなたの方が強いわ、絶対)




592: 名無しさん 2014/11/30(日) 00:47:05.32 ID:Y1v6RjHMO

ルナザウルス「でも自分、火属性は苦手なんスよねー」

ルナザウルス「あの人と戦わずして、クリスタルを奪う方法はないッスかね?」

小鳥(うーん……戦わないで、かぁ……)

小鳥(……あ、だったら)

小鳥(そのうちここに、春香ちゃん達が来るわ)

ルナザウルス「ハルカ……って確か、コトリ様がいつも言ってる人ッスか?」

小鳥(そうそう!)

小鳥(春香ちゃん達にルビカンテを倒してもらいましょ)

ルナザウルス「……で、後で横取りするッスか……なるほど、さすがコトリ様、悪知恵が働くッスねー」

小鳥(……まあ今は悪役だし、一応褒め言葉と思っておくわ)

ルナザウルス「んーと、じゃあ……」

ルナザウルス「その『ハルカ』って人達を、クリスタルルームに誘導しなきゃッスね!」

小鳥(どうするの?)

ルナザウルス「自分に任せてくださいッス!」

ルナザウルス「ごく自然な方法で、クリスタルルームにおびき寄せてみせるッス!」

小鳥(よろしくお願いね?)








593: 名無しさん 2014/11/30(日) 00:49:16.98 ID:Y1v6RjHMO
ドワーフ戦車 1号車

キュルキュルキュル…


伊織「……」

真「……」

千早「……」



伊織「……ちょっと真、もう少しそっち行ってくれない?狭いんだけど」

真「こっちだってギリギリなんだ。少しは我慢してよ」

千早(戦車って、ずいぶん不快な音がするのね……)

伊織「……」

伊織「……まったく、なんで真と一緒なのよ」ボソッ

真「……聞こえてるよ」

伊織「あら、ごめんなさい?つい本音が出ちゃったわ」

千早「……」

真「……あのさ、さっきの事なら、謝るよ」

真「最初に悪口言ったのは、ボクだからね」

伊織「……ふん、わかったのならまあ…………許してあげなくもないけど……」ボソボソ

真「え?何?」

伊織「なんでもないわよバカっ!」

真「ば、バカってなんだよ!謝ってるのにさ!」



千早「クスッ………仲がいいわね、2人とも」

伊織・真「……どこが!!」

伊織・真「あっ……」

千早「息もピッタリね」

伊織「……」

真「……」

真「……あのさ、伊織」

伊織「……何よ」

真「律子の様子、どうだった?」

伊織「どうって………そうね、何かを隠してるみたいな……」

伊織「……ううん、何かに怯えてるみたいだったわね」

真「……昨日話したけどさ、小鳥さんに怯えているんだと思うんだよね、きっと」

伊織「……ねえ、本当に小鳥は敵なの?」

千早「ええ。私達、宣戦布告もされたわ」

伊織「ふーん……」

伊織(ま、どうせ小鳥の事だから、今の状況を楽しんでいるんでしょうね)

伊織(小鳥になんか、絶対負けないわよっ!)



594: 名無しさん 2014/11/30(日) 00:50:42.13 ID:Y1v6RjHMO
ドワーフ戦車 2号車

キュルキュルキュル…


春香「すっごいうるさいね……」

やよい「はい。すっごいうるさいですね……」

美希「……zzz」

やよい「……美希さん、こんなにうるさいのに、よく寝れますよねー」

春香「まあ、美希だからねぇ……」



春香「……ところでさ」

春香「あの時船が沈んでから今まで、やよいはどうしてたの?」

やよい「えーっとぉ……」

やよい「黒井社長とじゅぴたーのみなさんといっしょにくらしてましたー!」

春香「ええっ!?く、黒井社長って、961プロの!?」

やよい「はいっ!」

春香「だ、大丈夫?何か変な事されなかった?」

やよい「だいじょーぶです!みなさん、やさしくしてくれましたから!」

やよい「わたしも、とってもたのしかったです!」

春香「そ、そっか。ならいいんだけど……」

春香(黒井社長も、さすがにやよいには毒気を抜かれたのかなぁ……?)

春香(社長、黒井社長に会いに行くって言ってたよね……)

春香(961プロの事は、社長に任せよう)

やよい「そういえば……じゅぴたーのみなさんは、なんか変でしたねー」

春香「変って……?」

やよい「うーんと、うまく言えないんですけど……」

やよい「3人なのに、ひとりでした」

春香「ん?どういう事?」

やよい「なんていうか……合体?してるみたいでしたよ?」

春香「合体……?」

春香(無尽合体キサラギを思い浮かべたけど、あれはロボットのお話だし……)

春香(合体って……ま、まさか………///)

やよい「あのー、どうかしたんですか?春香さん」

春香「…………はっ!」

春香「う、ううん、何でもないよ?」

春香(私ったら、小鳥さんみたいな事想像しちゃったよ……)

春香(ダメダメ、私、そんな子じゃないんだから……!)




595: 名無しさん 2014/11/30(日) 07:52:46.26 ID:Y1v6RjHMO
ドワーフ戦車 1号車

…ドゴォン…


真「……ん?何の音かな?」

ドワーフ兵士「バブイルの塔、近いー!お前達、準備するー!」

伊織「はぁ……また、あの弾幕をかいくぐる事になるのね……」

千早「そういえば水瀬さんは、バブイルの塔から来たって言っていたわね?」

伊織「ええそうよ。あの激しい砲撃の中をね……」

真「ああ、王様が言ってたっけ。そんなに激しいの?」

伊織「まあ、見ればわかるわ」

伊織「ホント、死ぬ思いだったわよ……」

真「ふーん……」

真「だったらさ、砲台を少しでも減らせばいいんじゃないか?」

伊織「減らすって……破壊するって事?」

真「そういう事!」

伊織「でも、どうやって破壊するのよ?」

千早「……何か、考えがあるのね?」

真「へへっ、まあねー」

真「ところで伊織、水の魔法を使えるって言ってたよね?」

伊織「魔法じゃなくて忍術ね」

真「おっけー!ならきっといけるな」

伊織「何よ真、もったいぶってないで、さっさと話しなさいよ」

真「じゃあ2人とも、ちょっと耳貸して……」



真「あのね……」

真「ごにょごにょ……」



伊織「はー…………まったく、あんたも無茶な事考えるわねぇ」

千早「私はまだいいけれど、2人が危険過ぎないかしら……?」

真「ああ、ボクの事なら心配しないでよ。多少の事は耐えられるから、多分平気だよ」

真「伊織はどう?やれそう?」

伊織「ふんっ!この伊織ちゃんをナメるんじゃないわよ!」

伊織「あんた達に、スーパー忍者アイドルの身のこなしを、見せてあげるわ!」

真「それは楽しみだ!……千早はどう?」

千早「私も……多分問題ないと思うわ」

真「よしっ!じゃあ、外に出て準備しよう!」

伊織「にひひっ!あの砲台に仕返しできると思うと、腕が鳴るわね!」

千早「水瀬さん、油断は禁物よ?」

伊織「わかってるわよっ!」

真「春香達には、一足先に行っててもらおうか」



596: 名無しさん 2014/11/30(日) 07:58:18.88 ID:Y1v6RjHMO
ドワーフ戦車 2号車

美希「ん……」ムクッ

美希「………あふぅ」

春香「あ、美希……おはよ」

やよい「美希さん、おはよーございますっ!」

美希「おはよーなのぉ……」アフゥ

春香「よく起きたね?今日はまだ少ししか寝てないでしょ?」

美希「……なんだか、いやーな感じの気配がしたの」

美希「だから、目が覚めちゃった」

やよい「いやな気配、ですか?」

美希「うん……」

春香「美希、わかるの?」

美希「なんとなく、だけどね」

春香「そっか……」

春香「じゃあ、気を引き締めて行かなきゃだね!」

やよい「そーですね!」

美希「………ところで春香、リボン替えた?」

やよい「あ、そーいえば……」

春香「えへへ……気づいた?」

春香「昨日、ルカさんと交換したんだぁ」

美希「……どーりで、春香にしては趣味のいいリボンだと思ったの」

春香「そ、それは、普段の私のセンスが悪いって事かな……?」

美希「ミキと春香じゃ、趣味が違うからねー?」

やよい「とっても似合ってますよ?春香さん!」

春香「やよい……ありがと」



真「………おーーーーーい」



春香「ん?真の声……?」

春香「……なんだろ?」


ガタン…



春香「真ーー!どうしたのーー!?」



真「ボク達、砲台を破壊してから行くからさーー!!」

真「春香達は先に行っててよーー!!」

真「あとから追いつくからさーー!!」



春香「わかったよーー!」



597: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:00:09.46 ID:Y1v6RjHMO

美希「春香、真クン、なんだって?」

春香「先に行ってて、だってさ」

やよい「え?じゃあ真さん達は、どうするんでしょう?」

春香「砲台を破壊してから追いつくって言ってたよ」

美希「ふーん……真クン、きっと暴れたいんだね」

春香「うーん、そうかもね」

やよい「だいじょーぶですかねー?」

春香「あの3人なら、問題ないんじゃないかな?」



ジオット「お前達、準備は良いか?」

春香「はい、大丈夫です」

美希「ん〜〜……!」ノビッ

美希「ふぅ……」

美希「ミキもいいよ?」

やよい「わたしも、だいじょーぶです!」

ジオット「……うむ」

ジオット「これから、別働隊が塔に攻撃を仕掛ける」

ジオット「砲台が別働隊に向いている隙に、塔へ走るのだ」

ジオット「……頼んだぞ!」

春香「わかりました!」





ドゴォン…


ジオット「……よし、攻撃が始まった!」

ジオット「さあ、行くのだ!」



春香「はい、行ってきます!」


ガタン…




598: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:01:51.28 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔付近

ドゴォン…ドカァン!


春香「2人とも、行くよっ!」

やよい「はいっ!」

美希「春香は転ばないように気をつけるの」



タタタタ…



春香(そういえば響ちゃん、この場所わかるかなぁ……?)

春香(……考えても仕方ないか)

春香(今はとりあえず、ルカさんの首飾りを……)



ズルッ…



春香「あっ……」ヨロッ

春香「わっ!……ととっ……!」


ドテッ


春香「……痛たた……擦りむいちゃった」

春香「はぁ……美希に言われたばっかりなのに、また転んじゃったよ……」

春香「……って、あ、あれ?」キョロキョロ



春香「美希とやよいがいない……?」

春香「置いてかれちゃった……」

春香「私も、早く行かなきゃ!」



魔物「ギャーー!」



春香「わわっ!ま、魔物!?」

春香「もー、こんな時に限って……!」チャキッ




599: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:04:46.13 ID:Y1v6RjHMO
ドワーフ戦車 1号車

真「うわっ、なんだあれは……?」

千早「とても……大きい砲台ね」

伊織「な、何よあれ?私が通った時はあんなの無かったわよ?」



『ひょひょひょ……!』

『…………ようこそ、ドワーフ諸君。わざわざやられに来るとは、ご苦労な事じゃ』



伊織「!」

伊織「この気持ち悪い笑い方は……!」

真「伊織、知り合い?」

伊織「そんなんじゃないわ」

伊織「ちょっと因縁があるだけ……」グッ

伊織「今の声の主は、頭のおかしい科学者のじじいよ。確か、律子の部下の部下だったはず」

千早「科学者……」

千早「なら、あの砲台を造ったのは……」

伊織「おそらく、あいつでしょうね」



『……せっかく来てもらったんじゃ。ワシの可愛い巨大砲をプレゼントしよう!』



ギュイィィィィン…ガシャン!



真「や、ヤバいよ、あれは!」

真「ドワーフの人達!逃げてっ!」



ブゥゥゥゥゥン…



ドゴォォォォォォォン!





600: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:06:54.15 ID:Y1v6RjHMO

伊織「……!」

伊織「戦車隊が……!」

真「一気に半分近くやられた……!」

千早「……」

真「あの大きいやつ、なんとかしないとな……」



真「……2人とも、段取りはわかったよね?」

千早「ええ。私が2人を抱えて飛んで……」

伊織「この伊織ちゃんの水遁の術で、砲台を水浸しにして……」

真「ボクの雷煌拳で、砲台をショートさせる!」

千早「……でも真、あなたのその技は、掌の雷を叩きつけるのでしょう?あなたまで感電してしまうわ」

真「大丈夫!耐えてみせる!」

真「それより千早、あの大きい砲台まで飛べる?」

千早「……」チラ

千早「……ごめんなさい、あの高さは、さすがに無理かもしれないわ」

真「……そっか、わかった」

伊織「まあ、あとの事は私と真でなんとかするから、千早はジャンプに専念しなさい?」

千早「ええ」



千早「…………それじゃ、行くわ」

真「……」コクン

伊織「……」コクン



千早「……くっ!」ダンッ


フワッ…



601: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:09:05.12 ID:Y1v6RjHMO

スゥゥ…


真「……すごい!こんなに高く……」

伊織「千早にはこんな力があるのね……」



『………………ん?あいつは……!?』



千早「……2人とも、そろそろ限界みたい!」

真「わかった!……伊織!」

伊織「任せなさいっ!」ダンッ



伊織「…………壊れちゃいなさい!」バッ

伊織「……水遁っ!」


ズバシャァァーー!



『あーーーっ!!わ、ワシの子供達に、なんて事してくれるんじゃーー!!』



伊織「………よっと!」ガシッ

伊織「真!あんたの番よっ!」



真「……行くぞっ!」ダンッ



真「くらえーーっ!」バッ

真「……雷煌拳っ!」



ズガガガガガガッ!



『ああーー!!』



バチッ…ビリビリッ…



ヒューー…


真「あああああああっ!」ビリビリッ

真(やば……調子に乗って威力上げ過ぎたかも……)

真(か、身体がうまく動かせない……!)

真(こ、このままじゃ、地面に叩きつけられるっ……!)



…ガシッ!



602: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:10:36.63 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔 外壁

真「あ……れ……?」チラ


伊織「っ……ぐうっ……!」ビリビリ

真「い、伊織っ……!」

真「だ、ダメだ!今ボクに触ったら、伊織まで……!」

伊織「ば、バカ言ってんじゃ……ない……わよっ!」ググッ

伊織「こ、これぐらいっ……!」



伊織「………ぅおりゃあああっ!!」グイッ


ドサッ



真「かはっ……!」

真「う……い、伊織……」

真「ありがと……助かったよ……」

伊織「ゴクゴク……」

伊織「…………ふぅ」

伊織「まったく………自分の技で死にそうになってどうするのよ!?」

伊織「少しは後の事ぐらい考えなさいよねっ!」ビシッ

真「はは……反論できないや……」


伊織「……………ほらっ!」スッ


真「あ……これは……ポーション?」

伊織「あげるわ……」

真「……ありがと、伊織!」ニコッ

伊織「べ、別に、あんたのタメじゃないんだからねっ!?」

伊織「ただ、この薬はたくさん持ってるから、早く減らしたかっただけなんだからっ……!」

真「あはは!わかったわかった、そういう事にしておくよ!」ゴクゴク



真「それより……」チラ

伊織「ええ……どうやら、砲台の動きは止まったみたいね」

真「でも、完全に破壊できたってわけじゃないみたいだ……」

伊織「……まあ、一時しのぎにはなるかもね」

伊織「……で、どうするの?」



603: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:13:35.11 ID:Y1v6RjHMO

真「どうするって?」

伊織「あんたね……私達が今どこにいるか、わかってるわけ?」

真「あ……そうだ、忘れてた」

真「うーん……どうしよっか?」

真「さすがにこの高さから飛び降りたら、無事じゃ済まないな……」チラ

真「かと言って、外壁に窓らしきものは見当たらないし……」キョロキョロ



伊織「…………仕方ないわね」

伊織「この、スーパー忍者アイドル伊織ちゃんに、任せなさいっ!」

真「おっ!忍術でなんとかしてくれるの?」

真「あっ、ひょっとして、ムササビの術で空を飛ぶとか?」

伊織「そんな忍術知らないわよ……」

伊織「大体、そんなのできたら最初からやってるわよ」

真「……じゃあ、どうするのさ?」

伊織「……にひひっ!」




伊織「……壁抜けの術よ!」



604: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:15:03.62 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔入口

春香「……えいっ!」ブンッ


ザシュッ!


魔物「」


春香「………ふぅ」

春香「思ったより時間掛かっちゃったなぁ」

春香「早く、2人の後を追いかけないと……」



千早「…………春香?」



春香「あれ?千早ちゃん?」

春香「もう、終わったんだね?」

千早「ええ」

春香「真と伊織は?」キョロキョロ

千早「それが……いくら待っても、降りて来る気配がないのよ」

千早「ひょっとしたら、塔の外壁から侵入したのかも」

春香「そうなんだ……」

千早「で、美希と高槻さんは?」

春香「え、えっと……」




千早「まったく……2人に置いてかれるなんて、春香らしいわね」

春香「あはは……面目ない……」

千早(……あら?でも、私も置いて行かれた事になるのかしら?)

千早(これじゃ、春香の事言えないわ)



千早「春香、高槻さん達が気になるわ。早く行きましょう」

春香「うん、そうだね」

春香「ここで待ってても仕方ないよね」


スタスタ…



605: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:17:56.34 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔 B13F

スタスタ…


やよい「美希さーん、春香さんひとりでだいじょーぶですかねー?」

美希「心配いらないの」

美希「『主人公は死なない』っていう、鉄の掟があるから!」

やよい「へー、そうなんですかぁ……」

やよい「春香さん、すごいですねー!」

美希「あっ……」ピタ

やよい「どーしたんですか?美希さん」

美希「……なんだか、怪しい看板があるの」スッ



『クリスタルルーム、ここを右折ッス』



やよい「あっ、ホントですねー」

やよい「……あれ?クリスタルってたしか、大切なものなんですよね?」

美希「うん。ミキもあんまり話を聞いてなかったからよくわからないけど……」

美希「春香達がそんな事を言ってた気がするの」

やよい「じゃあ、このカンバンの通りに進めばいいんじゃないでしょーか?」

やよい「えへへ、敵さんにもやさしい人がいるんですねっ!」ニコッ

美希「ううん、やよい……これはきっと、罠なの」

やよい「わ、わな……?」

美希「こうやって嘘の案内をする事で、ミキ達を罠にはめるつもりなんだよ」

美希「だから、きっとこの看板と逆に行けばいいって思うな!」

やよい「わぁ!美希さん、さすがですっ!」

美希「えっへん!もっと褒めてもいいよ?」ドヤッ



魔物「ガアア!」



やよい「はわわっ!」

美希「あはっ!ミキの矢の餌食になっちゃえ!」ギリッ


ヒュンッ…ドスッ!


魔物「」



美希「ふぅ……」

美希「ねえ、やよい?」

美希「やよいの力を見せて欲しいの」

やよい「はい!わたしも、がんばりますっ!」



606: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:21:15.88 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔 B11F

魔物「ギャーギャー!」


やよい「ま、まものさん……!」

美希「やよい、出番だよ!」

やよい「わ、わかりましたっ」

やよい「……ブリザラ!」


コォォ…シャキーン!


魔物「」



美希「あはっ!やよいもちゃんと強くなってるみたいだね?」

やよい「そんなことないですよ?まだまだみなさんにはかないません!」

美希「やよいは謙遜しすぎなの」

美希(ミキ的には、やよいの力が一番計り知れないって思うな)

美希(あの雷おじいちゃん、すっごく強かったもん)



やよい「………あっ、美希さん!」

美希「どうしたの、やよい?」

やよい「また、カンバンが……」スッ



『クリスタルルームはこっちじゃないよ。戻ってくださいッス』



美希「……」

やよい「……道、まちがっちゃいましたかねー?」

やよい「さっきのカンバンからは、一本道だった気がするんですけどねー」

美希「……ううん、これもきっと罠なの」

やよい「はわわっ……!」

やよい「ま、また、だまされるところでした……」

美希「やよいは、もっと疑うって事を知った方がいいって思うな……」

美希「んーと……この看板が罠だからー、このまま進めばいいって事だよね、きっと!」

やよい「わなにひっかからなくて、よかったぁ……」ホッ



美希「行こっ!やよい」ギュッ

やよい「はいっ!」


スタスタ…



607: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:23:15.06 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔 B6F

真「……すごいや!ホントに壁をすり抜けちゃったよ」

伊織「にひひっ!この伊織ちゃんにかかればあんなの造作もないわ!」

伊織(…………ホントは、壁抜けの術なんてとっさに思いついただけなんだけど)

伊織(まあ、うまく行ったから結果オーライね)



伊織「結構上の階に来ちゃったわね……」

伊織「どうする?ここで春香達を待ってましょうか?」

真「うーん、そうだなぁ……」

真「それもいいけど……」キョロキョロ

真「さっきのおっきい砲台、この近くにあるはずだよね?」

伊織「えっ?まさかあんた……」

真「うん!そのまさか」ニコッ

伊織「あまり動かない方がいい気もするけど……」

伊織「……ま、春香達を待つ間のいいヒマつぶしになるかもね」

伊織「……いいわ、付き合ってあげる」

真「さっすが伊織!」

伊織「さ、そうと決まったら、探すわよ!」

真「おーー!」


スタスタ…



608: 名無しさん 2014/11/30(日) 08:25:51.32 ID:Y1v6RjHMO
バブイルの塔 B13F

『クリスタルルーム、ここを右折ッス』



春香「……」

春香「………この看板、どう思う?千早ちゃん」

千早「……」

千早「普通に考えれば、敵がわざわざ私達を案内するはずないわね」

春香「そうだよねぇ。じゃあやっぱり、罠……かなぁ?」

千早「でも、その裏をかいて……という事も、充分考えられるわ」

春香「あ、そっか……」

春香「考え出したら、キリがないね……」

千早「春香。そういう時は、判断基準が何かを考えればいいと思うわ」

春香「判断基準……?」

千早「ええ」

千早「私達は、ルカさんの首飾りを取り返しに来た訳だけど……」

千早「クリスタルだって、取り返さなければならない」

春香「うん、そうだね」

千早「でも、今私達はバラバラになってしまった」

千早「まずは、みんなで合流する事が先決じゃないかしら?」

春香「あ……」

春香「判断基準って、そういう事だったんだね」

春香「美希とやよいが、どっちに行ったかを基準に考えるって事?」

千早「その通りよ」

春香「うーん……どっちかなぁ?」

千早「私には、あの純真無垢な高槻さんが、こういう案内を無視するとは思えないの」

春香「……あー確かに、やよいなら疑う事なく看板に従いそうだよね」

春香「じゃあ……」

千早「ええ。とりあえず、看板の通りに進んでみましょう」

春香「うん、わかった!」


スタスタ…



611: 名無しさん 2014/12/10(水) 12:37:21.09 ID:hBwOe8d/O
幻獣界 幻獣王の館

高木「はぁ、はぁ……!」


黒井「はぁ、はぁっ……!」


黒井「ふんっ!」ブンッ


ガキィン!


高木「く……!」ギリッ

高木「……まったく、年は取りたくないものだな……」


黒井「……過去の栄光にすがるのか?」

黒井「ふん!実にお前らしい……」


高木「そういうわけではないのだが……」

高木「私は、今を、そして未来を見据えているつもりだ」

高木「黒井………我々が未来を勝ち取る為には……」

高木「……みんなの力が……お前の力が、必要なのだよ!」タンッ

高木「……はっ!」ブンッ


黒井「……白々しいっ!」ガキィン

黒井「私は1人でも道を切り拓く!」ググッ

黒井「今までずっと、そうやってきたのだからなっ!」ブンッ


ドゴォ!


高木「ぐは……!」


黒井「お前達とは、馴れ合う気など無いっ!」

黒井「人は……支配するか、されるかの、2通りしかない」

黒井「お前が後生大事にしている『絆』とやらなど、支配される側のか弱き人間達が、みじめに傷を舐め合っているだけなのだっ!」


高木「………いいじゃないか」ヨロッ

高木「弱いからこそ、力を合わせる。私はみじめなどとは思わないがね……」

高木「そして黒井……お前だって本当は……」


黒井「黙れっ!」ブンッ


ドゴォ!



612: 名無しさん 2014/12/10(水) 12:39:43.54 ID:hBwOe8d/O

高木「ぐ……!」ヨロッ

高木「く、ふふ……」

高木「やはり、認めたくはないか……?」


黒井「黙れと言っている!」ブンッ


高木「はっ!」クルンッ


スタッ


黒井「な!後ろに……!」


高木「……私は、意地でもお前を連れて行くつもりだっ」ブンッ


ドゴォ!


黒井「がっ……!」ヨロッ

黒井「く……やるな……!」

黒井「そうでなくてはな……」

黒井「ふははは!さあ高木、私をもっと楽しませてくれ!」

黒井「やはり、私を満たせるのは…………お前しかいない!」スッ


高木「ふむ……それは光栄だねぇ」スッ





翔太「すごい……!2人とも、超強くない?」

北斗「それだけじゃないぜ、翔太」

北斗「ほぼ互角の戦い……まさに、実力伯仲ってやつだ」

翔太「うん、確かに……」

翔太「それに黒ちゃん、あんなに楽しそうな顔もするんだねぇ……」

冬馬「………」

冬馬(おっさん、単なる殴り合いは楽しいかよ……?)

冬馬(…………)

冬馬(ちくしょうっ……なんだよこの気持ち……)

冬馬(正直………………眩しいぜ、2人とも!)




613: 名無しさん 2014/12/10(水) 12:47:22.68 ID:hBwOe8d/O
バロン城 白魔法研究室

ものまね士「……ええと」キョロキョロ

ものまね士「これは必要かな……」スッ

ものまね士「はい、店主さん。持ってください」ズイッ

店主「あいよ」スッ

ものまね士「あとは……」

ものまね士「これとこれ……」スッ

ものまね士「あ、あれも必要なものなのよね」



ものまね士「……はい」ドッサリ

店主「そ、そんなに持って帰るのか……?」

ものまね士「仕方ないじゃないですか」

ものまね士「白魔法の研究って、とにかく魔法書が必要なんです」

ものまね士「これでも必要最低限なんですよ?」

店主「そうなのか……よいしょっと」ゴソッ

店主(これだけ本がかさばると、結構重いな……)




店主「………さて、あんたの用事はこれで終わったか?」

ものまね士「そうですね。あんまり欲張っても、持って帰れませんからね」

店主「……まあ、この荷物を持って砂漠越えするのも、かなりキツいもんがあるけどな」

店主「よし!じゃあ、約束通り……」

ものまね士「わかってますよ。見たいんでしょ?飛空艇」

店主「うん。さっそく行こう!」

店主「……ほら、置いてくぞ?」

スタスタ…


ものまね士「ちょ、ちょっと待ってくださいよ〜!」

タタタタ…



614: 名無しさん 2014/12/10(水) 12:51:11.53 ID:hBwOe8d/O
バロン城 造船所

カンカンカン…


技師1「おーい!こっちにもミスリルくれー!」

技師2「わかった、ちょっと待ってろ」



響「……」ソワソワ

響「……ねえ、自分も何か手伝う事はない?」

響「見てるだけじゃ、ヒマだぞー」

技師1「あ、じゃあ……」

技師1「こっちを少し手伝ってもらえますか?」

響「よーしっ!任せろ!」

タタタタ…



カンカンカン…


響「……こんな感じでいいの?」

技師1「そうそう、さすが親方、飲み込みが早いですねー!」

響「へへっ、なんたって自分、完璧……」

響「……」

技師1「?」

響「……自分は、完璧を目指してるからな!」

響「このくらい、なんくるないさー!」ニコッ

技師1「頼りにしてますよ、親方!」

響「うんっ!」



響(自分は、まだまだ完璧なんかじゃない……)

響(みんながいないと、ひとりじゃ何もできない……)

響(みんなと冒険してみて、それがわかったんだ)

響(だから、自分は……)

響(…………みんなと一緒に、完璧を目指すんだ!)



響(…………待っててね、みんな!)




615: 名無しさん 2014/12/10(水) 12:59:12.99 ID:hBwOe8d/O
バロン城 造船所 飛空艇内部

店主「おお〜!これが、夢にまで見た飛空艇……!」キョロキョロ

ものまね士「……って言っても、なんだかよくわからない機械があるだけで、私にはさっぱり良さがわからないんですが……」

店主「まあ、ここはエンジンルームだからなぁ」

店主「素人が見ても、良さは伝わらないかぁ……」

店主「うーん、残念だなぁ」

ものまね士「あ、でも……私は楽しいですよ?」

ものまね士(店主さんの楽しそうな顔を見られるだけで…………)

ものまね士(なーんて……わ、私ったら………///)

店主「おっ、そうか?よーし、特別にお前にも飛空艇の良さを教えてやるよ!」

店主「まず、このエネルギー変換装置なんだが、これは今から約200年前にだな……」

ものまね士「ふんふん……」

ものまね士(ふふふ……店主さん、本当に楽しそう……)

ものまね士(……来て良かったなぁ、バロン)

ものまね士(なんだか、デートみたいだし……)

ものまね士(……はっ!こ、これって、初デートじゃないっ!)

ものまね士(はぁ〜あ……もっと雰囲気あるところに行きたかったなぁ……)チラ

店主「……で、大魔導師ウネが『ゼウスの怒り』を改造して造った発電機が、今の時代の飛空艇のエンジンに使われてるってわけだよ!」

店主「……って、聞いてるのか?」

ものまね士「うふふ、聞いてますよ?」

店主「そうか!じゃあ、もっと話を……」



…ガタンッ!



店主「おっと……!」ヨロッ

ものまね士「あっ、店主さんっ!」ガシッ

店主「わ、悪い……」



616: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:02:04.16 ID:hBwOe8d/O

ものまね士「……今、揺れましたよね?」

店主「ああ……」



ガクンッ…


…ゴォォォォォォ



ものまね士「あ、あの、店主さん、これって……」

店主「うん。エンジンが動き始めたな」

店主「どうやらこの飛空艇、飛ぶみたいだなぁ」

ものまね士「みたいだなぁ……じゃ、ないですよっ!」

ものまね士「早くここから出ないと!」

店主「いや、そりゃ無理だ。もう結構な高さまで飛んでるんじゃないかな?」

店主「いやぁ、まさかエンジンが動くところを見れるなんて、ラッキーだなぁ!」

ものまね士「ちょ、ちょっと〜!それじゃ、私達はどうなるんですか〜!?」

店主「心配するなよ。どうせテスト飛行とかだろ?」

ものまね士「そ、そうですかね……?」

店主「大丈夫だよ。そんな事よりさ、つかの間の空の旅を楽しもうぜ?」

ものまね士「は、はぁ……」

ものまね士「だ、大丈夫かしら……?」




617: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:04:12.25 ID:hBwOe8d/O
飛空艇エンタープライズ

ババババババババ…



響「弟子達ー、ありがとなー!!」

響「また会おうなー!!」




響「よし、これでエン太郎はパワーアップしたぞっ!」

響「もう、地底の溶岩なんかに負けないんだからな!」




「………ぁぁぁぁ……!」



響「……ん?今、なんか聞こえた気が……?」

響「気のせいかなぁ?」

響「ま、いいか」

響「さ、エン太郎、地底に急ぐぞっ!」グイッ



ブオォォォォォォ…




618: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:07:14.37 ID:hBwOe8d/O
ファブール城 マコトの家

亜美「え、えっと……?」

真美「ど、ど〜ゆ〜事……?」

あずさ「あらまあ………こんな事もあるのね〜」

トロア「ゆ、ユキホ王女に、そっくりだ……」



雪歩「えへへ、久しぶり、ユキコさん」ギュッ

ユキコ「ユキホさん……元気そうだねっ」ギュッ



P(まるでドッペルゲンガーだなぁ……)

P(……真の奥さんが雪歩にそっくりとは……いろいろまずいような気がするぞ)

P(ともあれ……)

P「…………真美」チョンチョン

真美「……えっ?あ……うん、そうだったね」

真美「……ねえねえ、ゆきぴょんツー?」

ユキコ「ツーって……わ、私の事……かな?」

真美「そうそう。あのさ、真美達、ちょっとお願いがあるんだけどさ……」

ユキコ「な、何かなぁ……?」

真美「………フライパン、貸してくれたりしないかな〜?なんて……」

ユキコ「ふ、フライパンを……ですか?」

あずさ「なぜ、フライパンなのかしらね〜?」

雪歩「よく、わからないですぅ」

トロア「フライパンが必要でしたら、言っていただければ我が城からお持ちしましたのに……」

亜美「とろ姉ちゃん、ただのフライパンじゃ意味ないんだよん」

亜美「ゆきぴょんセカンドが毎日マコちんのタメにじっくりネットリ愛情をこめて料理を作ってるフライパンじゃないとね!」

トロア「愛情を込めて……?」

あずさ「いったい何に使うの?」

亜美「んっふっふ〜!そのうちわかるよ!」



ユキコ「あ、あのう……」



619: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:09:30.60 ID:hBwOe8d/O

ユキコ「その子の言う通り、このフライパンは、マコトさんに料理を振る舞うのに必要なんですぅ」

ユキコ「だから、本当に申し訳ないんですけど……」

ユキコ「お貸しする事はできません……」

真美「え〜、ダメなの〜?」

ユキコ「他のものなら構わないんですけど、これだけは……」

真美「マジかぁ……」

亜美「……兄ちゃん、これはゆゆしき事態ですぞ!」

P「うーん、そうだな……」

P(ゲームだと、あっさり貸してくれるんだけどなぁ)

P(無理矢理奪うのも、ちょっとかわいそうだし……)

P(でも、このフライパンが無いと、真が……)



雪歩「あの、プロデューサー……?」

雪歩「ユキコさんのフライパンって、そんなに重要なものなんですか?」

P「ああ。このフライパンはな、この先、真を救うのに必要になってくるはずなんだ」

雪歩「真ちゃんを救うのに……?」

雪歩「………」




雪歩「じゃあ……」

雪歩「ユキコさんも一緒に連れて行く、っていうのはどうですか?」

ユキコ「え……?」

P「ゆ、雪歩……」

亜美「おお〜?ゆきぴょんにしては、ずいぶんダイタンな提案ですな〜」

真美「まあ、マコちん絡みですからな〜。ゆきぴょんがダイタンになるのも、無理はあるまいて……」

P「確かに、この子を連れて行けば、この子はフライパンを手放さずに済むし、俺達も『あいのフライパン』が手に入ったも同然なんだけど……」

あずさ「私は、賛成ですよ〜?」

あずさ「旅は道連れ、とも言いますし〜」

トロア「私は……妖精殿の決定に従います」



620: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:10:41.59 ID:hBwOe8d/O
P「………」

P「……わかった。雪歩、付いて来てくれるか、頼んでみてくれないか?」

P「その子さえ良ければ……だけどな?」

雪歩「は〜い、わかりましたぁ」



雪歩「ユキコさん……」チラ

ユキコ「は、はい……」

雪歩「あのね?ユキコさんのフライパンって、真ちゃんを助けるのに必要みたいなんだ……」

ユキコ「そ、そうなの……?」

雪歩「ユキコさん、私達と一緒に来てくれないかな……?」

雪歩「真ちゃんを助ける為に、あなたの力が必要なの……!」

ユキコ「………」



ユキコ「わ、私じゃ、皆さんの力になれるかどうかわからないですけど……」

ユキコ「そ、その……私のフライパンで、マコトさんを救う事ができるなら……」

ユキコ「私も、お供させてくださいっ!」



雪歩「ユキコさん………ありがとう!」

あずさ「うふふ、よろしくお願いしますね〜?」

トロア「トロイアの神官、トロアと申します。以後、お見知り置きを」ペコリ

亜美「ゆきぴょんと区別するのが大変そうだね?」

真美「スコップかフライパンかで区別するしかないっぽいね〜」



P(当初の予定と少し違うが、これで『あいのフライパン』は確保できた)

P(次は、いよいよ地底だな……)




621: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:14:29.02 ID:hBwOe8d/O
飛空艇

ババババババババ…


トロア「さすがに空の上となると、風が強いですね」

雪歩「はい。でも、おかげで洗濯物の乾きが早くて助かりますぅ」

雪歩「飛ばされないように気をつけなきゃですけど……」

ユキコ「ほ、本当に、空を飛んでいるんですね……」ガクガク

雪歩「ユキコさん、大丈夫だよ?」

雪歩「私も、最初は恐くて動けなかったけど……もう、だいぶ慣れてきたんだよ?」

ユキコ「そ、そうなんだ……」

トロア「ユキコ殿。高いと思うから恐いのです。高いと思わなければ、恐さも忘れましょう」

ユキコ「高いと思わない……」

ユキコ「………」

ユキコ「だ、ダメですぅ!どうしても気になっちゃいますぅ……」

雪歩「うーん……」

雪歩「こういう時って、何か他の事に集中できれば、高さも忘れるんじゃないでしょうか?」

トロア「なるほど、それはいい考えですね」

ユキコ「……じゃ、じゃあ私、お料理作って来ますぅ」

雪歩「あ、私も手伝うよ。一緒に行こう?」ギュッ

ユキコ「うん、ありがとう!」ギュッ

スタスタ…



トロア「ユキホ王女と手をつなげるなんて、羨ま……」

トロア「じゃなくて、仲がいいのだな……」

トロア「まるで、本当の双子の様だ」

トロア「……そういえば、『本当の双子』はどうしているのだろうか?」



亜美「ファイア!」ボゥ


トロア「むっ!」ヒョイッ



622: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:17:36.11 ID:hBwOe8d/O

亜美「ふむ……亜美の不意打ちをよけるとは……お主、なかなかやるではないか」

トロア「……アミ殿」

トロア「私は不意打ちなんてくらいませ……」ツルッ


ドテッ


トロア「な、何……!?」

亜美「やた〜!大成功!」

トロア「あ、アミ殿、いったい何をしたのです?」

トロア「急に足元が滑って……」

亜美「そりゃそ〜だろね〜?」

亜美「とろ姉ちゃんの足元に、ブリザドかけたからね」

トロア「し、しかし、先ほどアミ殿が使われたのは、ファイアでは?」

亜美「亜美、『ファイア』って言っただけだよ?」

トロア「でも、確かに炎が……」

亜美「『ファイアとブリザドを、同時に使った』からね〜」

亜美「ブリザドの方は、詠唱すっ飛ばして放ったのさ〜」

トロア「同時に二つの魔法を使うなんて、そんな事ができるのですか?」

亜美「まあ、まだ弱い魔法でしかできないけどね」

亜美「もっと練習して、一度に10個くらい魔法出せるようにするからねっ!」

トロア(いや、同時に二つでも、充分奇襲になるだろう……)

トロア(同時に複数の魔法を使う魔道士なんて、今までいただろうか……?)

トロア(この若さで………)

トロア(まったく、末恐ろしい方だ……)




623: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:21:32.03 ID:hBwOe8d/O
飛空艇 船室

P「………なあ、真美」

真美「ん〜?」

P「なんで俺は……」

真美「……」

真美「……べろちょろになっちゃったのかって?」

P「うん……」

真美「仕方ないっしょ〜。今、兄ちゃんの服は洗濯してるんだからさ」

真美「さすがに、裸で歩き回られるのは、キョーイクジョーよくないっていうか……」

真美(……ま、兄ちゃんの裸は、前に見ちゃったんだけどね)

真美(あっ……ちょ、ちょっと思い出しちゃった……///)



P「なんか、この姿も久しぶりだなぁ」

真美「うん、そ〜だよね」

真美「ここんとこずっと、人間に化けてたもんね?」

P「あのな……べろちょろが真の姿、みたいな言い方するなよ……」

真美「どっちでもい〜じゃん」

P「よ、良くないだろ?」

真美「ううん、いいんだよ」

P「え……?」

真美「真美達にとっては、べろちょろだろうと、人間の姿だろうと……」

真美「真美達の兄ちゃんには、変わりないもんね!」

真美(……っていうか、べろちょろなら、真美が兄ちゃんを独り占めできるしっ)

P「ん……まあ、いいけどさ……」

P「でも、その……真美は、いやじゃないか?」

真美「何で〜?」

P「い、いや、その……」

P(……まさか、真美の胸に抱かれる日が来るとはな……)

P「……」フニュ

P(……あれ?真美、もしかして少し成長したか……?)



624: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:24:55.34 ID:hBwOe8d/O

真美「あ……ひょっとして兄ちゃんは、真美に密着してる事を気にしてるのかな〜?」

P「ま、まあ、そうなんだが……」

真美「えへへっ……」ギュッ

P「ムグッ!」

P「ど、どうしたんだ、急に?」

真美「兄ちゃんも、一応真美の事、意識してくれてるんだな〜って思ってさっ」

P「そ、そりゃあ、真美だってアイドルだしなぁ……」

真美「むむむっ!」

真美「も〜!アイドルとか、今はカンケ〜ないっしょ〜!」ギュッ

P「わ、わかった、わかったから………く、苦し……」

真美(む〜……兄ちゃんめ〜)

真美(絶対いつかは、真美の事を『アイドル』じゃなくて『女の子』として意識させてやるかんねっ!)



P「………ところで真美、今は誰が操縦してるんだ?」

真美「え?亜美じゃないの?」

亜美「……呼んだかい?」ヌッ

真美「わっ亜美!」

真美「あれ?飛空艇を操縦してるんじゃ……」

亜美「え?亜美はてっきり真美が操縦してると……」

P「…………なんだか、非常にいやな予感がするんだが……」

真美「ま、真美も……」

亜美「ま、まさか、あのお方が操縦してるなんて事、ないよね……?」

P「お、おい、2人とも。操縦席へ行ってみよう!」

亜美・真美「あ、アイアイサー!!」

タタタタ…




625: 名無しさん 2014/12/10(水) 13:28:17.47 ID:hBwOe8d/O
飛空艇 操縦席

あずさ「うふふ〜」グイッ

あずさ「飛空艇の操縦って、意外と簡単なのね〜?」

あずさ「空のお散歩がこんなにお手軽にできるなんて、とってもステキね〜」

あずさ「………それにしても」

あずさ「今は、どの辺りを飛んでいるのかしら……?」

あずさ「そういえば私、次の目的地を知らないわ」

あずさ「あとでプロデューサーさんに聞かないとね」



タタタタ…



亜美「ああ……やっぱり……」

真美「あずさお姉ちゃん……」

あずさ「あら?亜美ちゃんに真美ちゃん。それに、プロデューサーさん」

あずさ「揃ってどうしたんですか〜?」

P「あ、ええと……あずささんが心配で……」

あずさ「うふふ、大丈夫ですよ?飛空艇の操縦って、意外と簡単なんですね〜?」

P「そ、そうですか。それは良かったです」

P(そっちじゃなくて、『今』、『どこ』にいるのかの方が心配なんだが……)

亜美「……あっ!兄ちゃん、あれ見て!」スッ

P「ん?……あれは、火山か?」

真美「ねえねえ、でっかい穴が空いてるよ!これってひょっとして……」

P「ああ。恐らく、アガルトの火山だ!あそこから地底へ行けるはずだ!」

亜美「あり?ってことは……」



亜美・真美・P(ちゃんと目的地へ向かってた……!)



亜美・真美・P「あずさ(お姉ちゃん)さん、見くびってごめんなさい」ペコリ


あずさ「えっ?ど、どうしたのみんな、急に……?」



629: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:19:14.88 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B11F

魔物「グルル……!」


春香「ま、魔物だよ、千早ちゃん!」

千早「……私に任せて!」

千早「……!」ジリッ

春香「……」じーっ

千早「……水平ジャンプ!」ダンッ


ヒュンッ……ドスッ!


魔物「」


千早「………ふぅ」

千早「春香、終わったわよ?」クルッ

春香「……ふーむ」

千早「………どうかしたの?」

春香「うん……千早ちゃんのジャンプって、不思議だなぁって思ってさ」

春香「千早ちゃんの足、すごく筋肉質ってわけでもないのに、なんであんな風にジャンプできるのかな?って」

千早「それは……口ではうまく説明できないわ」

千早「春香だってそうでしょう?」

春香「えっ?」

千早「あなたの技よ。どうしてあんな人間離れしたスピードで剣を振り回せるの?」

春香「あ……言われてみれば、そうだね」

春香「『なんかやれそうかも?』っていう気がしてくるんだよねぇ」

千早「そう。私も同じよ」

千早「この不思議な力にも、だいぶ慣れて来たわね」

春香「えへへ、そうだね!」



630: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:23:01.15 ID:+NYVYuO4O

魔物「グェー!」ヌッ


春香「わっ!」

千早「……!」チャキッ

春香「……千早ちゃん、今度は私が!」スッ

千早「わかったわ。気をつけて」

春香「……」チャキッ

春香「無双……」

春香「稲妻づ……」ズルッ

春香「っとと………あっ!」ドテッ

ザクッ!


魔物「」


千早「……」

春香「あ、あはは……ま、まぁ、結果オーライって事で……」

千早「無双稲妻ズッコケ……新しい技ができたわね」ニコッ

春香「わ、ワザとじゃないんだってば!」

千早「ふふふ……」



春香「ん……?」

千早「……」

千早「また、看板ね」



看板『クリスタルルーム、ここを左折ッス』



春香「……今回も、看板の通りに進めばいいんだよね?」

千早「ええ。そうしないと、最初の看板の指示に従った意味がないわ」

春香「わかった。じゃ、行こうか?」

千早「ええ……」


スタスタ…



千早「……それにしても、なかなか2人に追いつけないわね」

春香「やよいと美希は、結構体力あるからねぇ」

千早「春香、もう少し急ぎましょう」

春香「うん、わかった!」


タタタタ…



631: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:26:26.27 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B5F リツコの部屋

律子「………んっ」モゾ

律子「……………はっ!」ガバッ

律子「……」

律子「また私、小鳥さんに……」

律子「そ、そうだわ!貴音は……?」キョロキョロ



貴音「………おや、起きましたか」

律子「貴音!……あなた、大丈夫なの?」

律子「私、小鳥さんに操られて、貴音に何かしなかった?」

貴音「…………ふふ」

貴音「今まで、良く耐えましたね?」

律子「え……?」

貴音「……律子嬢、あなたの小鳥による呪縛はわたくしが解きました」

貴音「もう、小鳥の影に怯える事はないのですよ?」ニコッ

律子「……ほ、本当に?」

貴音「また小鳥が何かしてくる事があっても、わたくしが側にいます。安心してください」

律子「た、貴音……私……っ」

貴音「礼には及びません。わたくしは、わたくしの思う事をしたまでですから」

律子「………いいえ、それでも言わせて」

律子「貴音………ありがとう」

貴音「………」

貴音(わたくしは……)

貴音(友人を………ばはむーと殿を救えなかった……)

貴音(だから、誰かの役に立ちたいと思いました)

貴音(これは、わたくしの独りよがりです)

貴音(わたくしに、律子嬢の言葉を受け取る資格など、本当は無いのです)




632: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:27:37.36 ID:+NYVYuO4O

貴音「ところで……」

貴音「律子嬢は骸骨の化け物を知りませんか?」

律子「ガイコツの……?」

律子「知らないわね……」

律子「あなた、月から来たって言ってたけど……」

律子「ひょっとして、その魔物を追ってここへ来たってわけ?」

貴音「………」

貴音「ここへ来るまでの経緯を、お話し致します」

貴音「ですから律子嬢。あなたのこれまでも、話していただけますか?」

律子「そうね、わかったわ。情報は、共有したいところだものね」



…………

……




律子「………」

貴音「………」

律子「………なんていうか、あなたも苦労したのねぇ……」

貴音「………いえ、律子嬢程ではありませんよ」

律子「そう、かしらね……」

律子「でも、あなたのおかげで私もやっと自由に動く事ができる」

貴音「……これから、どうするつもりですか?」

律子「それは聞かなくてもわかってるでしょ?」

貴音「………」

貴音「他の皆の事は……?」

律子「私……小鳥さんに操られていたとはいえ、春香達にたくさん酷い事をしてしまったわ」

律子「……ううん、春香達だけじゃない。この世界の人達にも……」

律子「今さら……」

貴音「………」



633: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:29:45.41 ID:+NYVYuO4O

貴音「律子嬢。あなたは……なんですか?」

律子「なんですかって……な、何?急に……」

貴音「……あなたは、ぷろでゅうさぁでしょう?」

律子「貴音……?」

貴音「わたくしは、直接律子嬢にぷろでゅうすして頂いているわけではありませんが……」

貴音「『ぷろでゅうさぁ』とは、『あいどる』を『ぷろでゅうす』するもの……」

律子「……!」

貴音「これまで何があったとしても、貴女が765ぷろのぷろでゅうさぁである事実に相違はありません」

貴音「そして、わたくし達あいどるの信条は……」



貴音「『ぷろでゅうさぁ』を信じる事、だと思っております」



律子「貴音……」

貴音「……皆が、待っていますよ?」

律子「みんな……」



律子「……………ふふ、貴音には敵わないわ……」

律子「あなたの言う通りね」

律子「私はプロデューサーですもの。ちゃんとアイドル達を管理しなきゃね!」ニコッ

貴音「ふふ……やっと笑顔を見せてくれましたね?」

律子「か、からかわないのっ!」

律子「……これから、ビシバシいきますからね!覚悟しておくのよ!」

貴音「……心得ました」ニコッ




634: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:31:26.31 ID:+NYVYuO4O

律子「あっ……そうだわ」

貴音「どうしたのですか?」

律子「私ももう自由なんだし、魔物の親玉なんてやってられないわよね」

貴音「なるほど、確かにそうですね。……どうするのですか?」

律子「ちょっと、無責任かもしれないけど……」

律子「私が1番信頼を置いている部下がいるわ。その魔物に、あとの事は任せる事にしましょう」

貴音「ふむ……引継ぎ、ですか」

貴音「ふふ、こんな世界へ来てまで律義なのですね、律子嬢は」

貴音「それで、その魔物はどこに?」

律子「確か、クリスタルルームの守護に就いているはず………行きましょう、貴音」

貴音「わかりました」


スタスタ…

ガチャ…バタン






635: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:33:40.20 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B9F

魔物「……」ヌッ


やよい「はわっ!」ビクッ

美希「また出たの!」

美希「やよい!」

やよい「は、はい!」

やよい「ぶ、ぶりじゃらっ!」バッ



………シーン



魔物「?」

やよい「あっ………」

美希「やよい……」

やよい「か、噛んじゃいましたぁ……///」


魔物「……!」キュン


魔物「……」スタスタ

魔物「ヒソヒソ……」

やよい「えっ?………はい………はい」

やよい「そ、そうですか……すみません……」ペコリ


魔物「……」スタスタ



美希「………魔物、行っちゃったの」

美希「ねえやよい、あの魔物になんて言われたの?」

やよい「え、えっと……」

やよい「『なんかヤる気なくなったから、帰るわ』って……」

美希「ふーん……」

やよい「まものさんに、もうしわけないことしちゃいました……」シュン



636: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:35:10.07 ID:+NYVYuO4O

美希「気にする事ないって思うな」

美希「だってさ、これっていわゆる『平和的解決』ってやつじゃないかな?」

やよい「へいわてき……」

やよい「えへへ……たしかにそうかもですね!」

やよい「まものさんとたたかわないですむなら、それが一番いいですし!」

美希「うん!ミキもその方が楽チンだし!」





看板『本当に、このまま進むつもりッスか?引き返すなら、今の内ッスよ?』



やよい「み、美希さん、またカンバンが……」グイッ

美希「し、心配する事ないの……きっとこっちで合ってるの」

やよい「で、でも……なんだかこわいです……」

美希「大丈夫。やよいはミキが守るの!」

やよい「み、美希さん……!」

やよい「わ、わかりました!わたしも、足手まといにならないように、がんばります!」




637: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:37:11.23 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B6F

スタスタ…


真「うぅ……なんか、身体がまだビリビリしてる感じがするよ」

伊織「確かにね……」


伊織「!」ビクンッ


伊織「あ……!」

真「……伊織?どうしたの?」

伊織「………にひひっ!」

伊織「これを見なさいっ!」バリッ

真「おー!雷じゃないか!」

真「伊織、雷の忍術も使えたの?」

伊織「ううん……今、閃いたのよ」

伊織「真、あんたの雷の技を受けたおかげかもね?」

真「へへっ!お役に立てて良かったよ!」

真「……あ、だったらさ」

真「もっといろんな技を食らわせてあげようか?」

伊織「い、いらないわよ!なんで私があんたの技を受けなきゃならないのよっ!」

真「だって、技を受けて閃いたって……」

真「ボク、てっきり伊織はマゾなのかと……」

伊織「ばっ……!」

伊織「バカも休み休み言いなさいよ!なんでこの伊織ちゃんが……ま……ま……」

真「……マゾヒスト?」

伊織「そ、そう!それなのよ!?」

伊織「わ、私が……ま、マゾ……なわけ、ないじゃないっ!」カァーッ

伊織「あんたってホントデリカシーがないわねっ!」

真「わ、わかったわかった、悪かったよ」

真「うん。ボクも、伊織はどっちかっていうと……」

真「……いや間違いなく、生粋のサドだとは思うよ?」

伊織「それはそれでなんか嫌!」バシッ

真「痛った……!」

真「叩く事ないじゃないか!」

伊織「ふ、ふん!真が悪いのよ!」

真「な、なんでさ……」

伊織(あるわけないじゃない!私がマゾだなんて……)

伊織(………)

伊織(……そういえば、水遁の術を覚えた時も、今と似たような状況だった気が……)

伊織(ま、まさかね……)



638: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:42:01.32 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B6F 砲台制御室

カチカチ…

ピッピッ…ピーー!


ルゲイエ「……ふぅ」

ルゲイエ「あとは、巨大砲を再起動準備モードにセットして……」ピッ

ルゲイエ「……エブラーナの王女め、ワシの子供達になめた真似してくれおって!」

ルゲイエ「じゃが、再び巨大砲が動き出すのも時間の問題じゃ」

ルゲイエ「ドワーフ諸共、木っ端微塵にしてくれるわっ!」



ガチャガチャ…



ルゲイエ「ん?」チラ



「…………あれ?鍵が掛かってるみたいだ」

「という事は、ますますこの扉が怪しいわね」



ルゲイエ「この声、まさか……」



「よし、開けよう!」

「開けようってあんた……鍵が掛かってるのに、どうするつもり?」

「ボクに任せてよ!」



ルゲイエ「扉を開けようとしてるのか……」

ルゲイエ「ふん!無駄じゃ!この扉は、このルゲイエ様特製の超高性能防犯扉じゃからな!」



「伊織、ちょっと下がってて」

「はああああああ!」

「覇王……翔吼拳!」


ドガァァァァァァァン!



ルゲイエ「!!」




639: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:43:55.06 ID:+NYVYuO4O

真「よしっ!開いたよ!」

伊織「開いたよってあんた……壊したんじゃない……」

伊織「ま、いいけど」


スタスタ…




伊織「……あっ!」

ルゲイエ「貴様ら……!」

真「伊織、この人がさっき言ってた?」

伊織「ええ、変態科学者よ!」

ルゲイエ「だ、誰が変態科学者じゃっ!」プンスカ

伊織「あら?違ったかしら?」

伊織「なら、狂人科学者ね!」

ルゲイエ「だまれ!じゃじゃ馬王女めっ!」

ルゲイエ「今日という今日は、貴様をぐっちゃぐっちゃにしてくれるわっ!」

伊織「ふん!その言葉、そっくり返すわ!」ビシッ

伊織「この、スーパー忍者アイドル伊織ちゃんが、あんたに引導を渡してあげるから、覚悟しなさい!」

真(科学者なんて、みんな狂人みたいなものだと思うけどなぁ)

真(……っていうかこれじゃ、単なる伊織のケンカ友達じゃないか?)

真(なんか、緊張感無いなぁ……)

真(ま、一応用心しておかないとね……)



ルゲイエ「ワシの可愛い子供達に、上等キメてくれおって……!」

ルゲイエ「さらに扉まで破壊するとは……」

真「あはは、ごめんね?」

伊織「真、謝る必要なんてないわよ!」

真「あ、そっか」



ルゲイエ「ひょひょひょ………貴様らに、ワシの最高傑作を見せてやろう」




640: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:47:17.33 ID:+NYVYuO4O

ルゲイエ「スーパーアルティメットファンタスティックバイオレンスロボ、バルナバ!起動じゃ!」ポチッ


ウィーン……ガシャン!



バルナバ「………すりーぷもーど、解除」ピコン


伊織「ば、バルナバ……?」

真「伊織、このロボット知ってるの?」

伊織「え、ええ……」

伊織(でも……私の知ってるバルナバと、どこか雰囲気が違うわ……)


ガシャン…ガシャン!


バルナバ「………」

バルナバ「……………オ」


真「お……?」


バルナバ「オハヨウゴザイマス!」ギギッ


真「お、おはようございます……」ペコリ

伊織「バルナバ!私よ!伊織よ!」


バルナバ「………」ギギッ


ルゲイエ「バカめ!無駄じゃ!」

ルゲイエ「膨大な量のデータを書き込んである。あの時のデータなど、奥底に埋れておるわ!」

ルゲイエ「さあ、スーパーテリブルエキサイティングワンダーロボ、バルナバよ!あの2人をギッタンギッタンにしてしまえっ!」ポチッ

バルナバ「……戦闘もーど移行!」ピコン

バルナバ「フンガー!」ギギッ


真(さっきと名前が違うじゃないか……)

伊織「……」

真「伊織、なんだかよくわからないけど、やるしかないみたいだ……!」スッ

伊織「ダメよ真!あの子は……」

伊織「……あの子には、罪は無いもの!」

真「でも……!」


バルナバ「フンガー!」ブンッ



641: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:49:59.26 ID:+NYVYuO4O

真「伊織っ!」グイッ

伊織「あ……」ヨロッ


ドゴォン!


真「危なかったぁ……!」

真「あれは一撃でも食らったらヤバそうだな……」

伊織「バルナバっ!やめなさいっ!」

真「ちょっと伊織っ……!」グイッ


バルナバ「………」ギギッ

ルゲイエ「ひょひょひょ……!」

ルゲイエ「うまく避けた様じゃが……果たしていつまで逃げられるかのう?」ニヤリ

バルナバ「フンガー!」ギィ



真「伊織、あのロボットはボクがやるから、伊織はおじいちゃんをお願い!」

伊織「真……」

真「わかってるよ。あのロボットには罪は無いんでしょ?」

真「なんとか壊さないように動きを止めてみせるよ!」

真(……まあ、そう簡単に壊れそうもないように見えるけど)



真「さあ、来い!ロボット!」スッ


バルナバ「フンガー!」ブンッ


真「……っせい!」ブンッ


ドゴォォォォン!


ルゲイエ「な、何!?人間ごときが、バルナバのパワーと互角に渡り合うだとっ!?」

ルゲイエ「ば、バカな、そんな事が……!」


伊織「こら!変態っ!」ビシッ


ルゲイエ「むきー!科学者を付けんかっ!じゃじゃ馬王女!」


伊織「あら?じゃあ、変態って事は認めるのね?」



642: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:52:31.39 ID:+NYVYuO4O

ルゲイエ「ぐ……!」

伊織「あんたの相手は、この伊織ちゃんよ!」

ルゲイエ「ふん!貴様なんかにこのワシが倒せると思っておるのか!?」

ルゲイエ「これでもくらえっ!」ブンッ


ボフッ…モクモク…


ルゲイエ「ひょひょひょ!毒ガスを吸って、生ける屍となるがいい!」


伊織「…………はぁ」スッ

ルゲイエ「なっ!い、いつの間に後ろに!?」

伊織「遅すぎて、アクビがでるわよ!」ブンッ


ザシュッ!


ルゲイエ「ぎゃっ!」ヨロッ

ルゲイエ「き、貴様……!」

ルゲイエ「これならどうだっ!」ガシャン

ルゲイエ「特性火炎放射機っ!」


ボオオオオオ!


伊織「炎ってのはね……」

伊織「こう使うのよっ!」バッ

伊織「火遁っ!」


ゴオオオオオオオ!


ルゲイエ「うぎゃあああっ!」

ルゲイエ「な、なんじゃあの火力は……!まるでルビカンテの炎の様じゃ……!」


伊織「ちょっとあんた、やる気あるの?本気でかかって来なさいよ!」


ルゲイエ「こ、小娘が調子に乗りおって……!」

ルゲイエ「ちぃ!『あれ』を使うしかないか……」

伊織「なによ、奥の手があるんじゃない。待っててあげるから、さっさと使っちゃいなさいっ!」

ルゲイエ「ふん!後悔しても知らんぞっ!?」



643: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:54:40.69 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B7F

看板『この先には罠が仕掛けてあるッス。どうなっても知らないッスよ?』



美希「……」

やよい「……」

美希「……」

やよい「……」

美希「……」

やよい「…………ここまで来たんです」

やよい「わたしは……美希さんを信じます!」

美希「やよい……ありがとうなの!」

美希「大丈夫、ミキの勘は、結構当たるんだよ?」

やよい「はいっ!」


スタスタ…




やよい「……………あれ?」

美希「どうしたの?やよい」

やよい「あのー、そういえばわたし達って、なんのためにここにいるんでしたっけ?」

美希「…………あれ?なんのタメだったっけ?」

美希「忘れちゃったの」

美希「でも、とりあえず先に進めばわかるって思うな!」

やよい「んー……それもそうですねー」

やよい「じゃあ、はりきって行きましょーっ!」

美希「おーー!なの!」



644: 名無しさん 2014/12/12(金) 19:58:59.05 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B5F クリスタルルーム付近

美希「……」グゥゥ

やよい「美希さん、おなかすいたんですか?」

美希「うん……おにぎりを補給しなきゃ、これ以上進めないのー……」ダラダラ

やよい「じゃあ、少し早いですけど、お昼ごはんにしましょーか?」

美希「ホントっ!?」パァァ

美希「さっすがやよい、話がわかるの!」




美希「モグモグ……」

美希「んー、力がみなぎるの!」

やよい「えへへ、おいしーですね!」

やよい「でも、ちゃんとみなさんの分ものこしておかないとダメですからね?」

美希「むぅ……やよいはきびしいの」



「…………お前達」



美希「ん……?」チラ

やよい「だれですか?」



ルビカンテ「敵地に乗り込んで来て、『誰ですか?』もないものだと思うが……」

ルビカンテ「人間がこんな所で何をしている?」

ルビカンテ(この娘達……只者ではないな……)

やよい「はわわっ……なんだか真っ赤な人です……」

美希「何って……ご飯食べてるんだよ?」

ルビカンテ「あ、いや……それはわかっているのだが……」

ルビカンテ「オレの質問が悪かったか……」

ルビカンテ「なぜ、人間がこんな所にいるのだ?」

ルビカンテ「まさか、お前達……?」



ルナザウルス(……ようやく来たッスか……)

ルナザウルス(せっかく案内したのに、迷っちゃったのかとヒヤヒヤしたッス)




645: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:03:33.53 ID:+NYVYuO4O

美希「うーん……それは、ミキの方が聞きたいの」

ルビカンテ「…………は?」

美希「……ねえ、赤い人。ミキ達、なんでここにいるんだっけ?」

ルビカンテ「………」

ルビカンテ(何を言っているんだ、こいつは?)

ルビカンテ(……作戦なのか?記憶喪失なのか?)

ルビカンテ(……それとも、ただのバカなのか?)

美希「ミキね、春香達の話は退屈だからあんまり聞いてなかったの」

美希「だから、何すればいいのかわかんなくなっちゃった……」

美希「あはっ☆」

ルビカンテ(……ただのバカか)

ルビカンテ(さっきは只者ではない気配がしたのだが、気のせいか……?)



ルナザウルス(あれぇ……なんかやる気ない感じッスね〜)

ルナザウルス(これじゃ、作戦がうまくいかないッス……)



やよい「あのー……」

やよい「わたし達、みなさんとはぐれちゃったみたいで……」

ルビカンテ(そんな事はオレの知った事じゃないんだが……)

やよい「春香さん達がどこにいるか、知りませんか?」

ルビカンテ「知らん……」

ルビカンテ「というか、お前達は侵入者だ」

ルビカンテ「悪いが、排除させてもらうぞ……!」ボオッ

やよい「はわっ!もえてますっ……!」

やよい「なんだかいふりとさんみたいかなーって」

美希「まあまあ、そんなに熱くならないで、おにぎりでも食べて落ち着くの」



646: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:06:19.31 ID:+NYVYuO4O

美希「はいっ。ミキの分、あげる!」スッ

ルビカンテ「………」

ルビカンテ(……なぜこんなに余裕なんだ、こいつは?)

ルビカンテ(そんなに自分の力に自信があるのか……?)

ルビカンテ(………)グゥゥ

ルビカンテ(…………そういえば、今日はまだ何も食べてなかったな)

ルビカンテ(…………敵に施しを受けるのはシャクだが、握り飯に罪は無い、か)

ルビカンテ「………」

ルビカンテ「……仕方ない、食べてやろう」スッ

美希「あはっ☆やっぱりお腹が空いてたんだね?」

やよい「あ、お漬け物もあるんで、よかったらどうぞっ!」スッ

ルビカンテ「……もらおう」スッ

ルビカンテ「モグモグ……」

ルビカンテ「む、なかなかいけるな……」

やよい「えへ、よかったですー!」

美希「今、おにぎりは……種族の壁を越えたの!」



ルナザウルス(ちょっとちょっと〜!なんで和やかにランチしてるッスか〜!?)

ルナザウルス(待ってる身にもなって欲しいッス〜)



スタスタ…



律子「…………あら?」

貴音「あれは………」




647: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:07:59.10 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B7F

春香「たぁーっ!」ザクッ


魔物1「」


千早「……くっ」ドスッ


魔物2「」



春香「ふぅ……」

春香「なんか、魔物が増えてきた気がするね……」

千早「春香、休んでいるヒマはないわよ!」


タタタタ…


春香「ま、待って、千早ちゃん!」


タタタタ…




看板『この階段を登るッス』



千早「………上ね!」


タタタタ…


春香「はぁ、はぁ……ち、千早ちゃん、待って……!」


タタタタ…




648: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:10:40.36 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B5F

看板『さらに階段を登るッス』



千早「どれだけ登ればいいのかしら……」

春香「はぁ、はぁ……ま、また階段……?」

千早「春香、大丈夫?」

春香「あ、う、うん。大丈夫だよ!」

春香(心配されたら、『しんどい』なんて言えないよ……)

春香(……頑張らないとね!)




魔物「ウガァ!」ブンッ


春香「……あっ、千早ちゃん、危ないっ!」ガバッ


ザシュッ!


春香「うぐっ……!」ヨロッ

千早「春香っ!」ガシッ

千早「……このっ!」ブンッ


ドスッ!


魔物「」



千早「春香、しっかりして!」

春香「だ、大丈夫、だよ……」

春香「えへへ……この世界に来てから、ケガするの、慣れちゃった」ニコッ

千早「春香……」ギュッ

春香「……ケアルラ!」


シャララーン!キラキラ…


春香「ふぅ……」

千早「春香……ごめんなさい」

春香「ううん、謝らないで?」



649: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:12:33.17 ID:+NYVYuO4O

春香「私ね?この世界に来てからさ……」

春香「私って個性が無いなぁ、とか、主人公なのに目立ってないよ〜、とか、いろいろ考えてたんだけどさ……」

春香「……お父さんにね、ハルカは『ぱらでぃん』だって言われたんだけど……」

春香「こうやってみんなを守るのが、私の役割なのかなって」

千早「春香……」

春香「えへへ……私にも仕事があって良かったよ」ニコッ

千早「そうね……」ギュッ

春香「わわっ、ち、千早ちゃんっ……」ドキドキ

千早「……あまり、無理はしないでね?」

春香「千早ちゃん……」

春香「うん、肝に命じておくよ」

千早「……それから」

千早「自分の事をさりげなく『主人公』と言ってしまうのが、春香の大胆なところね」

春香「あっ、えっと、そ、それはその……」アセアセ

千早「…………さ、行きましょう」


スタスタ…


春香「ち、千早ちゃん、待って〜!」


タタタタ…



650: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:14:10.47 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B4F

春香「………あっ!」

春香「千早ちゃん、また看板があるよ!」スッ

千早「今度は何が書いてあるのかしら?」



タタタタ…



春香「…………あれ?何も書いてない……?」

千早「これは……どういう事なの?」

春香「ここ、行き止まりみたいだし、美希もやよいもいないし……」キョロキョロ

千早(まさか……)

春香「………ん?」チラ

春香「看板の下の方に、小さく何か書いてあるみたいだよ?」

千早「なんて書いてあるの?」

春香「えっとね……」




春香「………『小さい頃親に、知らない人について行っちゃダメって教わらなかったッスか?残念でした』」



千早「……」

春香「も、もしかして、罠の方だった……?」カチッ

春香「……あれ?なんか踏んじゃった」


ガラッ…


春香「わっ……!」ヨロッ

千早「な、何……?床が……!」


ガラガラ…ボロッ…


春香「く、崩れるっ……!」


ガラガラガラ…


ヒュー…


春香「わーー!落ちるぅーー!」

千早「くっ……!」



…………



……



651: 名無しさん 2014/12/12(金) 20:16:25.65 ID:+NYVYuO4O
バブイルの塔 B5F 

春香「痛たた……!」 

千早「春香、大丈夫?」スッ 

春香「あ、ありがと……」ギュッ 

春香「千早ちゃんは……怪我はない?」 

千早「ええ、なんとか」 

春香「すごいな……あんなに高いところから落ちてきたのに、ちゃんと着地できるなんて」 

千早「それは、普段のジャンプで慣れたからかもしれないわね」 

春香「ああ、なるほどねー」 

春香「それにしても……」キョロキョロ 

春香「ここ、どこだろう?」 

千早「あの看板は罠だった。そして、高槻さんと美希は見当たらない……」 

春香「……って事は、2人は看板とは逆に行ったのかな?」 

千早「そうとしか考えられないわね」 

千早「一度、下に戻った方が……」 



ニュルニュル… 


タイダリアサン「………おや?」 



春香「あっ!」 

千早「昨日の……!」 


タイダリアサン「ついてないなぁ……」 

タイダリアサン「またあなた達ですかぁ……」 


春香「昨日の様には、いきませんよっ!」チャキッ 

千早「もう、遅れは取らない!」チャキッ 


タイダリアサン「うわ……やる気満々だし……」 

652: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:37:57.67 ID:hAZEWs/9O
バブイルの塔 B5F 

タイダリアサン「……仕方ないなぁ」 

タイダリアサン「また『タイダるウェーブ』の餌食にしてあげますよ……」 


ザァァァァァ… 


春香「ま、また……!」 

春香「あれ、食らったらまずいよぉ……!」 

千早「……春香、私に捕まって!」 

春香「えっ……?」 

春香「あっ、そっか!……わかった!」ギュッ 



ザッパァァァァァァン! 



千早「………くっ!」タンッ 


フワッ… 



タイダリアサン「なるほど、空中に逃げたんですね……?」チラ 

タイダリアサン「でも……それは予想できてますけどねぇ……?」 


千早「逃げた……?」 

千早「……そんなつもりは、ないわ!」 

千早「…………春香っ!」 

春香「うんっ!」ダンッ 


タイダリアサン「………え?」 


春香「……鬼神の居りて乱るる心」チャキッ 

春香「されば人………かくも小さき者なり!」 



春香「乱命……割殺打っ!」ブンッ 



シュンッ…ドゴォ! 



タイダリアサン「うぐっ……!」 


…スタッ 


春香「………千早ちゃんっ!」クルッ 



653: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:39:35.95 ID:hAZEWs/9O

千早「……はっ!」 


ヒュンッ……ドスッ! 


タイダリアサン「ごはっ……!」 



春香「……千早ちゃん、平気?」 

千早「大丈夫よ」 



タイダリアサン「あー……痛いなもー……」 



春香「あれ、あんまり効いてないのかな……?」 


タイダリアサン「いいえ、かなーり効きましたよ、今のは……」 


千早「……」 

春香「あの、通してもらえませんか?……私達、仲間を探してるんです」 


タイダリアサン「ええ、別にいいですよ?」 

タイダリアサン「私も、仲間を探しているところでしたから……」 


春香「えっ?そ、そうだったんですか?」 


タイダリアサン「ええ……私は乗り気じゃなかったのに、やる気満々だったのは、あなた達の方でしょう?」 


千早「確かに……」 

春香「あ、あの……なんか、ごめんなさい……」ペコリ 


タイダリアサン「いいえ、いいんですよ、わかってもらえれば……」 

タイダリアサン「じゃ、私、もう行きますね〜?」 



ニュルニュル… 



春香「………」 

春香「今のって、私達が悪かったのかなぁ?」 

千早「どうかしらね……」 



654: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:40:57.12 ID:hAZEWs/9O
バブイルの塔 B5F クリスタルルーム付近 

律子「あんた達……!」 

貴音「おや……」 



やよい「あっ………!」 

やよい「律子さん!貴音さん!」 

美希「わぁ!2人とも、久しぶりなの〜!」 

ルビカンテ「む………むぃふほむぁ………!」 

ルビカンテ「………むぐっ!」 

やよい「あわてちゃダメですよ?はい、お茶、どうぞー」スッ 

ルビカンテ「ゴクゴク……」 

ルビカンテ「………すまん」 

ルビカンテ「リツコ様……見苦しいところを見せてしまいました」ペコリ 

律子「ああ、気にしないで?うちの子達と仲良くやってくれるのは、私も嬉しいから」ニコッ 

ルビカンテ「リツコ様……」 

ルビカンテ(何かが吹っ切れた様な、そんな顔をしておられる……) 

ルビカンテ(隣の女のおかげか……?)チラ 

貴音「………」ペコリ 

ルビカンテ(………こいつ、只者ではないな) 

貴音(……なかなかの手練れですね) 



律子「それにしても……2人だけ?他の子達は?」 

やよい「ここに来るとちゅうではぐれちゃって……」 

美希「みんな、バラバラになっちゃったの」 

律子「そうだったの……」 



律子「ルビカンテ、ちょっとお願いがあるんだけど……」 

ルビカンテ「………はい」 

律子「勝手な事言って申し訳ないんだけど……」 

律子「私………降りる事にしたわ」 

律子「あとは、あなたに任せる」 


ルビカンテ「………」 



655: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:45:40.71 ID:hAZEWs/9O

律子「なんとなくあなたなら、悪い様にはしないって気がするの」 

律子「あとの事、よろしくお願いします」ペコリ 

ルビカンテ「………」 



ルビカンテ「………ならば」 

ルビカンテ「オレの願いも聞き入れてもらいたい」 

律子「……そうね。それが筋ってものよね」 

律子「わかったわ」 

律子「………で、あなたの願いって、なんなの?」 

ルビカンテ「オレは………あなたと戦ってみたい」 

律子「!」 

貴音「………」 

美希「へー、律子…さん、モテモテなの」 

やよい「あの、ケンカはダメですよ……?」 

律子「やよい、これはケンカじゃないわ」 

やよい「えっ?で、でも……」 

律子「そうねぇ……ちょっと例えが悪いかもしれないけど……落とし前、みたいなものかしら?」 

やよい「おとこまえ、ですか……?」キョトン 

美希「うーん……そこまでカッコいいとは思わないの」 

律子「もうっ!男前じゃなくて落とし前っ!」 

ルビカンテ「オレはそんなつもりはない」 

ルビカンテ「ただ、純粋に……あなたの強さに惚れているだけだ」 

美希「わぁ……!愛のコクハクなの!赤い人、結構大胆なんだね〜?」ワクワク 

やよい「はわわっ……///」モジモジ 

貴音「ふふ、愛されているのですね、律子嬢」 

律子「あ、あのね……どうしてそう曲解するのよ、あんた達は……」 

律子「いいわよ。やりましょう」 

律子「……ただし、手加減はできないかもしれないわよ?」 

ルビカンテ「もちろん、その方がオレにとっても好都合だ」 

貴音(果たし合い、ですか……) 

貴音(あの殿方と律子嬢では、おそらく律子嬢が格上……) 

貴音(それを承知の上だとしたら…………なかなか厄介な相手となるでしょう) 

貴音(………) 

貴音(ふふ……各々の名誉を賭けた果たし合いに、この様な分析は無粋でしたね) 




ルナザウルス(……なんか、妙な事になってきたッスね〜) 

ルナザウルス(リツコさんが旧四天王さんを倒してくれれば、あとはなんとかなりそうッス) 

ルナザウルス(2人が戦ってるスキに、クリスタルはいただくッス!)コソコソ 



656: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:50:17.28 ID:hAZEWs/9O
貴音「……!」ピクッ 

美希「……どうしたの?貴音」 

貴音「……わたくし、少し用事を思い出しました」 

貴音「……すぐに戻ります!」 


タタタタ… 


やよい「……行っちゃいましたねー」 

美希「ん〜……なんだか貴音の様子がおかしかった気がするの……」 

やよい「たしかに、ちょっとあせってた気もしますねー」 

美希「これは、後を追うしかないの!」 

やよい「でも、律子さんが……」チラ 

律子「私の事なら、心配いらないわ!」 

律子「貴音のおかげで、今なら全力を出せそうな気がする……」 

律子「美希、やよい……貴音を追って!」 

美希「わかったの!」 

やよい「わかりましたっ!」 


タタタタ… 



律子「………さあ、これで気兼ねする事もないでしょ?」 

律子「ルビカンテ、かかって来なさい!」 

ルビカンテ「お気遣い、感謝します」 

ルビカンテ「………ではっ!」ダンッ 

ルビカンテ「はっ!」ブンッ 


ガキィン! 


律子「く……っ!」ギリッ 

律子「やぁ!」グイッ 


スタッ 


ルビカンテ「………少し、鈍りましたか……?」 

律子「ちょっといろいろあって、自分の身体なのにブランクがあるのよね」 

律子「でも、そんな事は気にしないで、全力で来なさい!」 

ルビカンテ「わかりました」 

ルビカンテ「……ファイガ!」ボオッ 


律子「……ファイガ!」ボオッ 



ゴオオオオオオオオオ!! 



ドゴォォォォォォォォォン!! 


657: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:54:34.91 ID:hAZEWs/9O
バブイルの塔 B5F クリスタルルーム 

ルナザウルス「ひい、ふう、みい……」 

ルナザウルス「うん、間違いなく7つあるッス!」キラーン 

小鳥(でかしたわ、ルナ君!これであとひとつ……) 

ルナザウルス「最後のひとつは、どうするッスか?」 

小鳥(もちろん、横取りよ?) 

ルナザウルス「あ、やっぱり……」 

小鳥(元より、最後のクリスタルの鍵は、律子さんが持ってるのよねー) 

小鳥(だから、今の私達は最後のクリスタルに手が出せないのよ) 

ルナザウルス「まあ、なんとかやってみるッスよ」 

ルナザウルス「みんなも、そのうち到着すると思うし……」 



…バタン! 



貴音「ようやく見つけました……」 

貴音「……さあ、年貢の収め時ですよ!」ビシッ 

ルナザウルス「げげっ!?」 

ルナザウルス「……勘がいいッスねぇ、も〜!」 

ルナザウルス「執念深いというか、なんというか……」 

ルナザウルス「仕方ないなー……」 

ルナザウルス「コトリ様の四天王のひとり、『暴食』のルナザウルス、ちょっとだけ後悔させてあげるッス!」 

貴音「待った!」 

ルナザウルス「……なんスか?」 

貴音「暴食、と仰いましたが……」 

貴音「あなたのその骨だらけの身体のどこに、食べ物が入るというのです?」 

貴音「明らかに無理があると思うのですが……」 

ルナザウルス「それは………」 

ルナザウルス「……………企業秘密ッス!」 

貴音「……面妖な!」 



658: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:55:50.89 ID:hAZEWs/9O

ルナザウルス「行くッスよ!」 

ルナザウルス「バイオ!」バッ 


ブニューーン! 


貴音「ぶりざど!」 


コォォォォォ…シャキーン! 


ルナザウルス「下位魔法で相殺されちゃうッスか……」 

ルナザウルス「さすがは『タカネ様』、魔力のケタが段違いッス!」 

ルナザウルス「なら、これはどうッスか?」ブンッ 


貴音「く……!」ヒョイッ 


ルナザウルス「あー、やっぱり……」 

ルナザウルス「あなたは、肉弾戦は得意じゃないみたいッスね?」 

貴音(確かに……) 

ルナザウルス「それじゃあ自分に勝てないッスよ?」 

貴音「………」 

貴音「やってみなければ、わかりません!」 

貴音「はっ!」タンッ 


貴音「ぶりざら!」バッ 


コォォォォ… 


ルナザウルス「リフレク!」 


ブゥーーン! 


貴音「!」 

貴音「魔法が跳ね返って……!」 


コォォォォォォ…パキーン! 




659: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:58:27.85 ID:hAZEWs/9O

貴音「ぐっ……!」ヨロッ 


ルナザウルス「……どうッスか?自分の魔力をモロに食らった気分は?」 

ルナザウルス「あなたの魔力はチート過ぎるッスから、結構ダメージあったと思うッスけど」 

ルナザウルス「魔法を使えないんじゃ、あなたに勝ち目はないッスね〜?」 


貴音(魔法を跳ね返す魔法、ですか……) 

貴音(確かに、わたくしの主力は魔法攻撃。この状況は分が悪いかもしれません) 

貴音(ふむ………) 

貴音(少々、危険ですが………あの物の怪は、やたらと隙が多い……) 

貴音(ここは、行くべきでしょう) 



貴音「ならば、その光の壁を消し去るのみ!」 

貴音「でぃすぺる!」 


ブゥゥン……パシュンッ 


ルナザウルス「……まあ、それが妥当だと思うッスよ」 


シュンッ… 


ルナザウルス「でも、またリフレクを……モゴッ!?」 

ルナザウルス「!?」 

貴音「……口を塞げば、あなたも魔法は使えないでしょう?」ガシッ 

貴音「そして、この至近距離で魔法を使ったら、果たしてどうなるでしょうか?」ニヤリ 

ルナザウルス「モガー、モガーッ!」ジタバタ 

貴音「……あなたの様な屍には、火葬がお似合いです!」 

貴音「ふぁいが!」 


ゴオオオオオオオオオ!! 


ルナザウルス「うぎゃああああああっ!!」 

貴音「く……!」 

貴音(少々、無茶が過ぎましたか……!)ズサッ 



660: 名無しさん 2014/12/13(土) 14:59:47.58 ID:hAZEWs/9O

貴音「………」 

ルナザウルス「はぁ、はぁ……!」 

ルナザウルス「い、今のは……効いたッス……!」 

貴音「さあ、観念して月へ還りなさい!」 

貴音「ここは、あなたの居るべき場所ではないのです!」 

ルナザウルス「ざ、残念ッスけど、それはできないッスね……!」 



…バタン! 



美希「貴音っ!」 

やよい「貴音さんっ!」 


貴音「美希、やよい……!」 


美希「助太刀するの!」 

やよい「まものさん、わるいことしちゃ、めっ!です!」 


貴音「ありがとうございます。しかし、この者は、わたくしが……」 


ルナザウルス「あはは!カッコ付けるッスね〜!」 

ルナザウルス「なら、こっちも仲間を呼ぶッス!」 

ルナザウルス「プーちゃん!」 



フワフワ〜… 



661: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:04:02.00 ID:hAZEWs/9O

プレイグ「よかったぁ……ぼく、出番無いかと思っちゃった……」 



貴音「これは……まこと、面妖な……!」 

美希「目玉のお化け!」 

やよい「はわわ、いろんなまものさんがいるんですねー……」 



ルナザウルス「プーちゃん、早速で悪いッスけど……」 

ルナザウルス「あの銀髪、殺しちゃってくださいッス!」スッ 

ルナザウルス(タカネさんさえいなくなれば、あとは楽勝っぽいッスからね〜) 

プレイグ「うん、わかったよ」 



貴音「む……?」 

やよい「こ、ころすなんて……そんな事、ダメですっ!」バッ 

美希「んー……そんなにあっさり貴音がやられるとは思えないの」 

貴音(わたくしを殺す……?一体どうやって……?) 

貴音(一応、用心しておいた方が良いですね……) 



プレイグ「あなたに恨みはないんですけど………ごめんなさい!」 

プレイグ「死の宣告!」 



ズゥゥゥゥゥン… 



美希「……ん?何かしたの?」 

やよい「よくわからないですねー」 

やよい「…………あれ?」チラ 

やよい「貴音さん……」 




662: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:18:54.09 ID:hAZEWs/9O

やよい「貴音さんの頭の上に、10って、数字が……」 



10貴音「はて?数字……ですか?」 



美希「あ、ホントなの!」 

9貴音「今のは一体、どの様な攻撃なのでしょうか……?」 

やよい「あっ!数字が、へりました……」 

9貴音「数字が、減った……?」 



ルナザウルス「残念ですけど、あとちょっとでお別れッスね〜?」 

ルナザウルス「……タカネ様?」 



8貴音(数字……減る……お別れ……………) 

8貴音(死の、宣告………) 

7貴音(まさかっ………!) 

7貴音(……こ、この様な身も蓋もない攻撃があるとは……っ!)ガクッ 

やよい「た、貴音さんっ……!?」オロオロ 

美希(なんなの……?なんだか、とっても胸騒ぎがするの……!) 

6貴音(響…………申し訳ありませんっ……!)グッ 

6貴音「これが、わたくしの命運だというならば……」 

6貴音「……今わたくしにできる事をするのみです!」バッ 


ルナザウルス「泣かせるッスね〜」 

プレイグ「わわ、怒っちゃったかなぁ………」 



5貴音「四条貴音、最大最後の魔法………とくと味わいなさいっ!」ゴゴゴゴ 



5貴音「……めてお!」 



ヒュー…ヒュー…ヒュー… 

ヒュー……ヒュー……ヒュー… 



ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!! 



ルナザウルス「うぎゃあーー!」 

プレイグ「うわあぁぁぁ!」 





663: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:23:07.42 ID:hAZEWs/9O

4貴音「はぁ、はぁ……!」 



やよい「た、貴音さんっ!だ、だいじょーぶですかっ!?」ガシッ 

美希「貴音っ!」ガシッ 

3貴音「美希……やよい……わたくしは、どうやらここまでの様です……」 

やよい「えっ?な、なんでそんな事言うんですかっ!?」 

美希「貴音っ、弱気になっちゃダメなのっ!」ユサユサ 

2貴音「いいえ、おそらくほんの数秒後に……決して逃れる事のできない運命が、わたくしを待っているでしょう……」 

やよい「た、貴音さんっ!」ギュッ 

美希「そんな……絶対そんな事ないって、思うな!」 

1貴音「2人とも……後の事は、頼みましたよ……?」ニコッ 




0貴音「………」ガクッ 




美希「た……か、ね……?」 

やよい「貴音さんっ!起きてくださいっ!」グスッ 

やよい「こ、こんなの、いやですよぅ……!」ギュッ 

やよい「うぅぅ……うわぁぁぁぁん!」ポロポロ 

美希「嘘……!嘘なの……!こんなのって、ないの……っ!」ギュッ 




664: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:26:13.60 ID:hAZEWs/9O

ルナザウルス「残念ッスけど、事実ッス!」 

ルナザウルス「『タカネ様』は今、『死にました』!」 

プレイグ「ごめんね……ぼくもこんな事したくなかったんだけど……」 

ルナザウルス「さっきのメテオ、かな〜り効いたッスけど……」 

ルナザウルス「あなた達2人は……あんまり強くなさそうッスね〜?」 

ルナザウルス「ささっとやっつけちゃうッス!」 



美希「………」ギュッ 

やよい「うぅぅううっ!グスッ……ひぐっ!」ポロポロ 


ルナザウルス「さ……あなた達も、タカネ様の後を追うッス!」 






美希「……………………………ヤ、なの」ポワ… 






ルナザウルス「………ん?」 



美希「こんなの………絶対…………!」 

美希「……やっ!なのっ!!」 



パァァーー! 



ルナザウルス「うわっ!まぶしっ!」 

プレイグ「な、何……!?」 


やよい「グスッ……み、美希さん……?」 



665: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:30:05.76 ID:hAZEWs/9O









「生命を司る精霊よ………」 



「失われゆく魂に……今一度、輝きを!」 



「…………アレイズ!」ナノ 



キラーン……パァァァ! 



貴音「………」 

貴音「………」ドクンッ 

やよい「はわっ!た、貴音さんっ!」ギュッ 



「やよい……貴音はもうへーきなの……」 



やよい「へ?」 

やよい「み、美希さん……なんですか……?」チラ 



「うん。そうだよ……?」 



やよい「なんで空をとんでるんですか……?」 

やよい「それに、なんだか髪が……」 








666: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:46:37.08 ID:hAZEWs/9O


覚醒美希「うん。ミキもよくわかんないけど…………髪の毛、短くなっちゃったの」フワフワ 

覚醒美希「あーあ……ハニーが褒めてくれた髪だったのになぁ……」 



ルナザウルス「……誰ッスかあんた?」 

ルナザウルス「邪魔するなら、容赦しないッス!」 

ルナザウルス「バイオ!」 


ブニューーン! 


覚醒美希「………」チラ 

覚醒美希「……シェル」スッ 


シュパッ… 


ルナザウルス「え?か、かき消された……!?」 


覚醒美希「やよい……貴音をよろしくなの」 


やよい「は、はい!わかりましたっ!」ギュッ 

貴音「………」 

やよい「あ、あのっ!美希さん?は、どうするんですか?」 

覚醒美希「心配しないでいーよ?」 

覚醒美希「……全部、ミキに任せて欲しいの」ニコッ 

やよい「美希さんっ……!」 



覚醒美希「ミキ、ちょっと怒ったの……」チラ 




667: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:51:39.39 ID:hAZEWs/9O

覚醒美希「ミキの大切な友達を傷つける人達なんて……!」 

覚醒美希「……消えてなくなっちゃえばいいって、思うなっ!」ゴゴゴゴ… 



プレイグ「わわっ!す、すごい魔力……!」 

ルナザウルス「そ、そんな……ザコだと思ってたのに……!」 






ーーー虚栄の闇を払い、真実なる姿、現せーーー 




ーーー……………あるがままに!ーーー 





ーーー………………アルテマッ!ーーー 




ルナザウルス「ちょ、ま……!?」 

プレイグ「ひえぇ……!」 



スゥゥゥゥ… 



ゴゴゴゴゴゴ… 



ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ… 



ドゴォォォォォォォォォン!! 




668: 名無しさん 2014/12/13(土) 15:58:40.28 ID:hAZEWs/9O

ドサッ… 



やよい「み、美希さんっ!」 

やよい「だ、だいじょーぶですかっ!?」ギュッ 

美希「……zzz」 

やよい「あ、ねてるんですね……」 


サラッ… 


やよい「……あれ?美希さんの髪が……」 

やよい「また長くなってます……」 

やよい(……さっきのは、なんだったんでしょーか……?) 

やよい(短くなっちゃったと思ったんですけど……) 

やよい(見まちがい、かな……?) 




貴音「………やよい……?」ムクッ 


やよい「あっ、貴音さん!」 

やよい「よ、よかったぁ……!」ウルッ 

やよい「わ、わたしっ……た、貴音さんっ……グスッ……が……ひぐっ!」ポロポロ 

貴音「心配かけてしまいましたね……」ナデナデ 

やよい「うぅぅ……!」ギュッ 

貴音(わたくしは、死んだはずでは……?) 

貴音(なぜ生きているのでしょうか……?) 

貴音(……一体、何が……?) 



貴音「やよい、あの物の怪達は……?」 

やよい「グスッ……あ、えっと!」ゴシゴシ 

やよい「たぶん、美希さんがやっつけてくれましたよ?」 

貴音「多分……?」 

やよい「はい……たぶんあれは、美希さん……だったと思います」 

貴音(……記憶が混乱している?) 

貴音(一部始終を見ていたはずのやよいがこれでは、ますますわかりませんね……) 

貴音(……ともあれ、物の怪達の気配は近くには無い様です) 

貴音「やよい、律子嬢の元へ戻りましょう」 

やよい「あ、はーい。わかりましたー!」 

美希「……はにぃ……」ムニャ 



670: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:45:45.32 ID:tENnA20pO
飛空艇 エンタープライズ 

響「……………で、あんなとこに隠れてたのか」 



店主「い、いや、隠れてたというか……」 

店主「まさか、ヒビキの船だとは思わなくてだな……」 

ものまね士「もうっ!店主さんのせいですよっ!?」 

店主「うぐ……!」 

店主「まあ、全面的にオレが悪いよな……すまん……」ペコリ 

店主「……でも、ものまね士だってノリノリじゃなかったか?」 

ものまね士「そ、それは……!」 

ものまね士「……店主さんが喜んでたから、私も嬉しくなっちゃって、つい……」ボソボソ 

店主「……え?なんだって?」 

ものまね士「な、なんでもないですっ!」プイッ 

店主「なんだよ、気になるだろ?」 

ものまね士「なんでもないですってば!」 



響「………」 

響「はいはい、ケンカはそこまでだぞ!」 

店主・ものまね士「はい、すみませんでした……」 

響「2人がらぶらぶなのは、充分伝わったさー」 

店主・ものまね士「そ、そんな事っ……!!」 

響「息もピッタリなんだなー……」 

響「あのね?自分は別に、怒りたいわけじゃないんだ」 

響「もう引き返せないぞ?って言いたかっただけで……」 

店主「引き返せないって……」 

ものまね士「ち、ちなみに、今はどのあたりを飛んでるんですか?」 

響「どこって……」チラ 



響「………地底だけど?」 



671: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:49:37.27 ID:tENnA20pO

店主・ものまね士「ち、地底ーー!?」 



店主「………って、どこだ?」 

ものまね士「店主さん、知らないで驚いたんですか……」 

響「地底は地底だぞ。地面の下にある世界!」 

店主「へぇ、地面の下にも世界があるのかぁ」 

ものまね士「……それで、ヒビキさんはその地底に何しに来たんですか?」 

響「うん。春香達を迎えに行くところなんだ!」 

ものまね士「ハルカ様達も来ているんですね」 

響「うん!だから、悪いけどもう戻れないからね?」 

ものまね士「はい、わかりました……」 

ものまね士「仕方ないですよね、店主さん……?」チラ 

店主「はぁぁぁ……店、どうしよう……」ズーン 

響「ひと段落したら送ってあげるから、そんなに落ち込まないでよ……」 

店主「ああ、悪い……そうだよな」 

店主「ま、飛空艇に乗る機会なんて一生に一度あるかないかだもんな!」 

店主「楽しむとするか!」 

響「……店主って、意外と切り替えが早いんだな」ヒソヒソ 

ものまね士「……ですねぇ」ヒソヒソ 



響「………ん?」チラ 


響「おー!なんか城が見えてきたぞー!」 

店主「ホントだ……」 

ものまね士「……あれ?」 

ものまね士「お城の近くに、飛空艇が停まってるみたいですね?」 

響「そーみたいだなー」 




672: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:51:52.90 ID:tENnA20pO

ものまね士「ところでヒビキさん、ハルカ様達はどこにいるんですか?」 

響「さあなー」 

ものまね士「さあなーって……それで大丈夫なんですか?」 

響「なんくるないさー!自分、また春香達と合流するって、約束したからな!」 

響「エン太郎がきっと導いてくれると思うんだ!」 

ものまね士「えんたろう……?」 

響「この子の名前なんだ!」ナデナデ 

ものまね士「そ、そうなんですか……」 

ものまね士「い、いい名前ですね……」 

響「とりあえず、あのお城に降りてみよう!」 

店主「よしきた!」 

店主「野郎共ー!着陸の準備だー!」 



シーーン… 




響「いや……ここには自分達3人しかいないからね?」 

店主「あ、そ、そうなのか……」カァァ 

ものまね士「じゃあ、ヒビキさんひとりで全部やってるんですか?」 

響「まあね!自分……」 

響「………」 

響「……なら、これくらい余裕だもんね!」 

店主「あのさ……この船に乗ってる間は、オレも何か手伝わせてくれよ」 

店主「ボーっとしてるのは、なんか性に合わなくてな……」 

ものまね士「私も、ぜひお手伝いさせてください!」 

響「えへへ……2人とも、ありがとなっ!」 



響「よーし、着陸するぞー!」グイッ 




673: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:53:18.77 ID:tENnA20pO
ドワーフ城 

響「うーん、どうしようかな?」キョロキョロ 

響「こういう時は、やっぱり王様に話した方がいいのかな?」 

ものまね士「それがいいかもしれませんね」 

ものまね士「それにしても、地底の人って、みんな肌が黒いんですねぇ……」 

店主「そうだなぁ」 

響「うん。なんだか他人の気がしないぞー」 

響「あ、あの人に、王様の事を聞いてみよっと」 


タタタタ… 


響「はいさ〜い……じゃなかった」 

響「らりほ〜!ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」 



「は〜い?私で良ければ……」 



響「………って」 



響「あ……あずささんっ!?」 



あずさ「あら〜?響ちゃん、久しぶりね〜?」 

あずさ「元気そうで良かったわ〜」 

響「うぅ……!」ダキッ 

あずさ「ひ、響ちゃん……?」 

響「良かった……!」ギュッ 

響「あずささんが生きてて、良かったよぉ〜!」グスッ 

あずさ「………」ナデナデ 

あずさ「ごめんなさいね、心配かけちゃったみたいで……」 

響「グスッ……ひぐっ……!」ポロポロ 



ものまね士「あの綺麗な女性って、確か……」 

店主「ああ、ウチに来た事あったな……」 

店主「あの時は寝たきりだったけど、どうやら良くなったみたいだなぁ」 



674: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:55:37.46 ID:tENnA20pO

響「グスッ……」 

響「ごめんね、あずささん……いきなり飛びついちゃったりして……」ゴシゴシ 

あずさ「気にしないで?私も嬉しかったから」 

響「えへへ……///」 

あずさ「うふふ……」 



あずさ「ところで響ちゃん、そちらの方達は……?」 

響「あ……」 

響「紹介するね!この人は、カイポの村の宿屋の、店主!」 

店主「よろしくな!」 

店主(間近で見ると、やっぱすごい美人だなぁ……) 

響「……で、こっちが、バロンのものまね士!」 

ものまね士「よろしくお願いしますね」ペコリ 

ものまね士(……っていうか、みんなもう忘れてると思うけど……) 

ものまね士(私、本当は白魔道士なんですけどね……) 

ものまね士(まあ、今さらですけど) 

あずさ「うふふ、三浦あずさと申します。響ちゃん共々、よろしくお願いします〜」ペコリ 

ものまね士(このアズサって人……仕草がいちいち色っぽいんですけど……) 

ものまね士(スタイルも顔も一流……) 

ものまね士(うーん……私もあやかりたいなぁ……) 



響「……で、あずささん」 

響「こんなところで何してたの?」 

響(だいたい予想はつくけどね……) 

あずさ「ああ、それが……」 

あずさ「ちょっと、みんなとはぐれちゃって……」モジモジ 

響(……やっぱりか) 

店主(うーむ……色っぽい……) 




675: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:57:21.57 ID:tENnA20pO

響「じゃあ、まずはみんなを見つけないとね!」 

あずさ「ごめんなさいね?迷惑かけてしまって……」 

響「そんな事ないさー!」 

響「……プロデューサーとかも、来てるんでしょ?」 

あずさ「そうね〜。あと、亜美ちゃんとユキコちゃんと一緒に来たのだけど……」 

響「へぇ、亜美とゆき……こ?」 

響(聞き間違いかな?雪歩の事だよね、きっと) 

響「よーし、じゃあ行こう!」 

あずさ「そうね〜」 


スタスタ… 






ユキコ「あっ……」 

ユキコ「あ、アズサさん……」 

あずさ「あら、良かったわ〜」 

あずさ「ユキコちゃんを見つけられて」 

響「雪歩ー!久しぶりー!」 

店主「ああ、ユキホかぁ。久しぶりだなぁ」 

ものまね士「 ユキホ様、相変わらずみたいですねぇ」 

ユキコ「え、えっと、そのぅ……」 



ユキコ「ど、どちら様でしょうか……?」 



響「えっ?」 

響「ゆ、雪歩……?」 

店主「ありゃ、忘れちゃったのか……」 

ものまね士「で、でも……」 

ものまね士「私達の事は仕方ないとしても、ヒビキさんの事まで忘れているなんて、ちょっとおかしくないですかねぇ?」 



676: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:58:57.10 ID:tENnA20pO

あずさ「あ、響ちゃん、この子はね……」 



亜美「あっれ〜?ひびきんじゃん!」 

亜美「なんでこんなところにいるのさ?」 

P「響か?どうしてここに?」 



響「亜美!プロデューサー……は、べろちょろになっちゃったのか……」 

響「聞いてよ!雪歩がひどいんだぞ!」 

響「自分の事、知らないふりするんだ!」 

響「いくらなんでも、ちょっとへこむぞ……」 

あずさ「あ、あのね?だからこの子は……」 

ユキコ「うぅ……す、すみません……」 

店主「なんか、様子がおかしくなってきたな」 

ものまね士「そうですね……」 

亜美「あ〜……うん。これは……いろいろちかたないね〜」 

P「ふむ……」 

P「……よし、一旦飛空艇に戻ろうか」 

P「ここじゃ、ちょっと説明しにくいからな」 

響「ん……」 

響「……なんだかよくわかんないけど、わかったぞー」 



677: 名無しさん 2014/12/14(日) 20:59:54.25 ID:tENnA20pO
飛空艇 フタミ号 

P「………と、いうわけで」 

ユキコ「うぅ……」 

亜美「こちらは、ゆきぴょんの双子の妹の……」 

響「えっ?双子!?」 

真美「ややこしくすなっ!」スパーン 

亜美「おお〜!我が姉ながら、ナイスツッコミ!」 

真美「当たり前っしょ〜!」 

雪歩「あ、あの、2人とも……」 

雪歩「お話が先に進まないよぅ……」 

亜美「うむ、すまぬ……」 

真美「かたじけない……」 

トロア「ふぅ……まったくもって、息の合った双子ですね……」 

あずさ「うふふ、本当ですね〜」 

店主「妙にテンション高い子供だなぁ」 

ものまね士「元気ですねぇ」 

亜美「……ちょっとおっちゃん!」 

店主「お、おっちゃんって、オレの事か……?」 

亜美「他に誰がいるってのさ!」 

亜美「亜美、これでもオ・ト・ナのレディなんだからねっ!」 

亜美「子供扱いしたら、怒るかんねっ!」プンスカ 

店主「そ、それはすまなかったな……」 

店主「……で、あんたはいくつなんだ?」 

亜美「え、えっと〜……………25?」 

真美「ムリあるやろ〜(棒)」スパーン 


亜美・真美「ありがとうございました〜」ペコリ 


雪歩「えっ?えっ?」 

P「……こらこら、勝手にしめるな」 

響「なんなんだこのノリは……」 



678: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:06:47.09 ID:tENnA20pO

響「ええっ!?ま、ま、マコトの奥さんっ!?」 

ユキコ「は、はい。なんか、すみません……」オドオド 

響「真、ついに男になっちゃったのかなぁ……?」 

P「おいおい、そんな事は………」 

P「……ないよな?」チラ 

亜美「ない………よな?」チラ 

真美「ない………よな?」チラ 

雪歩「えっ?そ、そのぅ……」 

雪歩「ないと思いますけど……確かめてみないと、わからないですぅ………///」ドキドキ 

あずさ「ゆ、雪歩ちゃん、確かめるだなんてそんな………///」 

トロア(私は何も聞こえない……私は何も聞こえない……) 

ユキコ「い、いくらユキホさんでも、それはダメですぅ!」 

雪歩「ゆ、ユキコさん、(半分は)冗談だよぅ……!」 

店主「………いや、マコトは普通に女だったぞ?」 



全員「…………えっ?」クルッ 



店主「あ、あれ?オレ、なんかまずい事言ったか……?」 

雪歩「なんで……」ゴゴゴゴ… 

ユキコ「あなたが……」ゴゴゴゴ… 

ものまね士「知っているんですか……?」ゴゴゴゴ… 

店主「あ、えーと……それは……だな……」 

店主「……っていうかお前ら、目が恐いよ!」 

3人「問答無用(ですぅ)っ」ダッ 

店主「ちょ、まっ……暴力反対〜!」 

亜美「お?修羅場か?いいぞ〜もっとやれ〜!」 

あずさ「あらあら〜、なんだか楽しそうね〜?」 

トロア(私は、とんでもない船に乗っているんじゃなかろうか……) 

真美「……かくしてフタミ号は、今日も平和なのであった……ズズッ」 

真美「お茶がうまいですなぁ……」ホッコリ 

P(ああもう……めちゃくちゃだ……) 

P(…………ま、たまにはいいか) 




679: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:09:18.15 ID:tENnA20pO

P「………ま、そういうわけで」チラ 

店主「じ、地獄を見た……」ボロッ 

雪歩「自業自得ですぅ!」 

ユキコ「ですぅ!」 

ものまね士「ふん!見損ないましたっ!」 

亜美「こんだけ女がいると……」 

真美「男の人は、肩身が狭いよね〜」 

P(…………御愁傷様) 



響「え、えっと……」 

響「その、『バブイルの塔』ってところに春香達がいるんだな?」 

P「そうだな。ドワーフ城にいなかったから、もう向かったはずだ」 

P「響、ひとりで大丈夫か?」 

響「なんくるないさー!ここまでだって、ひとりでやってきたからなっ!」 

P「………」 

P「俺達は他にやる事があるから、一緒には行けないが……」 

P「俺達一人ひとりの心は、いつだってみんなと共にある!」 

響「ワン・フォー・オール……でしょ?」 

P「ああ、そうだ!」 

響「自分、頑張るぞ!」 





響「じゃあね〜!みんな、またな〜!」 

ものまね士「なんだか賑やかな人達でしたねぇ」 

店主「う、うん……」 

店主(女って………恐い) 

響「……さ、自分達も出発しよう!」 

ものまね士「はいっ!」 

店主「よし、気持ちを切り替えるか!」 



680: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:22:33.61 ID:tENnA20pO
バブイルの塔 B6F 巨大砲制御室 

真「ふっ!はっ!とりゃ!」 


ドゴッ!バキッ!ドガッ! 


バルナバ「………」 

バルナバ「フンガー!」ブンッ 


真「ぐっ……!」ガシッ 


クルン…スタッ 


真「効いてないか……そりゃ、ロボットに痛覚なんてないよね……」 

真(動きが遅いのが、救いかなぁ?) 

真(攻撃までに、妙な隙もあるし……) 

真「よし!」ググッ 

真「飛燕、疾風脚!」 


ヒュンッ…ドゴォ! 


バルナバ「………」 


真「ここだっ!」 

真「幻影脚っ!」 


ダダダダダダダダダ… 


真「っせい!」ドゴォ! 


スタッ 


バルナバ「………」ギィ 


真「ははっ、タフだなぁ……」 

真(ロボットって、機械だよね……?) 

真(って事は……) 


バルナバ「フンガー!」ブンッ 


真「はっ!」タンッ 


真「雷煌拳!」 


ズガガガガガガガッ! 


バルナバ「………!」ビリビリ 


真「おっ?効いた?」 



681: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:24:17.78 ID:tENnA20pO

バルナバ「………」 

バルナバ「フンガー!」ブンッ 


ドゴォ! 


真「がはっ……!」ヨロッ 

真「か、雷も効かないのか……」 


バルナバ「………」プスンッ 

バルナバ「………」ギギッ 

バルナバ「フンガー!」ブンッ 


真「……おっと!」ダッ 


スタッ 


真「………」 

真(今、ちょっと動きに違和感がなかった……?) 

真(雷煌拳が効いたのかな……) 

真(でも、あんまりやりすぎて壊しちゃったら、伊織が悲しむから……) 

真(うまく、調節しないとね!) 



バルナバ「………」 


真「よしっ!」グッ 

真「………かかって来いっ、ロボット!」スッ 



バルナバ「フンガー!」 



682: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:27:11.39 ID:tENnA20pO

ルゲイエ「ふひひ……!」 

ルゲイエ「……パワーアップじゃっ!」スッ 


プスッ… 


ルゲイエ「おぅふ……!」ドクンッ 

ルゲイエ「き、キたっ………!」ビクンビクン 



伊織「気持ち悪っ!……何やってんのよ、あいつ……!」 

伊織(注射器で何か注入したみたいね……) 

伊織(……ドーピング?) 

伊織(ううん、そんな生易しいものじゃない気がするわ……) 

伊織(なんか、骨格まで変わっちゃってるもの……!) 



「ふーー……」 



ルゲイエボーグ「待たせたのう……!」 

ルゲイエボーグ「自身すらも改造できる天才科学者、ルゲイエボーグ様が相手じゃ!」 


伊織「ただ見た目がさらに気持ち悪くなっただけじゃない!」 

伊織「手裏剣っ!」スッ 


ヒュンッ…ザクッ! 


ルゲイエボーグ「………何かしたか?」 


伊織「ちっ……!」 

伊織「ずいぶん硬くなったみたいね……」 


ルゲイエボーグ「ひょひょひょ……!そんな攻撃、効かぬわ!」シャキィン! 

ルゲイエボーグ「今度はこちらの番じゃっ!」ブンッ 


伊織「つ、爪が、伸びた……!?」 

伊織「……はっ!」クルンッ 


スタッ 




683: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:31:57.73 ID:tENnA20pO

伊織「身体は丈夫になったみたいだけど、動きは相変わらずノロマみたいね?」 

伊織「……そんなんじゃ、スーパー忍者アイドル伊織ちゃんの動きは捉えられないわよっ!」 


…ポタッ 


ルゲイエボーグ「……おや?血が出てるぞ、小娘」 

ルゲイエボーグ「ひょ!完全に避けきれなかった様じゃの……?」 


伊織「ふ、ふん!こんなのかすり傷じゃない!」ペロッ 

伊織「まさか、こんなので勝ったつもりじゃないでしょうね?」チャキッ 


ルゲイエボーグ(……バカめ!そのかすり傷が致命的なんじゃよ!) 


伊織「……やあっ!」ブンッ 


ルゲイエボーグ「ちっ……!」ガキィン! 


伊織「このっ……!」ギリッ 

伊織(ジジイの割には、なかなかやるわね……!) 

伊織(さっさとこいつを倒して、バルナバを元に戻さないと……!) 


…ガクン 


伊織「あっ……?」ヨロッ 


ルゲイエボーグ「ひょっ!」ブンッ 


ザシュッ! 


伊織「うぐ……!」フラッ 


ルゲイエボーグ「それっ!」 


ドゴォ!…ドサッ 


伊織「……っ……!」ガクガク 

伊織(な、何……?急に、力が抜けて……) 


ルゲイエボーグ「……力が入らなくなるのに気づいたか?」 

ルゲイエボーグ「実は、ワシのこの爪には、強力な神経毒を塗ってあってのう……」シャキィン 


伊織「し、神経……毒……?」 


ルゲイエボーグ「さっきのかすり傷……そこから毒が身体中を回って、貴様の身体の自由を奪ったんじゃよ!」 


伊織「く……!」 

伊織(そういう、事か……!) 

伊織(ゆ、油断……したわ……っ!) 



684: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:34:44.91 ID:tENnA20pO

ルゲイエボーグ「………さて、お仕置きの時間じゃ!」スッ 



伊織(か、身体が……動かないっ……!) 

伊織(あ、あんなやつに……!) 



ルゲイエボーグ「……それっ!」ドゴォ! 


伊織「ぐっ……!」 


ルゲイエボーグ「ほれっ!」 


ドガッ! 


伊織「か……はっ……!」 


ルゲイエボーグ「さっきはさんざん悪口を言ってくれたなぁ?」 

ルゲイエボーグ「さっきまでの威勢はどうした?」 

ルゲイエボーグ「……じゃじゃ馬王女がっ!」 


ドガッ!バキッ!ベキッ!グシャッ! 



伊織「っ……ぅ……!」 


ルゲイエボーグ「自分の身の程を、思い知ったかっ!」 


ドゴォ! 


伊織「………」 


伊織「………」ピクッ 


ルゲイエボーグ「……殺しはせんよ」 

ルゲイエボーグ「貴様はワシの、大切な玩具じゃからのう!」 

ルゲイエボーグ「ひょひょひょひょ……!」 



685: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:38:21.28 ID:tENnA20pO

真「……ずぇぇいっ!」ブンッ 


ドガァァッ! 


バルナバ「………」プスッ 

バルナバ「………」 

バルナバ「………」プスン 



真「………ふぅ。やーっと動きが止まったかなぁ?」 

真「伊織は大丈夫かな……?」チラ 



伊織「………」 



真「!」 

真「い、伊織っ!」ダッ 


タタタタ… 


真「伊織っ!しっかりしてっ!」ユサユサ 

伊織「………ぁ」 

真「い、伊織っ!」 

真「くそ、こんなにボロボロに……!」ギュッ 

真「……そうだ!ポーション!」ゴソゴソ 

真「さ、飲んで……」スッ 

伊織「……ぅ……コクッ…コクッ……」 

真「………」 



ルゲイエボーグ「……バカめ!隙だらけじゃっ!」ブンッ 


真「………」ガシッ 

真「ふんっ!」バキッ 


ルゲイエボーグ「あ、あれ?ワシの腕が……!?」 


真「よくもやってくれたな……」グシャッ 


ルゲイエボーグ「ふ、ふん!貴様もワシの神経毒の餌食にしてくれるっ!」ブンッ 


ザシュッ! 




686: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:44:02.48 ID:tENnA20pO

真「………何か、したの?」 


ルゲイエボーグ「そ、そのうち、毒が効いてくるはずじゃ!後悔しても遅いぞっ!」 


真「あ、そう……」ブンッ 


ドゴォォォォ!メキメキメキ… 


ルゲイエボーグ「がっ……!」 

ルゲイエボーグ「ちっ!力だけはあるようじゃな!」 


真「あれ?あんた……痛覚がないんだね?」 

真「だったら、多少無茶しても平気かな?」 


ルゲイエボーグ「な、何……」 


ドゴォォン! 


ルゲイエボーグ「をっ!」 


真「せいっ!」ブンッ 


バキィィィッ! 


ルゲイエボーグ「ば、バカな……神経毒がそろそろ効いてくるはずじゃ……」 


真「そういうの、効かないよ」 

真「ボクはもう、自分の弱点を克服したからね……」 


ルゲイエボーグ「た、たかが人間ごときが、ワシの神経毒を克服できるはずが……!」 


真「…………不公平だよね?」 


ルゲイエボーグ「何……?」 


真「伊織はあんなに痛い思いしたのに……」 

真「……あんたは痛みを感じないなんてさ」ニコッ 


ルゲイエボーグ「ひっ……!」ゾクッ 

ルゲイエボーグ(な、なんじゃこの威圧感は……!?) 


真「伊織の痛みの、何万分の一かぐらいは、味わわせてあげるよ……!」ゴゴゴゴ… 



687: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:47:02.17 ID:tENnA20pO

真「………!」ユラユラ 


ジリジリ… 


ルゲイエボーグ「熱気……!?バカな!」 

ルゲイエボーグ「か、陽炎が見える程の……じゃと!?」 


真(まだ、ボクには早いのかもしれないけど……) 

真(やってみたいんだ……!)グッ 



真「……………いくよ?」ズサッ 




真「…………………龍虎、乱舞!」ダッ 




真「はあああああああっ!」ブンッ 


ルゲイエボーグ「ひ、ひいっ!」 


ドゴゴゴゴゴゴゴ… 


ルゲイエボーグ「がっ!ぶっ!ごへっ!」 


真「うおりゃあああああっ!」 


バキィ!ドガァ!ゴギャッ!ベキッ! 


ルゲイエボーグ「おぼっ!あがっ!がふっ!」 


真「ふっ!」ドゴォ 


クルンッ…スタッ 


真「………………覇王、翔吼拳っ!」 



ゴオオオオオオオオオ… 



ルゲイエボーグ「あ………」 



ドゴォォォォォォォォォン!! 





ルゲイエボーグ「………」ピクピク 



真「……………押忍っ!」 



688: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:49:51.53 ID:tENnA20pO

伊織「ま……こ、と……?」 



真「伊織っ!」 

タタタタ… 


真「……大丈夫?」ダキッ 

伊織「ええ……身体はもう動くわ……」グッ 

伊織「ポーションもいくらか飲んだし……」 

真「そっか……良かった!」 

伊織「そ、その……」 

伊織「………あ、ありがと………」ボソッ 

真「……へへ!まあ、ボクも伊織に助けてもらったし、おあいこだよ!」 

伊織「………それもそうね」 

伊織「……にひひっ!」 

真「ははっ!」 



伊織「それはそうと……」 

伊織「あのジジイ、あれぐらいでくたばるとは思えないわよ?」 

真「うん、そうだね」 

真(ボクの龍虎乱舞は、まだまだ未完成だからなぁ……) 

真(あいつ、また何かしてくるかもわからないよね……)チラ 




ルゲイエボーグ「ひょひょひょ……!」 

バルナバ「………」ギギッ 


真「あっ!」 

伊織「しぶといわね、まったく……」 



ルゲイエボーグ「これぞ最終形態……」 

ルゲイエボーグ「……合体メカじゃっ!」 

バルナバ「………」 



真「え、えーと……?」 

伊織「はぁ……バカバカしい」 

伊織「ただ単に、あのジジイがバルナバに乗っかっただけじゃない!」 

真「ホントだよね……」 



ルゲイエボーグ「ふ、ふん!余裕でいられるのも、今のうちじゃっ!」 

ルゲイエボーグ「ゆけっ!バルナバよ!」 




689: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:52:26.98 ID:tENnA20pO

バルナバ「フンガー!」 


ガシャン!ガシャン! 


真「うわぁ……またあのロボットの相手しなきゃならないのか……」 

真(ちょっとしんどいな……龍虎乱舞で力を使い過ぎちゃったかな……) 

伊織「………」 

伊織「……真、ここは私に任せなさい!」スッ 

真「えっ?」 

真「で、でも伊織、さっきまでボロボロだったじゃないか!」 

伊織「大丈夫よ。この伊織ちゃんは、転んだらただじゃ起きないわ!」 

真「………」 

真「じゃあ、2人で行こう!」 

真「ボクだって、まだ暴れ足りないもんね!」 

伊織「真……」 

伊織「………足、引っ張るんじゃないわよっ?」ニコッ 

真「………そっちこそ!」ニコッ 



タタタタ… 




ルゲイエボーグ「よかろう。2人まとめて、粉砕してくれるわっ!」ポチッ 

バルナバ「フンガー!」ブンッ 


真「ふっ!」ヒョイッ 

伊織「はっ!」クルッ 


伊織「くらいなさいっ……!」バリッ 

真「はあああっ!」バリッ 




伊織「………雷迅っ!」バッ 

真「………雷煌拳っ!」バッ 




ズガガガガガガガガガガガッ!! 





690: 名無しさん 2014/12/14(日) 21:57:27.90 ID:tENnA20pO

ルゲイエボーグ「あがっ……!」ピクピク 

バルナバ「………」プスプス 



真「…………へへ!」 



真・伊織「……やーりぃ!!」ガシッ 




ルゲイエボーグ「……ま、まだじゃっ……!」 

ルゲイエボーグ「バルナバよっ……動けっ!」ポチッ 

バルナバ「………」ギ 

バルナバ「………」ギギィ 

バルナバ「フンガー!」 


真「……あれじゃあ、あのロボットが可哀想だよ……!」 

真「まるで、奴隷じゃないか!」 

伊織「バルナバ……」 

伊織「……やめなさい!バルナバ!」 

伊織「いえ……」 



伊織「…………シャルル・バルナバ・19世!」ビシッ 



バルナバ「………」ピクッ 

ルゲイエボーグ「こ、こらバルナバ、行け!行くのじゃっ!」ポチポチ 

バルナバ「………」ギギッ 

バルナバ「フンガー!」 

ガシャン!ガシャン! 


伊織「あんたは、そんな子じゃないはずよ!」 

伊織「こんなひどい事できる子じゃないっ!」 


ルゲイエボーグ「ひょひょひょ!このまま潰してしまえっ!」 

バルナバ「………」 

ガシャン!ガシャン! 


真「伊織っ!」 

伊織「真、私を信じて!」 

伊織(私も、バルナバを信じるから……) 

真「伊織……」 




伊織「…………忘れたの?」 



691: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:01:03.02 ID:tENnA20pO

伊織「あんた………私の怪我、治してくれたじゃない!」 



バルナバ「………」ピクッ 

ルゲイエボーグ「バルナバっ!行けっ!」 

バルナバ「………」ギ… 



伊織「……この伊織ちゃんの怪我を、治してくれたじゃないっ!」 



バルナバ「………」ギギ… 

ルゲイエボーグ「ええい、黙れ小娘っ!」 

ルゲイエボーグ「バルナバは、全てを破壊する、殺戮ロボ……」 

真「黙るのはあんたの方だよ……」 

真「……おじいさん?」スッ 

ルゲイエボーグ「き、貴様、いつの間に……!?」 



伊織「あんたは……」 

伊織「シャルル・バルナバ・19世は……」 

伊織「とっても心優しいやつだったはずよ!」 



バルナバ「………」ギギ 

バルナバ「………………」 


ガガ…ピー… 


バルナバ「……データ照会中……」ギギッ 






692: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:04:39.38 ID:tENnA20pO




『バルナバ?……ダッサい名前ねー?』 

『ばるなば、ダサイ?』 

『ううん、あんたじゃなくて、あんたを造ったやつがダサいのよ!』 

『ハカセ、ダサイ………いんぷっと、カンリョウ!』 





『………、クルシイ、ナオス!』 

『ばるなば、………、クルシイ、ナオス!』 

『ま、他に道はなさそうね………つっ!』 





『足の腫れも………なくなってる!?』 

『………、イタイ、ナオッタ?』 

『ええ……あんたのおかげね……』 

『………あ、ありがと………』 





『あんたに、名前をあげるわ!』 

『あんたは今日から……』 

『シャルル・バルナバ・19世よ!』 

『しゃるる?』 

『そうよっ!』 

『……さあ、インプットしなさい?シャルル・バルナバ・19世?』 





『………、サヨナラ』 

『またね……「シャルル」!』 

『何を言っておる?こやつは……』 

『……しゃるる・ばるなば・19セイ!』 

『………にひひっ!』 





『イ……オ……リ?』 

『そう。私の名前は「いおり」』 

『ちゃんと覚えなさいよねっ!』 





693: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:09:19.44 ID:tENnA20pO

バルナバ「……………イ」 



バルナバ「イ……オ……リ……」 



伊織「!」 

伊織「シャルルっ!」 


バルナバ「イオリ……ヒサシブリ」ギギッ 


伊織「にひひっ!やっと戻ったわねっ!」 


ルゲイエボーグ「ば、バカな!あんな昔のデータなど、とっくに埋れてるはず……!」 

真「へぇ!ホントに伊織の友達だったんだなぁ!」 



伊織「シャルル、もうこんなひどい事は、やめなさい!」 


バルナバ「ヒドイ……?」 


伊織「あんなセンス無い博士の言う事なんか、聞く必要ないわ!」 


バルナバ「………」チラ 

バルナバ「ソレハ、フカノウ……」 

バルナバ「デモ、ばるなば、イオリ、タタカウ、クルシイ……」 


伊織「シャルル……」 


ルゲイエボーグ(ちっ……もうこいつは使い物にならんな……) 

ルゲイエボーグ(かくなる上は……) 


ポチッ… 


バルナバ「………」 

バルナバ「非常装置もーど、作動!」ギギィ 


伊織「……シャルル?どうしたのよ?」 

真「非常……装置?」 



694: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:13:51.55 ID:tENnA20pO

…スタッ 



ルゲイエボーグ「ふん、つまらん……!」 


伊織「ちょっとジジイ!シャルルに何したのよ!?」 


ルゲイエボーグ「バルナバは……」 

ルゲイエボーグ「……………30秒後に、自爆する」ニヤリ 



伊織「なっ……!」 

真「そんな……!」 


バルナバ「非常装置作動マデ、アト25秒!」 


伊織「ちょっと、解除しなさいよっ!」ガシッ 


ルゲイエボーグ「もう何をしても無駄じゃ!非常装置を解除する手段など無いわっ!」 


真「くそ……!」 


バルナバ「非常装置作動マデ、アト20秒!」 


ルゲイエボーグ「まったく……飼い犬に手を噛まれるとは、この事じゃ!」 

ルゲイエボーグ「あの役立たずめが……!」 


ドゴォ! 


ルゲイエボーグ「おぐ……!」 


伊織「……もう一度言ってみなさい?あんたの身体、粉々にするわよ……!?」 

伊織「あいつは……シャルルは……!」 

伊織「役立たずなんかじゃ、ないんだからっ……!」ポロッ 


ルゲイエボーグ「く……ひょひょひょ!せいぜい別れを惜しむんだな!」 


バルナバ「非常装置作動マデ、アト15秒!」 


真「なんとかできないのかっ!?」ガシッ 

真「えーと、えーと……!」 

真「だ、ダメだ……ロボットの事なんか、全然わかんないや……!」 

伊織「シャルル!シャルル……っ!」ダキッ 



695: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:17:37.00 ID:tENnA20pO

バルナバ「非常装置作動マデ、アト10秒!9……8……」 


真「ま、まずい……!」 

真「伊織!もう離れないと!」ガシッ 

伊織「シャルル……っ……グスッ!」ギュッ 

真「伊織!」 


バルナバ「………6……5……」 



真「伊織!ホントにヤバいってば!」グイッ 

伊織「あっ……」 


タタタタ… 


バルナバ「……4……3……」 



バルナバ「……2……1……」 





『イオリ………サヨナラ……』 




伊織「えっ……?」 




ピーーーー! 


ドゴォォォォォォォォォン!! 




伊織「シャルルーーーーーーっ!!」 




696: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:20:40.05 ID:tENnA20pO

ボロッ… 


バルナバ「」 


伊織「シャル……ル……」 

真「く………!」 

伊織「……ごめん…なさい……」 

伊織「助けてあげられなくて………っ!」スッ 


ボロッ… 


伊織「うっ……!」ポロッ 

真「伊織……」 


真「はっ!そういえば、あのじいさんは?」キョロキョロ 



ルゲイエボーグ「ソローリ……」 


真「あっ!」 


ルゲイエボーグ「ちっ!気づかれたか!」 

ルゲイエボーグ「さらばじゃっ!」ササッ 


真「逃がすかっ!」 



バタン! 


ルゲイエボーグ「へぶっ!」 


ドサッ 


春香「なんか、すごい音がしたけど……」 

千早「………あら?あれは……」 

春香「あっ……!」 


真「春香、千早!?」 


春香「真、伊織……!」 

春香「よかったぁ!やっと見つけたよぉ……!」 




697: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:23:47.42 ID:tENnA20pO

真「………で、このじいさんと戦ってたわけさ」チラ 


ルゲイエボーグ「………」バタンキュー 


千早「あれが、科学者……」 

春香「なんかすごい姿だけど、この人も、やっぱり人間じゃないのかな?」 


伊織「………自分で自分を改造した、らしいわよ?」 


真「伊織………もう、平気なの?」 

伊織「………」 

伊織「……いつまでも悲しんでいられないわよ」 

伊織(シャルルに、笑われちゃうものね……) 

伊織(………)チラ 


バルナバ「」 


伊織(さよなら、シャルル………) 



真「……で、やよいと美希は、まだ見つかってないの?」 

春香「うん。なんだか迷路みたいで、迷っちゃって……」 

真「そっか」 

真「……でも、早めに動いた方が……」 

千早「何をしているの!」 

真「えっ?」 



ルゲイエボーグ「気づかれたか……」 

ルゲイエボーグ「……こうなったら、ドワーフも貴様らも、全員道連れじゃあ!」 


ピッ…ピッ…ピー 


真「な、何をしたんだ!?」 


ルゲイエボーグ「巨大砲は、あと30秒で自爆する……!」ニヤリ 


真(ちょっと……また自爆なの……?) 

伊織(似たようなネタ、使い過ぎなんじゃないの……?) 




698: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:28:33.77 ID:tENnA20pO

春香「じ、自爆……!?」 

春香「ど、どうしよう!?」オロオロ 

千早「とにかく、この場から離れないと……!」 

伊織「さっさと行くわよ!」 

真「………」 



真「………みんな、先に行っててよ!」 



春香「そ、そんな事できないよ……!」 

千早「真……何をする気なの?」 

真「このまま爆発をほっといたら、下にいるドワーフの人達が危ない」 

伊織「それはそうだけど……」 

伊織「あんたはどうするつもりよ?」 

真「ボクが……巨大砲を、壊す!」 

春香「でも……」 

真「春香、これは多分、ボクにしかできない事なんだ」 

真「ボクの技が、1番破壊に向いてると思うから」 

春香「それなら、私だって……!」 

真「いや、ダメだ。春香みたいなおっちょこちょいに任せられない」 

春香「そ、そんな……!」 

真「それに、春香はリーダーだ。この先もみんなを導いていかなきゃならない」 

春香「でも……」 

真「……ボクを信じてくれないかな?みんな」 

真「ボクは、こんなところじゃやられない。ボクの強さは、みんなだってわかってるでしょ?」ニコッ 

千早「真……」 

伊織「あんた……」 

春香「………」 




699: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:35:34.76 ID:tENnA20pO
伊織「………春香、どうするのよ?もう時間もないわよ?」 

春香「………」 

春香「………わかった」 

春香「待ってるからね、真!」 

真「了解、リーダー!」 

千早「無事で……!」 

真「うん!」 

伊織「あんまりやり過ぎるんじゃないわよっ!」 

真「はは!……わかったよ!」 



春香「みんな、行こう!」 

千早「ええ」 

伊織「コケるんじゃないわよ、春香?」 

春香「わ、わかってるよぉ……!」 


タタタタ… 





700: 名無しさん 2014/12/14(日) 22:38:47.08 ID:tENnA20pO

真「ふーー……」 

真「………さてと」チラ 

真(あと、10秒ちょっと……) 

真(今までで試してない技は……もう、『あれ』しかない……) 

真(お師匠様、力を貸してくださいっ!) 



真「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」ゴゴゴゴ… 

真(もっと……もっとだ……!) 



真「うああああああああっ!!」ゴオオオ 

真(あと、5秒……!) 



真「極限流………最大奥義……!」ユラ… 

真(4……) 



真「覇王………!」グッ 

真(3……) 




真「………至高拳っ!!」バッ 

真(2……!) 



ゴオオオオオオオ… 



真「いっけええええええっ!!」ググッ 

真(1っ……!) 



ドゴォォォォォォォォォン!! 




701: 名無しさん 2014/12/14(日) 23:52:13.75 ID:tENnA20pO

真「………」 

真「………」 

真「う……」ピクッ 

真「巨大砲は……」チラ 



真「へへ……やったか……」 

真(なんとか、メンツは保ったけど……) 

真(もう、指一本動かす力もないや……) 

真(みんな、ごめん……) 

真(ちょっとだけ、休ませて……?) 

真(すぐ、追いつくから……さ……) 



ゴゴゴゴ… 


グラグラ… 


ボロッ…ドサッ 



真(あ……ここ、崩れるかも……) 

真(ダメだ、眠気が………) 

真「………」ガクッ 



ズズズズ… 


ガラガラ… 


ドガァン! 


ドゴォォォォォォォォン! 



……………… 


……… 






702: 名無しさん 2014/12/14(日) 23:55:33.92 ID:tENnA20pO
地底世界 バブイルの塔 入口付近 

シルフ「……ふんふふ〜ん♪」フワフワ 

シルフ「やっと撃ち合いが終わりましたか〜」キョロキョロ 

シルフ「まったく、ドワーフの方も粘りましたね〜」 

シルフ「魔物なんかに勝てるわけないんですから、さっさと降参すればいいのに……」 

シルフ「ま、私は自分の仕事をするだけですけどね〜」 



シルフ「さ〜て、火事場泥棒、火事場泥棒……」キョロキョロ 



シルフ「……ふむ、これはまだ使えますね〜」スッ 

シルフ「あ、あっちにも……」 

シルフ「ふふ〜、今日はなんだか大量ですね〜♪」 



シルフ「………おや?」チラ 

シルフ「あんなところに人が……」フワフワ 

シルフ「ドワーフ……でもないみたいです……」 


真「………」 


シルフ「はうっ!」ズキュン 

シルフ「か、カッコいい………///」 

シルフ「な、なんでしょうか、この気持ち……」ドキドキ 

シルフ「これが……恋?」 

シルフ「………」 

シルフ「………決めました!」 

シルフ「この人、誘拐しましょう!」 

シルフ「……よっと」グッ 

シルフ「お、重い……!」フラフラ 

シルフ「けれど、諦めませんよ!」 

シルフ「この人は、私の旦那さんになるんですから!」 



シルフ「……うんしょ、うんしょ」フラフラ 

真「………」 





706: 名無しさん 2014/12/20(土) 00:51:24.29 ID:eq40zoznO
幻獣王の館 

黒井「………」 



高木「………」 



翔太「2人とも、ボロボロだよ……!」 

翔太「もう、止めた方が……」 

冬馬「翔太、ダメだ……」 

翔太「冬馬君……」 

冬馬「男と男の決闘に水を差すなんて、ヘボのやる事だぜ……」 

翔太「………」 

北斗「………」 

北斗(男の美学ってやつか……?) 

北斗(ただ童心に還って、無邪気に遊んでいるだけの様に見えなくもないんだけどな……) 





黒井「………次の一撃が、最後の一撃となるだろう」 

黒井「高木……思い遺す事はないか……?」 

黒井(高木よ………答えてくれ………) 

黒井(最大の一撃で………!) 



高木「………」 

高木「ふふふ……敵である私を気遣うなんて、似合わない事をするねぇ……」 

高木(まずいな……このままだと、黒井の思うツボ……) 

高木(昂ぶる衝動に、身を任せてしまいそうだよ……!) 



黒井「……笑っていられるのも、今のうちだ……!」 




707: 名無しさん 2014/12/20(土) 00:54:03.13 ID:eq40zoznO

黒井「ゆくぞ……!」ゴゴゴゴ 


高木「ああ……!」ゴゴゴゴ 





黒井「……ノワール・ウェーブ!」 



ザァァァァァァ… 



高木(黒い、津波………!?) 

高木(黒井め、まだ奥の手を……!) 

高木(…………ならばっ!) 



高木「……タネも仕掛けも無い、私の剣で切り裂くっ!」スッ 




高木「……真・斬鉄剣!」ダッ 




冬馬「高木のおっさん、斬鉄剣とか言って、素手じゃねーか!?」 

翔太「うわ〜!見てらんないよも〜!」 

北斗「どうなるんだ……?」 



ゴオオオオオオオオオ!! 



黒井・高木「おおおおおおっ!!」 




……シュパァァァン…… 





708: 名無しさん 2014/12/20(土) 00:56:51.39 ID:eq40zoznO

冬馬「………っ!」 



黒井「………」 


高木「………」 



翔太「………ど、どっちが勝ったの……?」 



…ズバシュッ! 


黒井「ぐ……ぅ……!」ヨロッ 


ドサッ… 



冬馬「……お、おっさんっ!」 



高木「ふふふ………」 



高木「さ、さすがだ………黒井っ………」ヨロッ 


ドサッ… 



北斗「あ、相打ち……?」 



翔太「……ね、ねえ、冬馬君。もう、終わったよね?」 

冬馬「………」 


黒井「………」 


高木「………」 


翔太「……冬馬君てばっ!」 

冬馬「……あ?あ、ああ……」 

冬馬「わ、わりぃ、ちょっと放心してた……」 

翔太「早く、2人を手当てしないと!」 

北斗「そ、そうだ!……ええと、薬箱はどこだったかな……」キョロキョロ 

冬馬「あ、ああ、薬箱なら、あっちの引き出しに……」 

翔太「……いやいや!北斗君、回復魔法使えるじゃん!」 

北斗「あ……!そ、そうだったな……すまん」 

翔太「も〜!2人とも、しっかりしてよぉ〜」 




709: 名無しさん 2014/12/20(土) 01:00:28.45 ID:eq40zoznO




冬馬「…………で」 

冬馬「なんでいつの間にか宴会が始まってるんだ?」 



高木「はっはっは……鬼ヶ島君も鈍いねぇ!……お疲れ様会に決まっているじゃないか!」ゴクゴク 

黒井「………ふん」グビグビ 

冬馬「なんなんだよ、お疲れ様会って……」 

冬馬「それと、鬼ヶ島じゃなくて天ヶ瀬だっ!」 

高木「まあまあ、そうカリカリしないでくれたまえ」 

高木「……ああ、君も飲みたいのか。言ってくれれば、ついであげたんだが……」 

冬馬「あ、あのなぁ……!」 

黒井「高木……未成年に酒を勧めるんじゃない」 

高木「はっはっは……冗談だよ、冗談!」 

翔太「社長さん、お酒が入ると楽しくなっちゃうタイプなのかな?」 

冬馬「……ったく、いい迷惑だぜ……」 

黒井「……………北斗」チラ 

北斗「はい……?」 


…ドンッ 


北斗「え……?」 

黒井「お前は確か、二十歳だったはずだ……」 

北斗「そうですが……」 

黒井「………飲め」 

北斗「はは、すみません。気を使ってもらって……」 

北斗「………いただきます」ペコリ 

翔太「あ〜、いいな〜北斗君!僕も、ちょっとでいいから飲んでみたいなぁ」 

北斗「おいおい……アイドルが飲酒で捕まるつもりか?」 

北斗「これは、『大人の特権』ってやつさ」パチリ 

翔太「……僕にウィンクなんかしないでよぉ。気色悪い……」 

北斗「……グイッ!」 

高木「おおー!」 

黒井「………ほう」 

北斗「ゴクッ…ゴクッ……」 

北斗「……っぷはぁ!」 

北斗「へぇ、なかなか美味しいお酒ですね」 




710: 名無しさん 2014/12/20(土) 01:09:26.96 ID:eq40zoznO

高木「そうだねぇ。ささ、もう一杯!」トクトク 

北斗「はい。……いただきます」 

冬馬「北斗……お前、意外と飲めるんだな」 

北斗「……まあ、こういう付き合いも大切だからな」 

翔太「ふぇ〜……北斗君、大人だぁ」 

翔太「なんか、ジュース飲んでるのが悔しいよ……」 

冬馬「ガキにゃジュースで充分だ」ゴクゴク 

翔太「……そういう冬馬君だって、ジュースのクセにっ」ゴクゴク 

冬馬「ぐ……!俺はジンジャーエールが好きなんだよっ!」 

翔太「はいはい。わかったから、そんなにアツくならないでね〜」 

冬馬「て、てめー!」 

高木「ふふ、賑やかだねぇ」 

北斗「まあ……いつもの事ですよ」 

黒井「グビグビ……」 

黒井(賑やか………) 

黒井(………ふん。耳触りなだけだ) 



翔太「……え〜!なんで?」 

冬馬「お前は何にもわかってねえなぁ……」 

冬馬「男のRPGはドラクエって、昔から決まってんだよ!」 

翔太「え〜、FFもいいと思うけどなぁ?ストーリーとか、感動するし……」 

冬馬「いいや、全てにおいて、ドラクエの方が上だ!」 

冬馬「だいだい、カッコつけて横文字使ってるのが気に食わねえ」 

冬馬「『ポーション』ってなんだよ?『やくそう』で充分伝わるだろうが!」 

翔太「い、いや……僕に言われても……」 

翔太「っていうか、ドラクエにも横文字たくさん出てくるじゃん」 

冬馬「う、うるせーな!ドラクエに出てくる横文字は、なんとなく温かみがあるんだよ!」 

冬馬「FFのは、ただ洒落た名前付けただけって感じがするんだ!」 

翔太「何その暴論……」 

翔太「開発者とかファンの人に謝りなよぉ」 

冬馬「知るかっ!」 

北斗(冬馬……残念だが、どうやらここは……) 

北斗(お前の嫌いな『FFの世界』のようだぞ……?) 



711: 名無しさん 2014/12/20(土) 01:11:53.81 ID:eq40zoznO

黒井「グビグビ……」 

黒井(本当に騒がしやつらだ………) 

黒井(こいつらがウチに所属していた頃を思い出すな………) 

黒井(………) 

黒井(……………さて)チラ 



黒井「高木……」トクトク 

高木「……どうかしたか?……おっと、すまん」スッ 

黒井「…………話せ」 

高木「うん?何をだね?」ゴクゴク 

黒井「……とぼける気か?」 

高木「はっはっは……すまんすまん」 

高木「お前が素直になってくれたのが嬉しくて、つい、な」トクトク 

黒井「ちっ……」グビッ 




高木「オホン……」 

高木「……我々は今、『ゲームの世界』とやらにいる様だ」 

黒井「ゲームの世界……だと?」 

冬馬「ど、ドラクエかっ?」 

翔太「いや、絶対ドラクエじゃないと思うよ……」 

翔太「だって……モゴッ!」 

北斗「翔太、高木社長の話を聞こう」 

高木「今までにこの世界で私が出会った人間は……」 

高木「ウチのアイドル達、プロデューサー……」 

高木「そして、君達4人だ」 

高木「他にもいるのかもしれんが、私の勘だと、これで全てだと思う」 

高木(音無君を除けば、だが……) 

黒井「勘か……」 

高木「ああ、勘だ」 

黒井「お前の勘は、当たるからな……信用してやろう」 

黒井「………で?」 




712: 名無しさん 2014/12/20(土) 01:14:28.75 ID:eq40zoznO

黒井「あるんだろう?元の世界に帰る方法が……」 

高木「うむ……」 

高木「………」 

黒井「何を渋っている?話をしたいと言ってきたのは、お前の方だぞ?」 

高木「ああ……そうだったな」 

高木「………この世界から帰る方法」 

高木「それは……このゲームをクリアする事が条件となるらしい」 

黒井「ゲームをクリア……か」 

黒井「ふん、まるでお伽話だな」 

黒井「……それで、どうすればクリアとなるのだ?」 

高木「………」 

冬馬「……ラスボスを倒す、とかか?」 

高木「ふむ……」 

高木「やはりこういう事は、若い人の方が飲み込みが早いねえ」 

高木「その通り。ある人物を倒せば、我々は晴れて元の世界へ帰る事ができるらしい」 

黒井「ならば、こんなところで燻っている暇はない。さっさと行くぞ」 

高木「待て、黒井……」 

黒井「なんだ?まだ何かあるのか?」 

黒井「……お前、まさか臆したわけではあるまいな?」 

高木「………端的に言えば、その表現が近いのかもしれないな」 

黒井「バカバカしい……!」 

高木「それだけの強さを持ちながら、何を恐れると言うのだ?」 

高木「………」 

高木「我々が元の世界へ帰る為に倒さなければならない人物……」 

高木「その者の名は……」 




高木「『音無小鳥』というんだ……」 




黒井「!!」